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『Over』の作曲秘話を聞いたら、Mr.Childrenがさらに大好きになった話

Mr.Childrenは言わずと知れた、
日本を代表するロック・ミュージシャンである。

ミスチルの虜になって以来、
全曲のプレイリストを聴くほど
彼らの音楽に熱中している。

僕は冷えた冬の晩に、
ヒカリノアトリエのアルバムを聴きながら、
ドライブをしていた。
その時、興味深い曲に出会ってしまった。

アルバムの最後に
『 Over(引き+語り2 Version)』
というトラックが存在する。

Overという曲は、有名であるものの
『名もなき詩』『Tomorrow never knows』
『HANABI』『終わりなき旅』
と知名度というものさしで比較すると、
少し距離をとるかも知れない。

ただ、名曲であるということは間違いない。
打順が1番から9番まであるとしたら、
7-9番には入るくらいの立ち位置のような気がする。

冗談抜きで、100回以上リピートしたのではないだろうか。

朗らかなメロディーラインの中に、
物悲しい雰囲気が漂う失恋ソング。
けれど、と僕は思う。
Overという曲は、失恋ソングという簡単な言葉で片付けてはいけないのではないか──と。

ソロギターの弾き語りが始まり、桜井さんの柔らかい声が会場を包む。
1番を歌い終えると、彼自身によるMCが始まった。

Overというタイトルは、
Love is over.──愛が終わるという意味と
悲しみを超えていこうという意味でのoverです。

最初から、話に引き込まれる。
はぁーそういう意味だったのか。
完全に桜井さんのペースだ。
会場のオーディエンスも、桜井和寿の話を一言一句聞き逃さないように、
耳を澄まして聞いているように思えた。

ギルバートの『Alone Again』ってご存じありますか?
alone again naturally (また一人ぼっち、それは当然のことだ)
両親が亡くなり、婚約者にも逃げられ、結局、僕は一人ぼっち。
人懐っこいメロディーとは裏腹に、物悲しい歌詞のギャップに、人々は心を掴まれるのではないかと思った。

Overのサビは、まるで幸福の中を飛び跳ねるような、
明るいメロディーだ。
対照的に、歌詞はというと、
孤独な男の悩み・葛藤・後悔で埋め尽くされている。
売れたくて仕方がない時期に
『Alone Again』を自分のものにしようとして、
作成された曲だった。

物議を醸している歌詞がありまして。
顔の割に小さな胸や、顔の割に小さな。
顔がでかいのに!図体は大きいのに、意外と胸は粗末なものなのか、
それとも、目鼻顔立ちはパチっと、はっきりしているのに、
胸にあるのは、小さなものなのか──。

会場に笑いが起こる。
みんなが何かを感じとり、黙認する雰囲気。
Overで、一番気になる歌詞は、間違いなくここだ。
口ずさんでいる時に、クエスチョン・マークが一回浮かぶところだ。

しかも、この歌詞が挿入されているのは、
最初のサビの頭。
どういう意図なんだろう。

たまに人から聞かれることがあります。
桜井さんは、顔を見ただけで、胸が大きいのかわかるのですか?
分かりませんよそりゃ。

車内で一人、爆笑してしまった。
会場全体が、さらに温まっていくのが伝わる。
桜井さんが話せば話すほど、
真意が気になってくる。

自分としては、不得の致すところな訳ですよ。
今だったら、もう少し的確な歌詞にしていたかもしれない。

何を言わんとするのかというと、怒らないでくださいよ。
ちっちゃいよりも大きい方がポイント高いというか。
(えーっという女性たちの声)
自分だってパッチリ二重で生まれたかったですよ。

セールスポイントとしては、ちょっと低い、小さな胸だけど、
僕はそれが大好きだったよ──世界でたった一つだけの──君の胸だから。
(歓声と拍手)
そこが言いたかった。

弁明というかなんというか(笑)
アーティストの語りは、ユーモアにも富んでいて大好きだ。
桜井さんの人間らしさ満載で、
言葉選びも、なんだか愛が感じられた。

賛否は分かれそうだし、
ツッコミどころもあるけれど、
ますます『over』が
僕の中で愛着ある
思い入れの強い曲になった。

曲の最後は、アレンジの口笛と共に
Alone again naturally.と言い放ち、
会場中の溢れんばかりの拍手で
Overのシークレット・トラックは終わる。

Mr.Childrenは、
僕にとっての存在理由であり、過去でもあり、未来でもある。

彼らの曲をこれからも聴き続ける限り──。



<歌詞>
何も語らない
君の瞳の奥に愛を探しても
言葉が足りない 
そうぼやいてた君をふっと思い出す
今となれば
顔のわりに小さな胸や
少し鼻にかかるその声も
数え上げりゃきりがないんだよ
愛してたのに
心変わりを変わりを責めても空しくて

"風が伝染るといけないから
キスはしないでおこう”って言ってた
考えてみると 
あの頃から君の態度は違ってた
いざとなれば
毎晩君が眠りにつく頃
あいも変わらず電話かけてやる
なんてまるでその気はないけど
わからなくなるよ
男らしさって一体どんなことだろう?

夕焼けに舞う雲
あんなふうになれたならいいな
いつも考えすぎて失敗してきたから
(Wow....)
<♪>

今となれば
嘘のつけない大きな声や
家事に向かない荒れた手のひらも
君を形成(つく)るすべての要素を
愛してたのに
心変わりを責めても
君は戻らない
いつか街で偶然であっても
今以上に綺麗になってないで
たぶん僕は忘れてしまうだろう
その温もりを
愛しき人よ さよなら
何も語らない君の瞳も
いつか思い出となる
言葉にならない悲しみのトンネルを
さぁくぐり抜けよう

Mr.Children/Over

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