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【詩】選ばれし子供
お母さんがお皿や茶碗をぶん投げる
ガチャンガチャンと食器が割れる
また始まった
「花織、行くわよ」
お母さんはいつものように
ひとしきり暴れた後
幼い私を連れてバス旅行に行く
お父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも黙って見てるだけ
私は内心得意だった
お母さんに選ばれるのはいつも私
私が一番愛されているんだ
夕方までお母さんと私は小旅行をして
何事もなかったように家に帰る
辛抱強く温かく優しく接すれば
いつか改心する
それがお父さんの信念だから
お父さんは文句ひとつ言わず
お帰り と言う
選ばれし子供
あの頃の思い出は私をいい気にさせた
お母さんが大好きだった
怒った母親の旅先が
自殺の名所と気づくまでは
(日本現代詩人会 読者投稿欄 第26期入選)