雷時々蟬時雨

足元で暴れる蟬の辞世の句
「父の命をお前に託す」
 
切るような不快感なる蟬声に
本能に刺さる告白を見る
 
空蟬をくだいて飯にふりかける
食えば俺も羽ばたける気がして
 
夕焼に薪を焼べたるみんみん蟬
お前のせいで明日も真夏日
 
夜を隠す闇の雲を割る雷光
を模しているのかジグザグ分け目
 
地中から這い出た蟬が上げる声
聞こえる頃にようやく眠れる
 
ジィィッとベンチに居ても玉の汗
蟬のボイトレに付き合ってやる
 
死してなお心を乱す油蟬
コンビニへ走る私は仲達
 
「可愛くない」ラペルを触りながら言う
君の胸のリボンは蟬形
 
バタバタして優雅に舞うことはないけれど
生き大急ぐ蟬の美しさ

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