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おもしろ研究紹介

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最新の研究論文を、分かりやすいように、長すぎない記事でご紹介します
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#コラム

カラスの脳は小さいのに、なぜあんなに賢いのか?: 鳥類の小さい脳の中には、実は複雑な神経回路が存在している

カラスなどの一部の鳥類は、脳のサイズは小さいのに、なぜあんなに賢いのでしょうか? 鳥類は、基本的に頭のサイズが小さいため、脳もとても小さいのですが、それにも関わらず、道具を使ったり、抽象的な概念を理解したりすることまでできます。 最近の研究では、鳥類の小さい脳の中には、哺乳類の大脳新皮質に似た複雑な神経回路が存在しており、その特殊な神経回路が、霊長類なみに賢い行動をすることを可能にしていることが明らかになってきています。 鳥類の脳はピーナッツ一粒ほどに小さい:でもとても賢い

ウェアラブルデバイスで、マラソンタイムを予測する

今回は、世界中 14000人のランナーのウェアラブルデバイスから収集したビッグデータを解析して、自分のトレーニング量や質から、どのくらいのマラソンタイムがでそうかを予測することを可能にした研究を紹介します。 これにより、あまりレース経験のないランナーにとっては、目標タイムを達成するためのトレーニング計画やその改善の指標になり、またオーバートレーニングによる怪我の予測と予防にもつなげることができます。 紹介論文 Human running performance from r

新型コロナウイルス治療薬レムデシビルの臨床試験結果(NEJM誌掲載)

今回は、COVID-19の治療薬として期待されている抗ウイルス薬”レムデシビル”の臨床試験結果を報告した論文が、NEJMという権威ある医学雑誌に掲載されましたので、そちらの結果の概要を紹介したいと思います。 報道機関のニュースなどでは、レムデシビルの効果についていろんな情報が飛び交っていて、私も混乱しています。 論文をしっかり読めば、この薬の有効性に期待が持てると感じましたので、論文に書かれている結果を淡々とご紹介したいと思います。 追記:レムデシビルは、新型コロナウイルスの

なぜ男性の方が、女性よりも肥満や糖尿病になりやすいのか? : 理由は内臓脂肪の違いにある

今回は、なぜ男性の方が、同年代の女性よりも、肥満や糖尿病になりやすいのか、そのメカニズムを明らかにした研究をご紹介します。 男性の内臓脂肪では、女性よりも炎症が起こりやすくなっており、この内臓脂肪の炎症によって、肥満や糖尿病を発症しやすくなっていることが明らかにされています。 紹介論文 Sex-specific adipose tissue imprinting of regulatory T cells Nature. 2020 Mar;579(7800):581-585

なぜアルコールは脳に悪い?:アルコールが脳の遺伝子発現を変化させ、脳に様々な影響を及ぼしている

今回は、アルコールが体内で分解されてできる酢酸が、脳神経の遺伝子発現を変化させていることを明らかにした研究をご紹介します。 遺伝子発現パターンが変化すると、脳の機能も当然変わるため、これによって、性格や感情の変化、さらには認知症や脳萎縮などの病気が、アルコールによって引き起こされている可能性が示唆されます。 紹介論文 Alcohol metabolism contributes to brain histone acetylation Nature. 2019 Oct;57

読書レビュー: “最高の体調”を読んで実践していること

今回は、”最高の体調”という本を読んで、感銘を受け、自分でもいくつか実践していることをご紹介したいと思います。 人間の体は本来、狩猟採集に適した構造をしているため、現代社会の生活に適応しようとすると、肥満や不眠などの文明病になってしまいます。 文明病から脱却するために、どのようなことを生活に取り入れたら良いか、進化論をベースに、実践的なことが書かれている本ですが、特に私が感銘を受けて実践していることをご紹介します。 今回読んだ本 「最高の体調」鈴木祐 著 クロスメディア・パ

カロリー制限は、年取ってからでは効果があまり得られない

今回は、カロリー制限食による寿命の延長効果は、年を老いてからではあまり効果が得られないことを示した研究を紹介します。 カロリー制限食や炭水化物制限によって、寿命が伸びるという研究が多く報告されてきていました。 しかし今回の研究は、カロリー制限によるそのような効果は、年老いてから開始してもあまり効果がなく、比較的若いうちから続けないとあまり効果がないということを示唆しています。 紹介論文 A nutritional memory effect counteracts the

深い睡眠中に脳の老廃物が洗い流されている

今回は、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠中に、脳に溜まった老廃物が洗い流されていることを示した研究をご紹介します。 アルツハイマー病は、脳に老廃物が蓄積してしまうことで発病していきます。 深い睡眠をしっかりとって、脳に老廃物を溜めないことが、こういった脳の老化に起因する病気の予防につながりうることが示唆されます。 紹介論文 Coupled electrophysiological, hemodynamic, and cerebrospinal fluid oscillatio

オープンな設計のオフィスでは、逆に仕事の生産性が下がる

同僚の目があるオフィスよりも、カフェなどの方が集中できて仕事がはかどるという経験は皆さんあると思います。 今回は、仕切りを外したオープンな設計のオフィスでは、逆に社員の生産性やチームワークが落ちることを報告した面白い記事があったので、ご紹介します。 紹介記事・論文 オフィスが「オープン」な設計だと、生産性が低下する(WIRED 2018.7.19) https://wired.jp/2018/07/19/open-offices-less-productive/ The

母親の腸内細菌が、胎児の脳の正常な発育に重要

今回は、母親の腸内細菌によって作られる代謝物が、胎児の脳の発達に大きな影響を及ぼしていることを示した研究をご紹介します。 腸内細菌が健康に与える影響について、様々なことが明らかになってきており、腸内細菌を整えるための発酵食品の重要性が言われています。 妊婦の方も、お腹の子どもの脳の正常な発達のために、腸内細菌叢をしっかり整えた方が良いことが、最近の研究から示唆されています。 紹介論文・参考資料 紹介論文 The maternal microbiome modulates f