川島啓介

神職。日本語敎師。海外の祕境探檢と正字正假名遣ひと絕版圖書蒐集を愛好する。硏究分野は、…

川島啓介

神職。日本語敎師。海外の祕境探檢と正字正假名遣ひと絕版圖書蒐集を愛好する。硏究分野は、近代の神道思想・國語國字問題。國語の正常化と戰前の日本の價値再發見を志向する。同時に、異文化理解にも興味あり。

マガジン

最近の記事

小笠原諸島の神社 ~小笠原諸島紀行④

Shinto shrines in Bonin Islands 海外神社を調べてゐると、「日本人の行くところ神社あり」の聲が反響する。小笠原諸島でもまた、その聲を聞くこととなつた。 小笠原の神社を探るのも、今囘の旅の關心事であつた。そして、この島に獨自の神話とまではいかなくても(そもそも日本人在住の歷史に乏しいため、そこまで期待してゐなかつたが)、獨自の祭神を確認することはできるのであらうかといふことも。 私の小笠原滯在初日、東京からの船は11時に父島に到着。そして、1

    • 鯨肉を愛するがゆゑに、鯨を見に行つた話 ~小笠原諸島紀行③

      Whale watching in Bonin Islands 私は鯨肉が好きで、職場の晝休みにも、何度も鯨料理屋へ食べに行つたことがある。韓國の捕鯨基地がある蔚山へも、鯨を食べに行つたことがある。大學生の時から、折に觸れて食べてゐる。 そんなこともあり、鯨には興味はあつたものの、生きたそれを見たことはなかつた。そして小笠原諸島を旅先として檢討してゐた時、この周邊には鯨がたくさんゐることを知つた。特に、ザトウクジラは2月~4月によく見られるらしいから、丁度いい。それに、ザ

      • 梅と闇齋

        實際に、以下の通り京都と滋賀を旅したのは、今年の2月22日~24日。facebookに以下の記事を書いたのは、3月18日のことであつた。 Plum Blossoms in Kyoto 櫻が咲かうとしてゐるこの時期に、敢へて梅の花を揭載してみる。世間では、梅の花はもう散つたであらうか。無粹であらうか。このやうな古來から季節を告げる存在感の强い花を扱ふ場合、ネット上でも機を見るに敏でなければならない。とか思つてゐたら、私が梅を見た神社では、今もまだ梅まつりが續いてゐることが分

        • 夜の街で軍事パレード ~極東ロシア紀行④

          Military parade in Vladivostok at night 1年前の旅行記にこの續篇を書かうと思つたのは、今が5月だからである。6月になると、書き難くなるからである。少々、時局と絡むことだからである。理由は、以下の通り。 少し繰り返しになるが、私は去年の改元の日(5月1日)から5日まで、ロシア沿海州に旅に出た。そして最終日前日(4日)は、ウラジオストクからウスリースクへ行き、再びウラジオストクに戾つた。 櫻は滿開。ロシアで見る櫻もよい。そしてここは、

        小笠原諸島の神社 ~小笠原諸島紀行④

        マガジン

        • 神道
          1本
        • 小笠原諸島 Bonin Islands
          4本
        • ブックカバーチャレンジ
          8本
        • ロシア Russia
          4本

        記事

          ウスリースク逃避行 ~極東ロシア紀行③

          Ussuriysk, Russia ウラジオストクに到着した日、坂の多い街を半日、距離にして30キロ步き囘つた。坂と軍港を特色とする街の景観を愛でつつも、喧騷とアジア系觀光客の多さにだんだんうんざりし出し、逃避を考へ出した。 その日泊まつた宿は、木賃宿とも言ふべき狹い部屋に異常に人を詰め込む安宿。ゴーリキーの『どん底』の舞臺となつた木賃宿のやうな、ロシア的な泥臭さと乱痴氣騷ぎを期待したがゆゑに、とにかく安さだけを基準で選んだのであつた(1泊約500圓)。結果、若者達が食堂

          ウスリースク逃避行 ~極東ロシア紀行③

          ウラジオストクに蕎麦とニシンと文豪カフェを求めて ~極東ロシア紀行②

          Vladivostok, Russia シベリア鐵道で、ナホトカからウラジオストクへ向かつた。これに乘るために、樂しみだつたホテルの朝食を斷腸の思ひで諦めたのであつた(電車の發車時刻がやたらと早かつたのである)。 ウラジオストクでは、蕎麥とニシンの鹽漬けと文豪カフェを堪能しようと決めてゐた。蕎麥は麵ではなく、實(Гречка グレーチカ)を煮たものである。10年以上前に日本のロシアンバーで食べて、そのうまさに呆然自失した覺えがある。ニシンの鹽漬けは、まだ堪能したことがない

          ウラジオストクに蕎麦とニシンと文豪カフェを求めて ~極東ロシア紀行②

          ナホトカの日本人墓地を訪ねて ~極東ロシア紀行①

          令和元年5月8日執筆(facebookより轉載)。去年5月に、「極東ロシア紀行」を①~③まで書いたが、その續編④を今年の5月中に書きたくなつたので、こちらにも①~③を轉載する。 旅は、令和元年5月1日~5日に行つた。 Nahodka, Russia 10聯休を利用し、ちょつとシベリア鐵道に乘つてきた。最初に向かつたのは、旅人がゐないナホトカ。ここでの最大の目的は、シベリア抑留者の「日本人墓地」を訪れることであつた。 とは言え、丸々10日間行つた譯ではない。「神社關係者

          ナホトカの日本人墓地を訪ねて ~極東ロシア紀行①

          「7日間ブックカバーチャレンジ」…第8日目(番外編)『アルパカファン』

          アルパカ好き必攜の書。人は誰しも、一度はアルパカになりたいと考へたことがあるはずである。ただ、實際にアルパカになるためには、輪廻轉生ぐらゐしか方法がない。それには、途轍もない年月と途轍もない幸運が要求される。 そこで、我々にできる最善の手は、できるだけアルパカの勉强に勵み、できるだけアルパカに接し、少しでもアルパカの氣持ちを理解しようと努めることだけである。そこで、本書の出番が登場する。 本書は「アルパカの基礎知識」だけでなく、「アルパカ流スローライフ」まで提唱する。

          「7日間ブックカバーチャレンジ」…第8日目(番外編)『アルパカファン』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」…第7日目『未成年』

          facebookからの轉載。本日執筆。 ドストエフスキー著。1875年刊。次は、海外文學から選びたいと思つた。それならロシア文學がいいと思ひ、ロシア文學ならドストエフスキーだと思ひ、それなら「ドストエフスキー五大長編」には入つてゐるが、「四大長編」には入つてゐない、位置付けの厄介なこの作品がいいと思ひ至つた。『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』を選ぶ人は多いだらうから、敢へてこの作品を選んでみたかつたといふ思ひもある。 延々と靑年の獨白が續く。これにうんざりする人もゐるかも

          「7日間ブックカバーチャレンジ」…第7日目『未成年』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第6日目…『東海道中膝栗毛』

          facebookからの轉載。本日執筆。 日本最初の職業作家と言はれる、十返舎一九著。享和2(1802)年~文化11(1814)年刊。思想・哲學から離れ、古典文學から、誰もが知つてゐる作品をと思ひ選んだ。 2人のふざけた男が、江戶を出發し、伊勢で神宮を參拜し、大阪まで旅をするといふそれだけの話。道中、駄洒落を言ひ、狂歌を詠み、一々騷動を起こす。 狂氣を感じさせるほど、ふざけてゐる。が、それこそが最高に面白い。安つぽいリアリズムを遙かに超越してゐる。當時の多くの庶民から

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第6日目…『東海道中膝栗毛』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第5日目…『死に至る病』

          facebookからの轉載。令和2年5月16日(土)執筆。 キルケゴール著。1849年刊。西洋哲學より、誰もがその名を知っている作品をと思ひ選んだ。 はつきり言つて、最初は極めて取つ付き難い。19世紀の異端哲學者として竝び稱されるニーチェの方が、遙かに取つ付きやすい。日本人には絕對的に分かり難いキリスト敎信仰の道を志向してゐる爲であらう。對して、それを否定するニーチェの方には、破壞の爽快感を感じるといふ點もあらう。 死に至る病が絕望であるといふことは周知の事實である。

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第5日目…『死に至る病』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第4日目…『國體講話』

          facebookからの轉載。令和2年5月15日(金)執筆。 戰前を代表する神道思想家、今泉定助の著。昭和13(1938)年刊。GHQ發禁圖書。 「神道思想は、西洋哲學に對抗できるのか」「そもそも、神道に哲學と同列に論じるだけの理論が存在してゐるのか」「あるいは、存在し得るのか」 私は、かうした問ひを長期間持ち續けてゐた。そんな時、一條の光明を與へてくれたのが、本書の存在だつた。そこには、雜多な神道思想を網羅的に體系化し、神學にまで深化させ、尙且つ行動へと喚起する宗敎性

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第4日目…『國體講話』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第3日目…『世界史の哲學』

          facebookからの轉載。令和2年5月14日(木)の記事。 京都學派第3彈。西田哲學の後継者、高山岩男の代表作。昭和17(1942)年刊(2001年に復刊あり)。 戰時下といふ緊迫した狀況において、日本哲學が見せた極點の一つ。「嘗て、日本に哲學があつた」と不甲斐ない現狀への寂寥の念と共に、偉大な過去の業績に陶醉させてくれる作品。 哲學によつて、果敢にも世界觀の鬪爭(アングロサクソン的世界觀對日本的世界觀)を謳ひ、日本主體による世界史の轉換を基礎付けたもの。 戰後、

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第3日目…『世界史の哲學』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第2日目…『世界史的立場と日本』

          以下は、facebookからの轉載。令和2年5月13日(水)執筆。 京都學派第2彈。GHQ發禁圖書。昭和18(1943)年刊。當時を代表する哲學者4人(西田幾多郞門下生。高坂正顯・西谷啓治・高山岩男・鈴木成高。鈴木の專攻は、歷史學)による、知的報國の記錄。西洋の歷史哲學を咀嚼した上での哲學的叡智によつて、日本の世界史上の立場と進路を摸索した、壯大な座談會を描いたもの。哲學(廣い意味で、學問)の可能性を痛切に問ひ續けてゐる。 私の獨斷では、近代日本最高水準の座談會だと思

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第2日目…『世界史的立場と日本』

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第1日目…『善の研究』

          最近更新してゐなかつたので、facebook上で書いた「7日間ブックカバーチャレンジ」の記事を轉載します。最初から聯動しておけば良かつたものを。それから、ルールを無視し、段々解說が增えて行きます。 執筆は、令和2年5月12日(火)。 正字正假名の使用で繫がつた國語問題協議會の織田先生より、「7日間ブックカバーチャレンジ」のバトンが囘つてきました。今までこの手のものに關はつたことがなかつたのですが、讀書文化普及といふ崇高な目的があるさうなので、紙媒體に固執する私は卽座に快諾

          「7日間ブックカバーチャレンジ」第1日目…『善の研究』

          戰略なき母島上陸作戰 ~小笠原諸島紀行②

          母の日に母島のことを書かうとする氣がなかつたと言へば、噓になる。 船旅はいいものだ。極度に搖れたり、騷々しい乘客と同室になつたりさへしなければ。昨晩は極度に搖れたが、それは過去の話。過去の感覺なんて、感覺として意味をなさない。今日は天氣も氣分もいいから、やはりこの船旅は快適至極である。 思へば、船旅の記憶は、深く心に刻まれてゐることが多い。そんなことを思つてゐると、過去の良き船旅の囘想が延々と始まつた。 スマトラ大地震の數日後に、海賊多發地帶を通過したペナン→メダン(ス

          戰略なき母島上陸作戰 ~小笠原諸島紀行②