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焙煎士が作る、お菓子づくり。

ボクはコーヒー焙煎士でもあるけれど、お菓子を作るパティシエでもある。
専門は焙煎士なので、お菓子づくりの目線も焙煎士としての味づくりが根底にある。
なのでコーヒーテイスティングを応用した味づくりをしていて、ボクが語るテイスティングは分析力のスキルを使ったものである。

お菓子づくりの味づくりでは、レシピの配分と材料選びで成り立っている。
どちらもとても重要で、まずは材料選びが骨格となり、その材料を使うことでのレシピの配分と繋がっている。
案外、材料選びがそれほどまで大事なことだと考えている人は少ないことだろうと思っている。それはボクも昔は材料選びも無頓着だったからだ。

材料選びとは、お菓子で使用するレシピに含まれるすべての材料、そのひとつひとつのことである。
ボクも本業であるコーヒーで、クリーンなローストを施すためにテイスティングスキルを磨いてきたことで、お菓子づくりでもその試食した味わいから材料ひとつひとつの意味が感じられるようになったことで、材料を見極めて選ぶことが出来るようになったのだ。

そして、味づくりという意味では、コーヒーでも、お菓子づくりでも実際に作ったものを試食して、その出来上がりのバランスを見るしかないのだが、その目線がレシピの配分と材料選びの2つの目線がテイスティングスキルの応用からきている。

レシピは風味を含めたそれぞれの材料の強弱のバランスになるが、素材選びにはボクの語るボディ感とクオリティの両者の目線が含まれている。
ボディ感は、それぞれの材料が合わさった広がり方と余韻までのボリュームの推移であるが、そこにクオリティが介入すると、密度感と質感、そして香りと触覚のダメージの存在の有無をそれぞれの材料の確認をしなければならなくなる。

当店のように良質さ(素材のダメージの無いもの)を求め出すとコーヒー同様にクリーンさを求めることになるのだが、クリーンさはその言葉の意味のとおりで、透明感であるため、その存在には雑味が無いためボリュームに欠ける印象を持つのである。

要は、雑味とはボリュームでもあるのだが、ダメージでもあると言うことである。
素材の良質さを求める場合の味づくりの難しさには、平坦になりがちなクオリティという上品さを、どのようにボリュームを持たせ満足させるのかを考えなければならないことに気づくのだ。

良質さを感覚で瞬時に理解でき、それを「素晴らしい」と感じられる人とはいわゆるマイノリティな人間であることも理解をしているので、その世界観が理解できる人たちはとても少数派である。
せっかく良質な材料を使うのであれば、誰が食べても(マジョリティ:多数派)とっても美味しいと感じるものに仕上げなければならないのだとも思っている。
それがモノづくりの人間としての役割でもあるとも思っている。

なので、スペシャルティコーヒーと良質な材料を使ったお菓子づくりの共通点とは、平坦になりがちなクオリティというクリーンさを保ちつつ、いかにボリュームを持たせるのかであるのだ。
コーヒーの場合では、ローストのダメージを与えないようにクリーンなローストのフレーバーを登場させながら、酸味と複雑なフレーバーの両者をクリーンに登場させることでボリュームを演出することができる。
お菓子づくりの場合では、素材選びでクリーンさを登場させつつ、それぞれの素材の風味をレシピによってバランスを取ることが求められるが、そこにボリュームを持たせることに難しさがあるのだ。

素材選びのボリュームの登場のさせ方には、ある程度嗅覚が発達している人ならば、お砂糖にも残り香に酸味を感じられることだと思うが、材料の酸味を利用することもできる。
お砂糖選びによっては、それぞれのお砂糖でボリュームと甘さの印象、そして後味の酸味の残り方が違うことが理解出来ることだと思う。
なので1つの種類で成り立たないお砂糖のボリューム感と残り香は、2種類の異なるボディのお砂糖を混ぜる合わせることで成り立たせることが出来るものでもある。

もうここまで書けば、お砂糖以外でも使う材料を組み合わせることで、ボディの構成の異なる材料を合わせ、ボリュームを整えることが出来ることが理解できると思う。

ただし、それだけではまだ物足りなさを感じるのが良質な材料を揃えたお菓子づくりであることに気づいている。だからお菓子づくりでの良質さの演出は難しいのだ。
そこを補うものが、隠し味であることに気づいた。

隠し味の定義も人によりまちまちであるが、何かを補足するために少量だけレシピに加えるものが隠し味である。
なので、隠し味によってどこを補足したいのか?
という目線が大切になる。
そこを明確に意識して、何を補足したいのかという目線で隠し味を見つけれるようになると、イメージするお菓子づくりが出来るようになってくることに気づいた。

そして隠し味とはいろんな意味を持っていて、味を補足すると言う意味、何かを隠したいと言う意味、そしてボリュームを登場させると言う意味、隠し味という言葉の意味のすべてに当てはまる要素を持つ何かを少量だけ添加することで、まとまりのあるバランスを演出することができることに気づいた。
それを見つけるためにテイスティングの分析力というスキルを使うのである。

最終的には、職業としての味づくりでは、同じ商品を繰り返し作り続けることになるため、より完成度の高いバランスを求めてレシピの配合を変更したり、より高いバランスを求めるためには材料選びを見直すことが求められるため、作ったものを試食し、その感覚からバランスを構築し直す作業の繰り返しとなるため、モノづくりのためのテイスティングスキルを必要とするものである。

分析力というテイスティングスキルが使えれるようになるためには、脳内にキチンとカテゴリに分類されたフレーバーのマッピングが出来ていることが重要であると
理解をしているが、そのためにはフレーバーの景色を脳裏で感じることができなければ、正しいマッピングが出来ないことにも気づいている。

モノづくりに求められるものは、分析ができるテイスティングスキルなのである。



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