新型コロナウイルス治療薬レムデシビルの臨床試験結果(NEJM誌掲載)
今回は、COVID-19の治療薬として期待されている抗ウイルス薬”レムデシビル”の臨床試験結果を報告した論文が、NEJMという権威ある医学雑誌に掲載されましたので、そちらの結果の概要を紹介したいと思います。
報道機関のニュースなどでは、レムデシビルの効果についていろんな情報が飛び交っていて、私も混乱しています。
論文をしっかり読めば、この薬の有効性に期待が持てると感じましたので、論文に書かれている結果を淡々とご紹介したいと思います。
追記:レムデシビルは、新型コロナウイルスの治療薬として、FDA(アメリカ食品医薬品局)に承認されました(2020/10/22)
紹介論文↓
Remdesivir for the Treatment of Covid-19 — Final Report
N Engl J Med. 2020 Oct 8;NEJMoa2007764.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2007764
レムデシビルについての基礎知識
開発中のCOVID-19治療薬は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、重症化によって生じる「サイトカインストーム」や「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」を改善する薬剤に分けられます。
レムデシビルは、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬になります。
レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬です。
コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスという種類のウイルスに対して、抗ウイルス活性を示します。
日本ではすでに新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されています。
参考サイト↓
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/
今回の臨床試験の概要
2020/2/21から4/19の期間で、アメリカ・デンマーク・イギリス・ギリシャ・ドイツ・韓国・メキシコ・スペイン・日本・シンガポールにおいて実施された、プラセボ対照のランダム化二重盲検比較試験で、臨床研究としては最高グレードの質が担保された検証試験です。
以下、試験の概要を簡単にまとめます。
・新型コロナウイルス感染し下気道感染症状により入院した患者1062人を対象
・レムデシビル投与群541人、プラセボ群521人に割り付け
・入院1日目から10日間の投薬
・主要評価項目は、回復までの期間
そして結果の概要をまとめます。
・プラセボ群の、回復までの期間は15日間
・レムデシビル投与群の、回復までの期間は10日間と、プラセボ群に比べて5日間ほど回復が早い
・特に、重症患者の回復までの期間は、プラセボ群18日間に対して、レムデシビル群では11日間と、重症患者ほど回復までの期間が早くなる
・死亡率は、入院から15日目の時点で、プラセボ群11.9%に対して、レムデシビル群では6.7%と、レムデシビル群で死亡率が低い
・呼吸機能不全による重篤な有害事象の発現率も、プラセボ群12.8%に対して、レムデシビル群では7.3%と、レムデシビル群で低い傾向
新型コロナウイルスは、ほとんどの方は無症状あるいは軽症ですみますが、一部の免疫力の弱くなっている高齢者や基礎疾患を持っている方の重症化が問題です。
今回の研究報告は、重症患者にレムデシビルを投与すれば、悪化を食い止め、死亡率を減らせることができることを示しています。
また、重症患者の症状の悪化を食い止めるということは、酸素マスクなどの医療機器を必要とする患者を減らせることで、医療資源の節約にもつながります。
結果のまとめ
・レムデシビル投与群の、回復までの期間は10日間と、プラセボ群に比べて5日間ほど回復が早い
・特に、重症患者の回復までの期間は、プラセボ群18日間に対して、レムデシビル群では11日間と、重症患者ほど回復までの期間が早くなる
・死亡率は、入院から15日目の時点で、プラセボ群11.9%に対して、レムデシビル群では6.7%と、レムデシビル群で死亡率が低い
予防するワクチンの開発にばかり注目が集まっていますが、重症化をふせぐことができれば、今のパンデミックな状況もだいぶ改善されるのではないかと思います。
レムデシビルは、重症化を抑制しうる治療薬だと思いますので、今後の動向に注目したいと思います。
追記:レムデシビルは、新型コロナウイルスの第一選択の治療薬として、FDA(アメリカ食品医薬品局)に承認されました(2020/10/22) ↓
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