見出し画像

馬との関わりが仕事に良い効果をもたらす理由とは?~馬を信じれば、世界が変わる~

前回のあらすじ
JICA海外協力隊の研修で岩手県釜石市橋野町に来た、江原崇裕(えはらたかひろ)。

馬が食べる牧草を運ぶ厩務(馬のお世話)をする江原

ホースセラピーを行う、「三陸駒舎」で研修の受入れをしてもらい、馬と心を通わせて歩く「引き馬」に挑戦するが、馬は全く動いてくれない…。
そこで、馬が動かない原因は、自分に自信を持てていないことで生じたネガティブな感情が、人の心を繊細に読み取る馬に伝わってしまったからだと気づかされた。そんな「引き馬」第1回目を終えて、2回目を迎えた今回、自分の気持ちや馬の行動に変化は訪れるのか!?


あなたの性格は、馬に現れる!?

「今日こそ、アサツキ(馬)と一緒に歩きたい。」前回の反省から、そう、心に強く願っていました。 いざ、2回目の引き馬!
 すると、アサツキは、自然に動き出したのです!!
 しかし、安心したのも束の間。馬場(馬の運動場)を1周すると、前回のように、急にアサツキの足が止まりました…。リードを少し強めに引っ張ったり、引く方向を変えてみたりしましたが、全く動く気配がありません。それもそのはず。道産子であるアサツキの体重は、400kg程。彼が動かないと決めたら、人間の力では動かないのです。
5分程試行錯誤してもアサツキが全く動かず途方に暮れそうになった時、1人のスタッフの方から、こう言われました。

「途中で辞めるからだよ。江原さんが少し前に進んでも、アサツキがついて来ないとすぐに元いた場所に戻るから、アサツキは、行くか、行かないのかどっち?それなら行かないよって状態になっている。江原さんの行きたい方向に進まなきゃ。」

その言葉に、“どっちつかずで優柔不断な自分の性格”をアサツキが投影している!とハッとさせられました。

自分を知れば、自分が変わる?

アサツキが、その姿で可視化してくれたことによって、普段、目には見えない、自分の弱い部分に気付けました。そこで、少し強引にでも、アサツキがすぐには動かなくても、アサツキにプレッシャーをかけ続け、「行くぞ」という意思を伝え続けました。
 「行くぞ!行くぞ!!行くぞ!!!」
と”!”が3つ付くくらい強い意志を持って数歩踏み出した時、アサツキが前に進みました!!! この瞬間、「こちらの思いが確実にアサツキに伝わった」という実感がありました。 馬に気持ちが伝わるということが、こんなにも嬉しいものだとは。想像を超える喜びが、そこには、ありました。

引き馬でアサツキが歩いてくれている状態

 この日の経験は、「三陸駒舎に来たからには、馬と仲良くなりたい!」そう考えていた自分にとって、非常に大きな1歩でした。そして、「自分の弱みと向き合い、優柔不断な自分が変わった。」と自信を持てる、成功体験になったのです。

引き馬で、あなたに備わる力とは

引き馬で備わった力は、大きく2つありました。

1つ目は、「視野が広がり、集中力が高まること」です。
うまくいかない時は、リード、馬の身体、自分の身体、行く方向等、それぞれの対象物を単体で見ている感覚でした。一方で、今回は、各対象物を全て視野に入れ、それぞれがどんな動きをしているのか把握できていました。そして、その状態を保ちながら、その瞬間一番見たいものに、意識的に焦点を当てられるようになっていたのです。 

2つ目は、「自分を信じ、馬を信じること」です。 
馬は、自分が自分に自信を持てず、「動かないな」と少しでも焦った時には、動いてくれません。 すぐには思いが伝わらず、馬が動かないことで不安になっても、気持ちを強く持ち、「動く」と信じ続けて行動すると、不思議なことに(本当に不思議なことに)必ず馬は動きました。馬に関わる方がよく言われる、「馬には気持ちが伝わる」ということは、間違いないと実感しました。 アサツキが動いてくれた時、自分の心と身体も一緒に前進出来た気がしました。

引き馬の経験が、仕事に生きる?

私は、食品メーカー営業として3年半。小学校教員として2年間働いた経験があります。このコラムを読んで下さっている社会人の方に向けて、引き馬で備わる力が、仕事でどう生きるのかについて考え、具体例を以下にまとめました。

【視野の広がり】

  • 適切な指示ができるようになる。

  • 状況を把握して動けるようになる。

  • 後輩の困り感や上司のニーズに、気付くことが出来るようになる。

【自分を信じる力】

  • 相手を信じる力を持つことができる。

  • 会議で臆さずに、自信を持って話せるようになる。

  • 相手に関係なく、自分の気持ちを正直に伝えられるようになる。

 三陸駒舎では、企業研修を行っており、参加された方から、前向きなコメントを頂いております。以下、一部抜粋した内容です。 

「本当に大切なことに力が注げるようになりました。」
「上司部下の壁を越えた率直なコミュニケーションを取ることに抵抗がなくなりました。」と本質的な変容が促されたというコメントがありました。

やはり、馬には、人に自信を持たせる特別な力が備わっているように感じます。このコラムを読んで下さっているあなたも、馬と関わり、新たな自分に出会ってみませんか。馬は、あなたを映す鏡です。馬の姿から学ぶことが、きっと、あなたの成長につながります。

次回のコラムについて

次回は、最終回です。内容は、子どもが馬と関わることで生じる、心の変化について書きます。三陸駒舎では、高校生以下の障がいを持つ子どもを対象とした放課後デイサービスを行っており、月に延べ200名の子ども達が来ています。子ども達の成長の様子とその姿から得た気づきをお伝えします。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。最終回も、お楽しみに。

(JICAグローカルプログラム研修生 江原崇裕)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?