【演劇(・読書)】平田オリザの舞台と「こまばアゴラ劇場」
「こまばアゴラ劇場」は、東京都目黒区にある小劇場です。2024年5月末に閉館が決まっていて、現在、サヨナラ公演が行われています。
劇作家・演出家の平田オリザさん(以下、敬称略)が、同劇場の支配人(オーナー)兼芸術監督です。今日は、平田オリザと同氏が主催する劇団「青年団」の演劇について記載します。
■所見と疑問点
私は「青年団」の公演をいくつか観ましたが、結論からいうと、すごく難しく感じています。
テーマが難しいというより、登場人物たちの日 常を切り出していて、起承転結や事件性が無い(薄い?)点に難しさを感じるのです。そして、以下のような疑問を持つようになりました。
平田オリザは、どのような視点・観点から作品を書いているのか。平田オリザの演劇論。
演劇史上で、どのような位置づけにあるのか。
そこで私は、図書館で、平田氏の著作や同氏について書かれた本を調べました。次の項で以下の本のメモを残します。『「リアル」だけが生き延びる』(平田オリザ著、株式会社ウェイツ発行)
■本からのメモ゙と感想
同書は「西洋と近代からの解放」と「50年かけて日本を変える」の二本構成でした。後半は「芸術立国論」に通じるようで、今回は、主に前半からのメモになります。
(1)メモ
ここでいう「(近代の)リアリズム」というのは、(ロマン主義ではなく)科学的・経験則的に「事実」を重視する立場でしょうか。そして、「(近代の)ヒューマニズム」とは、「理性を持った人間」という意味でしょうか。
こうした箇所を拾いあげていくと、平田オリザはリアリズムのタガを嵌め、事実に対する評価は観客に委ねているように思います。様々な見方から構成される現象学のようであり、価値相対主義に繋がっていくようにも思います。(かなり思い切って書いていますが、誤っていましたらご指摘下さい。)
(2)具体例
(3)私見
舞台を観る側(観客)にも、事実から何らかの解釈を導き出すスキルが必要であり、相当難しいつくりになっていると思いました。
他方で、この手法が上手く機能するのは、演劇の題材にもよるのかな、と思いました。例えば、上記した『ソウル市民』や、高原のサナトリウムを舞台にした『S高原から』などがあげられるように思います。
このように書きながら、次回、平田オリザと「青年団」の舞台を鑑賞する時は、もう少し、意識したいと思いました。
■こまばアゴラ劇場について
最後に、「こまばアゴラ劇場」について、簡単に記載したいと思います。詳細は、同劇場のホームページをご覧下さい。
(1)閉館について
2003年から現在のシステムで運営が開始され、40年の歴史に幕を閉じます。HPには「債務超過に至っていない今の段階で資産を処分することといたしました。」とありました。
(2)シンポジウムなどの感想
2024年3月上旬のシンポジウムに参加して感じたことを少し記載します。
パネリストが、劇場を実際に運営している方々だったこともあり、彼らが閉場とこれからのことについて、抽象論ではなく、かなり具体的に考えていることを感じました。
また、これまで「こまばアゴラ劇場」が果たしてきた役割についても、理解を深めることが出来ました。具体的には、地方劇団の東京公演の足がかり的な立ち位置や、劇場支援会員制度など物理的建物の上に(別に?)ある制度が果たした役割などです。
■最後に
一つの節目をむかえる劇団と劇場ですが、こうして本を読んたり、シンポジウムに参加したりして、少しでも理解を深めることが出来て良かったと思います。図書館から借りて来た本は他にもあるので、「芸術立国論」なども含め、もう少し読んでみたいと思います。
大幅に内容を変えることはありませんが、追記したり、また別記事に記載することはあるかもしれません。
本日は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。