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メンタルヘルス不調者対応の現場からーみんなが笑顔になれる復帰判定会議

従来の配慮中心とした配慮型メンタルヘルス対策に対し、不調者自身の活躍を信じて支援する活躍支援型メンタルヘルス対策についてこれまでも紹介してきたが、今回は、活躍支援型メンタルヘルス対策の中で行われれる復帰判定会議についてご紹介したい。

復帰判定会議とは

事業者によって、出席者や対象とする事例は異なるが、一般的に従業員の職場復帰に関して、会社としての意思決定を行うために開催される会議のことを指す。私が関わる事業場等においては、メンタルヘルス不調に限らず、休業した従業員の復帰可否の判断に加えて、復帰後のフォローや支援の在り方について議論・整理する場として開催し、本人、上司、人事、産業医、保健師に出席することにしている。その中では、休業に至った傷病の回復状態について共有したうえで、復帰してから当面の業務について確認し、職場復帰の是非、復帰後に講じる就業措置・配慮を決定する。この会議を設定することで、立場の異なる関係者がそれぞれの意見を持ち寄ることでき、より精度の高い復帰可否判定を実現できる。さらに、必要な情報を関係者間で共有することで、スムーズな職場復帰および復帰後の安定した就業継続につなげることができる。

活躍支援型メンタルヘルス対策における復帰判定会議

上記の復帰判定会議は、ある程度メンタルヘルス体制が整った事業場等では以前から行われており、それほど珍しいものではない。しかし、形式としては実施するものの、「またきっと体調悪くなるかもな」と思っていたり、明確な根拠もなく、とりあえずの就業措置を講じ、復帰後にフォローすることを決めたり、抽象的な条件を職場なりなんとなく解釈していたりすることが多いのではないだろうか。復帰判定をしないよりはましだが、実際には、職場や人事担当者は、なお不安を抱えながら復帰する従業員をうけいれていたのではないだろうか。
活躍支援型メンタルヘルス対策における復帰判定はどうだろうか。活躍支援型メンタルヘルス対策では、メンタルヘルス不調になった従業員が症状のコントロールは当然として、自分自身と向き合い、自分の力で自分の症状を確実にコントロールできる状態になって復帰判定会議に臨む。見方を変えると復帰するハードルは高いとも言える。しかし、様々な支援をうけつつも、多くの困難を乗り切りそのハードルを越えてきた従業員は、明確な根拠に裏付けられた自信に満ちた状態で復帰判定会議に臨むことになる。そこに同席する産業医・保健師は、本人が適切な準備ができ、長期的な安定就業が見込み状態と考え、本来の担うべき仕事をしっかり与え欲しいと言える。そして、上司はそこに至るまでの経過を本人から直接報告等をうけることで確認ができており、本人の過去から現在のストーリーを理解し、コミュニケーションにも不安がない状態になっている。そして、人事は、本人に準備ができている前提で、あえて体調を崩した本質に関わる質問を投げかける。そのやり取りを通じ、本人も自分の状態に確信をもつことができるし、上司も安心してうけいれることができ、出席者全員が納得し、復帰可と判断する。また、就業措置・制限の要否についても検討するが、本人は自分を理解し、適切に自分の状態を伝えることができる状態になっており、さらに上司も本人とのコミュニケーションに不安をもっていないので、職場でコントロールできるといわれる。そしてそれを、産業医も人事も疑うことなく受けいれることができる。不調になって休業した当初は、本人も職場も様々不安を抱えていたが、その会議では、皆が笑顔で、そして期待や自身であふれている。時には、同席する保健師が感動の涙を流すことすらある。
メンタルヘルス不調者の活躍にフォーカスし、対応するなかでこのような場面にたびたび立ち会わせていただいているが、何度も経験してもやりがいを感じる瞬間である。そしてより多くの事業場でこれが当たり前になったらと思っている。

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合同会社活躍研究所では、企業向けに活躍型メンタルヘルス対策の導入支援を行っております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」

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