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夜の街で軍事パレード ~極東ロシア紀行④

Military parade in Vladivostok at night

1年前の旅行記にこの續篇を書かうと思つたのは、今が5月だからである。6月になると、書き難くなるからである。少々、時局と絡むことだからである。理由は、以下の通り。

少し繰り返しになるが、私は去年の改元の日(5月1日)から5日まで、ロシア沿海州に旅に出た。そして最終日前日(4日)は、ウラジオストクからウスリースクへ行き、再びウラジオストクに戾つた。

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櫻は滿開。ロシアで見る櫻もよい。そしてここは、「浦潮本願寺跡」。勿論、「浦潮」は「うらじほ」と發音。この都市では、日本ゆかりの地を巡る旅も樂しい。

さて、この日は17時からオペラを觀た(本當はバレエを觀るつもりだつたが、オペラしかやつてゐなかつたから、それを觀たのである)。演目は「カルメン」で、原作も讀んだことがあつたので、それなりに面白かつた。しかし、何となく2時間ぐらゐで終はると根據もないまま思つてゐた。明日は歸國の日で、早く宿を出なければならない。だから、餘り遲くまでオペラが續くとまづい。そもそも、お土產だつて碌に買つてゐない。途中でそんな思ひに驅られてゐた。結局、オペラは21時まで、4時間續いた。

このままでは、お土產どころか、樂しみにしてゐた「ロシア最後の晩餐」すら機會を逃し、黑パンやインスタント食品だけになつてしまふかもしれない。それだけは嫌だ。急いで町の中心に向かつた。しかし、劇場は中心部から離れてをり、近くのバス停は膨大な數の聽衆が殺到。それでも、良き晩餐を求める一心で早めにバスに乘り、締める間際の中心部の食堂に、22時前に驅け込んだ。

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ロシア滯在最後の晩餐。最後にしては淋しいが、大好きなグリーチカ(蕎麥の實/寫眞左下)をたらふく食べることができたので、良しとしよう。

店から出たら、22時15分。ロシアの夜は、決して治安も良くない。もう宿に戾るだけだ。宿へ向かつた。すると、トラックのやうな車の行列に遭ひ、道を渡れなかつた。その列は、見渡す限り續いてゐる。一體、何だ。

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トラックではないことが分かつた。恐ろしく巨大な何かを積んでゐる。建設現場で使ふのだらうか。いや、よく見ると、ミサイルらしい。車は、一種類ではないらしい。それにしても、途切れることなく續いてゐる。

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軍だ。私は海外で寫眞を撮り、何度も痛い目に遭つた。特に軍隊を撮る時は、氣をつける必要がある。軍人に、寫眞を撮つていいか聞いた。「ダー(いいよ)」と呆氣ない。拒絕されることを想定して聞いたのだが、餘りに簡單に撮つていいといふことになり、拍子拔けだ。しかし、これはいい機會だとばかりに寫眞を撮りまくり、パレードに見入つた。

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しかし、何の遠慮もなく、想像を絕するほど巨大な車やら戰車やらが道路を通る、通る。道路は傷まないのだらうか。いや、ロシアだつたら、かうしたことを想定して道路を作つてゐるのかもしれない。いや、道路が傷むことなんか何も氣にしてゐないのかもしれない。そのやうなことの答へは知り得なかつた。

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23時過ぎまで見入つてしまつた。先軍思想の名殘だらうか。そもそも、今現在も先軍思想が生きてゐる證據なのだらうか。とにかく、ロシアは軍の用ゐ方が巧みだ。軍に尊敬の念を抱かせるやうに、見事に演出してゐる。國民に長く親しまれてゐる民謠を軍樂に取り入れたりもしてゐる。かういつた點は、日本も見習ふべきかもしれない。まあ、ロシアの歷史認識は、絕對的に理解できないが。

そんなことを考へながら、歸途についた。5月とは言へ、ロシアの深夜はかなり寒い。しかし、なぜこんな夜遅く軍事演習をするのか。しかも、練習のやうでもあつた。この謎は、歸國後解けた。

ロシアには、重要な國家的イベントとして、5月9日に「對獨戰勝記念日」がある。どうやら、それの練習だつたらしい(私が見たのは、5月4日)。さて、私がこの記事を書かうと思つたのは、今年の5月9日、ロシア人の知人が、以下の寫眞を示しながら、「冗談でしょう?ロシアは先の大戰で、2700萬人が亡くなつてゐるのだ」といふつぶやきを見たことによる。

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要は、トランプの「アメリカとイギリスがナチに勝利した」といふ認識に、ロシア人として納得ができなかつたやうなのだ。思へば、アメリカは「大東亞戰爭」の呼稱を禁止し、「太平洋戰爭」との呼稱に矮小化したが、これと同じ原理らしい。勝利をアメリカが獨占したかつたやうなのである。とは言へ、ロシアに同情するべきではない。歷史認識を巡る情報戰では、ロシアの方が遙かに上手だし、日本とロシアの間にもかうした問題はある。日本は、日本の歷史認識を確固として示せばいい。

5月が終はらうとしてゐる時に、去年の旅を振り返りつつ、こんな時局的なことに少し觸れてみたかつた。


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