見出し画像

【演劇】オレアナ(ポウジュ公演)を観て

 2025年1月13日(月・祝)、シアター風姿花伝で、舞台『リタの教育』と『オレアナ』を観劇しました。その内、今回は『オレアナ』の感想などを残します。アメリカの劇作家、デヴィッド・マメットの作品で、とても見応えがありました。(『リタの教育』の感想は、後日可能であれば記載します。)

■あらすじ

1990年代のアメリカ。終身在職権の授与を目前に控える大学教授ジョンの研究室に、女子学生キャロルが訪れる。講義についていけず、不安を抱えるキャロルに、ジョンは親身に対応する。しかし、キャロルがジョンを大学当局に訴えたことをきっかけに、順調だったはずのジョンの未来は大きく揺らぎ始める。

配布チラシより。

■何が(私の)心に残ったか

(1)作品に流れるテーマ

 本作の表面の問題は、セクシャル・ハラスメントです。他方、裏面に流れる問題として、2人の会話が噛み合わないこと(何を目的としているか、コミュニケーションはどうあるべきか、状況を考慮に入れず言葉だけで整理するとどういった問題が発生するか等々)があるように思いました。
 私は、戯曲を読んでいなくて恐縮ですが、戯曲の読み方や演出によって、多様な作り方が出来る作品のように思いました。あわせて、観客側の受け取る反応も変わってくるように思います。一番、大きく変わるのは、大学教授ジョンがセクハラをしたのか、仮にしたとすればどの程度か、そこの見せ方によるように思いました。『オレアナ』で検索して、戯曲や他の上演でのあらすじ等を読むと、セクハラと受け取られる書き方も目にします。
 セクハラの問題か、コミュニケーションの問題か、ここのさじ加減で、教授と学生のどちらに責任がある(ように見える)か、作品の見え方が変わってくるように思います。

(2)今回の上演を通して

 今回の上演で、私は(私が男性だからかもしれませんが、色々考え)演出的にジョンはセクハラをしていないように思うのです。例えば、「好きだ」という言葉1つにとっても、男性が女性に好意を持つ場面ではなく、教授(先生)が学生のことを親身に考える場面で使うこともありえます。むしろ、言葉を文言通りに受け取り、ジョンを攻撃していくキャロルの(言葉の)受け取り方に問題があるように思いました。

 2点、補足します。
 1点目は、(私はそこまで詳しくないのですが)「フェミニズム運動」の側面です。台詞から推測するに、キャロルは「あるグループ」に入っているようです。キャロルには「発言」や「行動」の前に、(そのグループ・女性の権利を守るという)「目的」が先行しているように思いました。
 他方、大学教授のジョンは、純粋に議論をすればお互い理解し合えるように思っているようです。一方的に会話を打ち切ったり、「分からない」と言い続けたりするキャロルの「戦法」や「戦略」に、ジョンが嵌められていくようで、ある意味、恐怖を感じ、ハラハラしながら舞台を観ました。また、同じ男性ということもあり、「ジョンはそういう意味で発言していないのに。」と、胸が詰まるように感じる部分もありました。
 もう1点は、ジェンダーの問題です。これは観劇後、少し時間をおいてから考えたのですが、ジョンや(一般的な)男性の発言の中に、差別的な気持ちが全くないか、少し作品から距離を取って考える必要があるかもしれないなと思いました。

(3)その他

 劇中で、「しごき」という言葉が出てきましたが、儀礼的側面があることを知りました。(この点、完全に個人的なメモですみません。)
 そして、衣装についてです。『リタの教育』とまたガラッと変わり、『オレアナ』も、とてもお洒落でした。ジョン教授はスマートな感じで、キャロルは真面目で保守的な学生の感じに、個人的には受け取りました。

■最後に

 『リタの教育』も『オレアナ』も、湯川ひなさんと大石継太さんの二人芝居でした。『リタの教育』の上演時間は、2時間35分(休憩15分含む)で、『オレアナ』の上演時間は、95分(休憩なし)でした。同日に2作品上演する日もあり、台詞の量や集中力などなど、大変だったのではないかと思いました。両作品とも大学教授と学生の関わりを扱った作品でしたが、雰囲気がガラッと変わり、大変面白かったです。
 そして、今回の上演は、演出家の稲葉賀恵さんと、翻訳家の一川華さんによる「翻訳」を通して海外作品を上演する「ポウジュ」の1回目の公演だったようです。「翻訳劇」でしたが、言葉や会話が、とても滑らかに進んでいくような感じがしました。

 最後に、『オレアナ』は戯曲の作りなど、とても緻密に作られていて、見応えのある作品でした。そして私は、セクハラやコミュニケーションを扱ったこの作品の内容に、たいへん衝撃を受けました。作品の捉え方によっては、ムッとする部分もあるかもしれませんが、(個人的に)オススメの作品です。色々な人に観て頂きたいです。

 冒頭の画像は、「大学ノート」で検索し、あさみー☆Asamiy☆さんの作品を使用させて頂きました。ありがとうございました!


■公演概要

  • 作:『オレアナ』デヴィッド・マメット、
    『リタの教育』ウィリー・ラッセル

  • 翻訳:一川華

  • 演出:稲葉賀恵

  • 出演:湯川ひな、大石継太

  • 公演日 :2025/1/11(土)~1/19(日)

  • 会場 :東京・シアター風姿花伝

 本日は、以上です。

◆追記:『リタの教育』の感想も書きました。


いいなと思ったら応援しよう!