不安だ詩

昼間に家にいると、高揚感と罪悪感でグラグラする。白むほど照り付けられた家々が見える。窓を開けると、撫でるような風とどこかから工事の音が入ってくる。鉄と鉄がぶつかるような、かん高い不協和音が飛散する。工事において、基盤の部分が一番重要で、時間をかけるらしい。人間の場合の子供時代だろうか。いろんな言葉を与えられることで、自分を固定していって、揺らぐことのない基盤をつくる。その上に何を建てても、バランスを保ちながら立ち続けられるように。崩れたらまた建てればいい、なんてのは自分を飾り立てるフレーズだ。
 
大数字魔法時代。数字の魔力をうまく操れる人が勝つ時代。自分の作った林檎を数えるためでしかなかった数字が、体幹のない人間を朝顔みたいに支える柱になった。支柱の多さが不安定ではない証拠で、幾本もの支柱に巻き付いた者同士が、依存を支えると勘違いして、腕を絡ませながら歩く。泥塗れの自分の手の中にある、折れた支柱を見るたびに、虚飾な滑稽さに憧れる。喉から臍にかけて引き裂かれて、肋骨が怪物みたいにぐちゃァッと大口を開けて、体内に取り込みたいくらい欲しくなる。命懸けで食べた霞は、七色の幻想的な美しさなんだけど、きっと幻覚で、食べた時には命が無くなっている。これが私が騙る理由。

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