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【雅楽】源氏物語を聴く(伶楽舎)

 2024年6月1日(金)、四谷区民ホールで、伶楽舎雅楽コンサート『源氏物語を聴く』が開催されました。本公演のチケットは、早めに完売しており、私も当日券に並びました。記録を残します。

■今回のコンサートについて

 今年の1月にも国立劇場主催で『源氏物語』を主題とする雅楽コンサートがありましたが、今回の伶楽舎のコンサートは、『源氏物語』作品内における演奏・合奏場面を、物語に沿って再現したところに面白さ(凄さ)があると思います。
 特に、「若菜下巻」に出て来る「女楽」を再現する『幻想女楽 花かさね』はよかったです。
 次の項目で記載します。

■『幻想女楽 花かさね』について

(1)作品創作の背景

 配布された公演プログラムによると、本作は、東野珠実さんによって作曲され、源氏物語千年紀にあたる2008年伶楽舎雅楽コンサートno.20「御簾のうちそと〜音楽で読む源氏物語〜」で初演されたそうです。その後も、東野さんは改訂を重ね、今回が改訂初演とありました。
 配布された公演プログラムから、少し引用します。

初演版では演奏を主体とする意味で一人の奏者が複数の人物を弾き分ける形となりましたが、改訂にあたり、極力、物語の記述に沿って楽曲を構成することとしました。

公演プログラム、東野珠実さんの曲目解説より。

(2)『源氏物語』作品中の場面について

 若菜下巻で、女性四人が合奏する場面です。あまり引用してはいけないかもしれませんが、ここも、公演プログラムから少し引用します。

主役の女君たちは、明石の君が琵琶、紫の上が和
琴(後に箏)、源氏の娘明石の女御が箏を、そして女三の宮が稽古を積んだ琴を奏でます。女楽に集った四人の女君たちを源氏は花に喩えます。〈以下、省略〉

公演プログラム、鵜飼祐江さんの解説より。   

(3)感想など

 私は、雅楽をそれほど聴いたことがなく、曲ごとの聴きどころやポイントを、聴き分けたり書き起こしたりすることは出来ないのですが、『源氏物語』に関心があることもあり、とても楽しむことが出来ました。どの人が光源氏で、どの人が女三の宮なのだろうと、再現される場面を楽しみました。

 琵琶をひく明石の君はすぐに分かりました。ただ、和楽器に詳しくないこともあり、和琴、箏、古琴の区別がなかなか付かず、他の三人(紫の上、明石の女御、女三の宮)を特定するのに少し時間がかかりました。また、自由席で前に座り過ぎたこともあり、明石の君が他の方々に隠れ、琵琶の音だけを聴くことになりました。
 もっとも、今回は、琴・箏の区別など勉強になったとポジティブにとらえ、和楽器にも慣れていきたいと思います。

 また、公演プログラムには以下の記載がありました。

六条院の女楽の場面では、登場人物の身分や、人格を表すように楽器が配されています。

公演プログラム、東野珠実さんの解説より。

 「明石の君」→「琵琶」は、しっかりした人柄というイメージで何となく分かるような気がします。「琴・箏」はどういうイメージでしょうか。他の楽器についても、どういう楽器なのか理解を深め、人物との結びつきを理解したいです。
 また、舞台上、この合奏には他に、光源氏、夕霧、髭黒の三男、夕霧の長男が参加していると公演プログラムには記載されていました。時間があるときに(と言ってはなんですが)『源氏物語』の文章と照らし合わせてみたいです。

■他の演目について

 他の演目(※演目については、最後に記載)についても、少しだけ感想・メモを記載します。

 舞楽は四人による「平舞ひらまい」でした。舞楽の分類など、構造的に理解出来ていないので恐縮ですが、前方近くの席に座ったため、装束の文様や靴など近くで見ることが出来たのは良かったです。

 催馬楽については、少しプログラムから引用します。

催馬楽は、平安時代、地方から都へ上ってきた人々の歌、つまり各地の民謡を取り上げ、雅楽ふうに編曲し、平安貴族達が好んで管弦の遊びなどの中で歌っていた宮廷歌謡です。

公演プログラムより。宮丸直子さんの解説より。

 催馬楽が流行した(?)理由までは今回押さえませんでしたが、由来を知るだけでも見方が深まりました。句頭(主催者)の笏拍子に続いて斉唱していく流れが、客席まで伝わってくる感じがしました。

 最後に、管絃 高麗楽 長保楽破ちょうぼうらくのは保曾呂倶世利ほそろくせり)について記載します。
 雅楽についての記載なのか、『源氏物語』の場面についての記載なのか、視点が定まらず恐縮ですが、この曲は、光源氏が幼い紫の上に箏の琴を教える場面で出て来る曲のようです。

正妻葵の上との不仲や藤壺との問題を抱える源氏は、箏の琴を教えるなどして過ごす、紫の上との時間を唯一の慰めとしていました。

公演プログラム、鵜飼祐江さんの解説より。 

 ここで中心となるのは、光源氏と幼い紫の上との関係・関わりだと思います。ただ私は、物語の後半に、源氏が女三の宮に楽器の演奏を教える場面と比較しながら、物語を思い起こします。打てば響くような紫の上と、たどたどしい女三の宮。光源氏の気持ちはいかばかりであったか、光源氏中心の見方かもしれませんが、想像します。

■最後に

 今回の伶楽舎の雅楽コンサートでは、物語の再現に力を入れられていました。コンサートにて、伶楽舎の方が、「アンケートにどこの場面のどの曲を演奏してほしいか、記載して頂ければ。」と仰っていました。
 私はすぐに思い浮かばず、記載出来なかったのですが、もう少し演奏なども意識して、物語にあたってみたいなと思いました。思う場面がある方は、伶楽舎に連絡して頂けるとよいのではないかと思います。

 また、宇治十帖などまだ読んでいない部分もあるので、今年中に、現代語訳『源氏物語』を読むようにしたいです。

 最後に、冒頭の写真は「琴」で検索し、みつばちまぁやさんの画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。


■公演概要

(1)曲目

  • 舞楽 春鶯囀しゅんのうでん颯踏さっとう入破じゅは

  • 東野珠実作曲 幻想女楽おんながく 花かさね(改訂初演)

  • 管絃 高麗楽 長保楽破ちょうぼうらくのは保曾呂倶世利ほそろくせり

  • 催馬楽 青柳あおやぎ

  • 管絃 秋風楽しゅうふうらく

(2)出演

  • 伶楽舎

  • 客演:亮子(琴)

 本日は以上です。

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