紹介したい、でもネタバレはしたくない。
フォローしているクリエイターさんの記事を読んでいた時。
Amazonリンクの書影が、表示されていることに気が付きました。
当初のようなカード表示ではないけれど。
それでも、例のAmazonロゴしか出てこない状態を思えばじゅうぶんです。
障害復旧に向けて動いているnoteさんに敬意を表しつつ。
早速、最近読んで面白かった本の話をします。
アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。
「海外文学か…」「SFか…」と敬遠しそうになった人には、ちょっと待ってくれと言いたい。
ジャンルで切り捨てるのはもったいない。
今を生きる私達にとっても、決して他人事ではない思考実験めいた問いを含む、極上のエンターテインメント作品でした。
面白さを十全に堪能するなら、ネタバレは見ないほうが良いです。
しかしAmazonレビューの中にも、なんなら実際に本についている帯にも、展開や結末のネタバレめいたコメントがあるのが悩ましいところ。
出来ることなら、それらを視界に入れずに読んでほしい。
なんならこれを読んでいるあなたのところに、帯を外した上下巻を届けに行きたいぐらいです。
(そして読了後に、本作の凄さや感想を思う存分話したい)
そういうわけにもいかないので、代わりに違う本を一冊ご紹介します。
伊坂幸太郎『死神の精度』です。
なんで?? と思われたでしょうか。
伊坂さんの本は連作短編集ですし、表題作で日本推理作家協会賞(短編部門)も受賞しているあたり、少なくともSFではありません。
そして内容も展開も全然違います。
でも。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んで、中盤の展開に唸った時に連想したのが、私にとっては伊坂さんのこの作品だったんです。
もっと正確に言えば、本書に収録されている短編『死神と藤田』を読んだ時の高揚感に似ているなあ、と思った次第。
例えば、水が入ったコップを逆さまにしたら、中の水は全部こぼれます。
すごく簡単な例を挙げましたが、そんなふうに誰もが例外なく「地球上での共通ルール」の中で生きていますよね。
伊坂さんの『死神の精度』は、物語の展開を通して「作品世界の共通ルール」を読み手に納得させるのが、とても上手いんです。
その上で「こうなってこうなったらこうなるしかない」という結論にたどり着く鮮やかさがあります。
日常生活でも(それこそnoteで面白い記事を読んでいても)、自分が見落としていたものを提示される、自分になかった発想や気付きに出会うのは気持ちが良いものです。
知性にとっての快楽、と言っても過言ではない。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』における「こうなってこうなったらこうなるしかない」が、ピンチなのかチャンスなのか…。
それは、読んだ人だけの秘密というやつです。
最後にひとつだけ。
(ここまで「ネタバレは本意じゃない」と書いてきたので、一番最後にしてみました)
タイトルにもなっている「ヘイル・メアリー」の意味を、Weblio辞書から引用しておきます。
気になったら、ぜひとも手にとってみてくださいませ。