見出し画像

【汗のかき方】汗をかいてスッキリするのはOK、グッタリするのはNG

内臓に元気がない【気虚タイプ】の人は要注意

もうすぐ7月です。夏の暑さも本番を迎えようとしています。
人間は体温が上昇すると、体温を調整するために発汗します。
身体が汗を出すという反応は、一見して健康的な状態を示しているかのように思えます。しかし、この反応は体質によっては必ずしも好ましいものとは限りません。運動によって大量に汗をかき、その結果として気分がすっきリするという体験は有益な反応です。しかしながら、わずかな運動や温かい食物の摂取により、突如として大量に汗をかいたり、汗をかいた後にスッキリするどころかむしろ疲労感を覚えるという反応は注意が必要なサインです。
このような症状は「気虚(ききょ)」の体質を示しています。

中医学では食事や栄養素からに得られるエネルギーや、元々臓器に備わっているエネルギーを総称して「気」と呼びます。
「気虚」は、内臓の機能が弱く、体内のエネルギー(気)が不足している状態を表します。

気虚体質の人は、
・疲れやすい、体力の低下、持久力がない
・胃腸が弱い
・胃がもたれやすい
・食欲が少ない
・痩せの大食い
・胃下垂
・水分を多く含んだ体型・体質 など


の特徴を持つことが多いです。
このような気虚体質の人が激しい運動により大量に汗をかくと、疲労はさらに増し、体内の代謝活動は減少します。

五臓の脾と汗の関係

気虚体質の人は、体の毛穴が適切に閉じる能力が低下しており、結果として汗がしょっちゅう漏れてしまいます。この状態は、五臓の一つである「脾(ひ/消化機能)」の働きと深く関わっています。「脾」は主に消化器系の機能全般を司り、加えて体内の血液・水液・体液が漏れ出さないように「固摂(こせつ)」する機能もコントロールします。この「脾」の機能が低下すると、汗だけでなく体液の過剰分泌、出血といった問題も生じやすくなります。これらの症状は「脾不統血(ひふとうけつ)」と呼ばれます。これは、生理時に長時間にわたって出血が止まらない、生理期間以外に出血が見られる、容易に出血してしまうなどの症状と関連しています。
これらの問題は、内臓機能の低下に対する漢方の処方によって改善可能です。

主な処方として
⭕️脾気虚(胃腸の力が弱い)の方には
益気健脾(えっきけんぴ/元気を高め、胃腸を元気にする)作用の参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)
補中益気(ほちゅうえっき/元気を高め、胃腸を元気にする)作用の補中益気湯
⭕️気の不足が著しい方
益気生津(えっきしょうしん/元気を高めて体液を補う)作用の生脈散(しょうみゃくさん)
⭕️不正出血、皮下出血、目出血、血便など出血症状が頻繁な方
益気補血(えっきほけつ/元気と血液を補う)作用の帰脾湯(きひとう)

気虚体質の人には、胃腸の機能と体内のエネルギーを高め、体液の分泌を抑える効果を持つ漢方薬が有用です。
汗の止まらない症状とは異なりますが、慢性的な目の出血症状にお困りの50代女性の症例で、上記の処方を組み合わせて出血が止まったケースがあります。この方は仕事と家事に追われ、毎日5時間睡眠というハードな生活を強いられている方でした。睡眠時間を増やすようアドバイスしましたが、子供の帰りが遅く、そこから家事を済ますと睡眠を削るしかなく、睡眠不足が原因の強い気虚状態でした。
補気作用の生脈散と、統血作用の帰脾湯を服用し、開始1ヶ月以降から出血症状が徐々におさまり、その後は目に出血がほとんど出ない状態まで改善しました。

水分と栄養素の補給の重要性


汗は単なる水分ではありません。それは体から老廃物を排出するだけでなく、必要な栄養素も一緒に排出してしまいます。

本来身体にとって大切なミネラル分は殆どが血液の中に再吸収され、水分だけが皮膚の表面から出てきます。これが本来の汗です。つまり"良い汗"なのです。ところが、発汗を促す交感神経の機能や汗腺の機能が鈍っていると、ミネラル分の再吸収が行われず、水分と一緒に皮膚の上に出てきます。これが"悪い汗"です。普段あまり汗をかかない生活をしている人に多く見られる現象です。ミネラルは体の生理機能を円滑にする大切な栄養素です。それが"悪い汗"とともに体外に流出し、その結果、不足状態に陥ってしまうと内蔵の機能低下など様々な体調不良をもたらすことになるのです。いわゆる「夏バテ」とはこうしたことが原因ではないか、と考えられています。

総合南東北病院さんの記事引用

気虚体質の人は特に、過剰な汗の分泌により栄養素が失われると、体内のエネルギーがさらに不足し、血液の質も低下します。このような状態を避けるため、適切な水分補給と栄養素の摂取が重要となります。
また、岩盤浴やサウナ、ホットヨガなどで大量に汗をかくことは慎重に行うべきです。これらの活動の後に冷たい水をがぶ飲みすると、胃腸の機能が低下し、体調不良の原因となることがあります。適度な運動と、体温に近い温度の飲み物で水分を補給することが、健康維持にとって最善の方法です。
特に女性は、生理痛や月経周期の乱れといった問題が起こりやすくなるため、夏の水分摂取の量や温度には注意が必要になります。

適切なライフスタイルと健康維持

気虚体質の人は、体力の温存と適切なエネルギー補給が特に重要です。
体内のエネルギーを適切に保つため、食事はバランスよく、消化に良いものを選びましょう。特に胃腸の機能向上の面では、芋類、根菜類を、エネルギー産生のためには糖質(米、麦、果物)、タンパク質、脂質をしっかり摂取すると良いですね。運動前は、エネルギー代謝効率の良い糖質の摂取、運動後は筋肉の修復に必要なタンパク質の摂取を意識すると良いですね。
また、適度な運動によって体力をつけることが重要ですが、過度な運動は体力を消耗させてしまうため、体や体質に合わせた適度な運動を心掛けることが重要です。
良質な睡眠もまた、体のエネルギーを回復させ、体力をつける上で重要な要素です。夜更かしは避け、定期的な睡眠時間を確保しましょう。

気虚体質の人は特に、食生活やその人に合わせた運動の質と量、それに加えて、必要な場合は胃腸の機能を高める、気を高める滋養強壮作用の漢方を加えて適切な健康管理が必要になります。食事、運動、睡眠などの日常生活の各面でバランスを保つことが、気虚体質の改善と、これから迎える暑い夏を少しでも快適に過ごし、夏バテ知らず、汗をしっかりかいても体がスッキリを目指しましょう。

いいなと思ったら応援しよう!