おべんとばこのうた
これッくらいのぼくのおべんとばこには、食べ物がぎゅうぎゅうに詰まっていた。アイジョウを込めて作ってくれたので残さずに食べましょう、って言われても、食べものが詰まってるとしか思えなかった。彩りがキレイだね、って言われても、プチトマトと御飯の食べ合わせが悪いんだよなって思ってた。それでも仕事に行く前に作ってくれたし、嫌いなものもなかったから不満は言わなかった。きっとこれが一番最初の忖度だと思う。
料理をするようになって、作ってくれるアイジョウは理解ったけど、アイジョウの込め方は理解らなかった。感情は自分だけのものではないのか。感情を食べさせるなんて暴力じゃないのか。おべんとばこは自分の愛を託せるような宝石箱じゃない。ぼくはウツクシイモノガタリを生きられないんだな。ぼくのおべんとばこは、所詮てあそびうたにしか成れない。