小説「ふたりだけの家」8(全13話)
やべ、寝ちまった。
私は突っ伏していたテーブルから、はっと顔を上げた。固まった首筋をほぐし、腕に埋めていた右頬を撫でまわした。頬には服の皺の痕がついていた。目の前のノートパソコンはスリープ状態になっていた。
首をほぐしながら窓に顔を向けた。ところどころ苔むした古いブロック塀が目に入った。その向こうから、がんがん、と固い物を打ちつける音が響いていた。アパートの隣にはブロック塀を境にして板金工場がある。週末も休めない日が多いらしく、今日も金属板をプレスする音や、電気ドリルか