固腸堂のちょこっとコラム/漢方薬剤師・中村寿理

国際中医専門員。不妊カウンセラー。石川県で明治から続く漢方薬店「中村固腸堂(こちょうどう)」の6代目。 漢方をもっとを気軽に身近に、気軽に感じてもらうため「ちょこっとコラム」を掲載していきます!!

固腸堂のちょこっとコラム/漢方薬剤師・中村寿理

国際中医専門員。不妊カウンセラー。石川県で明治から続く漢方薬店「中村固腸堂(こちょうどう)」の6代目。 漢方をもっとを気軽に身近に、気軽に感じてもらうため「ちょこっとコラム」を掲載していきます!!

最近の記事

風邪でもない、喘息でもない長引く咳

空気が乾燥して寒くなるこの時期、咳の相談が増えてきます。 咳は2〜3カ月から、長い方で10年近く症状が治らないというケースも見られます。咳が長く続くと、肺陰(はいいん)を消耗し、それが咳をこじらせる要因となっていることが多々あります。肺陰とは肺を潤す体液のことで、中医学では【肺は潤いを好む臓腑】と考えます。 「肺陰の消耗」とはすなわち、「肺が乾燥」している状態を指し、例えば季節による外気の乾燥が肺に影響すると、のどや鼻の乾燥、空咳、しわがれ声、呼吸器の粘膜に潤いを失うと血

    • 日光と排卵周期

      【日光によって安定する性周期】 スポーツの秋というように、外で日光を浴びるのが心地よい季節になってきました。今年は酷暑で、夏場もあまり外に出なかった方も多いのではないでしょうか。 先日読んでいた科学誌に【日光と体の機能性】に関する興味深い記事が掲載されていたので、少しご紹介いたします。 記事の中身は『メスのマウスは日にあたる時間が長くなると、排卵周期が安定する』といった内容でした。研究成果は、明治大学の中村孝博専任教授によるもので、ヒトを含む一年中繁殖可能な生物において、日

      • 秋の夜長に起きやすい睡眠障害〜自然な眠りを得るための漢方や生活習慣~

        今年の猛暑も落ち着き、気温の低下とともに秋の気配を感じられるようになってきました。 寝苦しい夏の夜も過ぎ去り、過ごしやすい気温とともに、これからは眠りに良い時期の到来!と思いきや、意外と秋は不眠に陥りやすい時期とも言われています。過去のデータになりますが、ドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品(OTC薬品)の内、催眠鎮静薬の販売ピークは5月、8月、10月だそうです。 「眠りの秋」というように、一見過ごしやすいイメージのある季節ですが、実際は不眠症や睡眠障害で困っている方は

        • 人工甘味料は減量に効果なし。むしろ病気リスクが高まるデータをWHOが発表

          8月もいよいよ終わりを迎え、朝晩は少し涼しさも感じられるようになってきましたね。今年は猛暑日が続き、外出を控えて屋内で過ごす時間が多かったのではないでしょうか。また、熱中症対策で清涼飲料水を多く飲んだり、汗をたくさんかいて冷たいビールやお酒がいつもより増えてしまった方も多いはず。 夏場は痩せやすいイメージがありますが、気温が高い分、体内での熱の代謝量が減り、むしろ気温の寒い冬よりも基礎代謝が落ちる時期でもあり、太りやすくなります。また冷たくて甘いものの消費量も増え、それらも太

          水分の摂り方~水を1日2リットル摂取はちょっと待って!~

          水分過多、水捌けの悪い【水湿(すいしつ)】【痰湿(たんしつ)】タイプの方は要注意 夏真っ盛りです。 ちょっと外に出ただけでも汗が吹き出し、ついつい冷たい飲み物に手が伸びちゃいますよね。また、熱中症による被害のニュースもよく耳に入ってくるので、否が応でも水分摂取は意識してしまいます。 健康に気を使っている方なら、「1日2リットルの水を飲むのが良い」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれませんね。でも、実はそのアドバイスは全ての人に当てはまるわけではないんです。 特に、

          水分の摂り方~水を1日2リットル摂取はちょっと待って!~

          【汗のかき方】汗をかいてスッキリするのはOK、グッタリするのはNG

          内臓に元気がない【気虚タイプ】の人は要注意 もうすぐ7月です。夏の暑さも本番を迎えようとしています。 人間は体温が上昇すると、体温を調整するために発汗します。 身体が汗を出すという反応は、一見して健康的な状態を示しているかのように思えます。しかし、この反応は体質によっては必ずしも好ましいものとは限りません。運動によって大量に汗をかき、その結果として気分がすっきリするという体験は有益な反応です。しかしながら、わずかな運動や温かい食物の摂取により、突如として大量に汗をかいたり、

          【汗のかき方】汗をかいてスッキリするのはOK、グッタリするのはNG

          若さの秘訣は腎の強化!~若いうちからの「補腎」で腎の機能を高める~

          「腎」の包括的な役割とは 「若さを保つ」において、「腎」の役割は重要です。 中医学においては、体全体を「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つの臓腑に分類し、それぞれが互いに密接に関係しながら体を構成するとされています。 今回の焦点である「腎」は、中医学において単に腎臓と同一視するだけではなく、生殖、発育、ホルモン、免疫、泌尿器、自律神経などの多岐にわたる機能とも関連すると考えます。近代の科学的な研究により、血液を生成するホルモン「エリスロポエチン」、血圧を調節するホルモン「

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          【腸脳相関】腸と脳の間でさまざまな情報を交換〜腸内環境が精神不安定や不眠、アレルギーなど幅広く影響〜

          【腸は排泄するだけの器官ではない】 近年「腸脳相関」という言葉を耳にするようになりました。例えば、 ●ストレスを感じると腸内細菌のバランスが大きく変わる ●腸内環境が悪いと精神トラブルが起こりやすい  など、腸と脳とは密接に情報交換が行われており、胃腸は栄養吸収・排泄するだけの器官ではないということが科学的にも分かってきています。実際に、日本ADHD(注意欠如・多動症)学会でも、過去に腸脳相関と発達障害との関係性などを題材とした内容のシンポジウムが開催されており、精神的

          【腸脳相関】腸と脳の間でさまざまな情報を交換〜腸内環境が精神不安定や不眠、アレルギーなど幅広く影響〜

          【東洋医学と体内時計】子午流注(しごるちゅう)

          「生命は地球の自転に同調し24時間周期で変動しており、それは遺伝子によって体内時計が調節されている」という体内時計に関して、2017年にノーベル生理学賞・医学賞が贈られています。その臓器が最も働くべき時間にピークを迎えられるようにするための時計遺伝子というものが存在し、時間に合わせて体温を調節したり、ホルモンの分泌が変化しているということです。 東洋医学において私たち人間は、自然界の一部であるという考えが根底にあるため、はるか昔から自然界の法則や宇宙の法則と人間の体を結び付

          【東洋医学と体内時計】子午流注(しごるちゅう)

          【生理痛が起こる仕組み】骨盤内が冷えていると内膜がうまく剥がれない

          生理痛はなぜ起こるのでしょうか。 原因はいろいろありますが、あまりにひどい方は子宮内膜症などの疾患がないか病院で検査をすることが必要です。 生理痛には背景に冷えや疲れ、血液不足などによる子宮の血流低下が関与しています。中でも冷えが深く関与していることが多いです。 子宮内膜は赤ちゃんの寝床として準備されますが、妊娠しなかった場合、生理として外に排泄されます。このとき骨盤内が冷えていると、子宮の血流が悪くなり子宮内膜の新陳代謝がうまくいかず、内膜がうまく剥がれません。そのため、

          【生理痛が起こる仕組み】骨盤内が冷えていると内膜がうまく剥がれない

          夏に悪化する冷え性

          「夏になるのが毎年怖い」 そう仰るのは当店のお客様である56歳の女性の方です。 男性ばかりの職場の中のデスクワークで、元々クーラーが苦手にもかかわらず、一日中体を冷やした状態で、帰宅した後もその体の冷えが取れずに、ひどい時はそれが翌朝まで引きずるそうです。 「冷え性」や「冷えによる諸症状」のご相談は一年中ありますが、実は暑くなる夏場に酷くなるケースがあります。 お客様の例のように、環境によって自分の力ではどうにもならないケースもあれば、知らず知らずクーラーや冷たい飲み物で体を

          新型コロナウィルスで重症化の新たなメカニズム〜自然免疫を欺く 特殊な遺伝子の存在〜

          新型コロナウイルスの感染者が都心部で増加傾向にある中で、重傷者や死亡者が少ないことは一つの救いですね。 とはいえ、世界的にも新型コロナウイルスは増加しており、全世界で1300万人が感染しており、60万人近い人がお亡くなりになっております。 6月21日にnoteに投稿した記事にも重篤化する要因を掲載しましたが、先日7月4日にテレビで放送された「人体vsウイルス」の番組内で、新型コロナウイルスに人間の免疫作用を抑制し、症状を悪化させてしまう遺伝子があるという内容が新たに報告されて

          新型コロナウィルスで重症化の新たなメカニズム〜自然免疫を欺く 特殊な遺伝子の存在〜

          読んで知って、身体に美味しいレシピ 2/旬のきゅうりを使ったゆで鶏の2色タレ&きゅうりのシャキシャキスープ

          今年の梅雨の雨の量は異常ですね。 プランターのトマトが雨が多すぎてうまく育ってないようです。一方できゅうりは昨年同様元気に育ってくれています。 東洋医学では、「胃は乾燥を好み、腸は潤いを好む」という言葉があります。ジメジメと湿気を多く含む梅雨時期や夏場は胃の力が落ち込み、自然と食欲が減りやすくなります。また暑さも相まって、水分をたくさん摂ると乾燥を好む胃は、さらなる機能低下を招きやすいのです。乾燥している秋が「食欲の秋」いわれる由縁は、東洋医学の内臓の機能が関係しているのかも

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          熱中症予防に爽やかな【甘み】×【酸味】で効果的な水分補給〜「酸甘化陰(さんかんかいん)」〜

          夏に向けて段々と気温が上がってきていますね。今年はエアコンを点けても、換気のため窓を開けっぱなしなので、いつもよりお店が蒸し蒸しと暑い気がします。 これからの湿度が高く暑い季節に気をつけたいのが「熱中症」。 熱中症は、暑さによって体温調節機能である汗が体内から異常に失われることで体内の水分が不足状態に陥った場合や、長時間に暑さにさらされることで体温調整機能が乱れ、体外に熱を放出できなくなり体温上昇を引き起こすことが要因だと考えます。 症状としては、急激な発汗によって脱水が起

          熱中症予防に爽やかな【甘み】×【酸味】で効果的な水分補給〜「酸甘化陰(さんかんかいん)」〜

          読んで知って、身体に美味しいレシピ 1/旬のサヤインゲンとタコとジャガイモのしそジェノベーゼパスタ

          お客様からこれから旬のサヤインゲンを頂きました! 今日はサヤインゲンを使ったイタリアンレシピをご紹介します。 サヤインゲンはもちろん、その他の食材の薬膳的効能や、栄養学的な知識も織り交ぜながら、食材の働きをしっかり読んで知ってもらい、身体への効果をしっかり把握しながら召し上がってもらえたら嬉しいです。 サヤインゲンとタコとジャガイモの しそジェノベーゼパスタ 〜体も気持ちも疲れている時のオススメレシピ〜 ●メイン食材(4

          読んで知って、身体に美味しいレシピ 1/旬のサヤインゲンとタコとジャガイモのしそジェノベーゼパスタ

          新型コロナウイルスの重症化の要因に血管の炎症あり

            新型コロナウイルスに感染すると5日目以降に症状が発生し、15日を過ぎたあたりから、回復に向かう人と重症化になる人に分かれます。重症化に向かうプロセスとしては、ウイルスに反応した免疫が過剰に反応を起こすことで血管に炎症を起こし、その炎症によって血管壁を傷つけ血栓を作り、その血栓が全身に発症することで、症状の重症化が起こります。その症状は生活習慣病と酷似していることから、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病の基礎疾患を持っている患者さんは、元々慢性的に血管の炎症を抱えている状態であること

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