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流動体について: 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想
「迷おう。それが始まりだから。」のことばに誘われて、アイドルの世界の門を叩いた51,038人の少女たち。その中から選ばれた12人のメンバーが、幕張メッセイベントホールのステージに立っている。2023年2月11日・12日の二日間にかけて開催された「おもてなし会」は、そんな日向坂46 四期生が主役として舞台に上がる最初のライブだった。
見どころの多いライブだったけれど、中でも特に僕の印象に残ったのは
青春の轍をたどって:「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」感想
※ このnoteは「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を含みます。
あのときバス停でメガネを落としたわたしと、落とさなかったわたし。乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」のミュージックビデオは、このシングルをもって卒業する西野七瀬がアイドルになった世界と、アイドルにならず一般人のまま暮らす世界を並行して描いている。彼女が日本を代表するアイドルグループのトップにまで上り詰めたのも、きっと無数の
「遅効性」のたのしさの正体:「ベイビーわるきゅーれ」感想
先週の土曜日、シネマ・チュプキ・タバタにて阪元裕吾監督による話題作「ベイビーわるきゅーれ」を観た。殺し屋として育てられたふたりの少女が高校卒業を機にルームシェアをはじめ、社会に「適合」するべく奮闘する姿を描くアクションコメディだ。なかなかタイミングが合わず、映画ファンのあいだで評判になってから実際に観に行くまでにだいぶ時間が経ってしまった。こうなると見聞きする感想からおぼろげながら映画の雰囲気や全
もっとみる僕が「あちこちオードリー」で感じる絶望と、「アナザーラウンド」に見出した希望について
※ このnoteは「アナザーラウンド」のネタバレを含みます。
ちまたではお笑い芸人がお笑い論を語ったり、タレントがワイプの技術を解説したりするメタ的なトーク番組が流行っているけれど、そのうちのひとつ、オードリーの冠番組「あちこちオードリー」にはひと味ちがった面白さがある。単なるタネ明かしにとどまらず、一線で活躍する芸能人の「仕事論」が聞けるのだ。一発当たれば大きいものの、ほとんどが日の目を見ない
ネクストブレイク若手女優の戦国時代を考える
いまや「若手女優」は群雄割拠の時代である。次から次へと新しい人材が出てきては観客に鮮烈な衝撃を与える。ことしで言えば「この恋あたためますか」で一気にスターダムへ駆け上がった森七菜。2019年公開の「天気の子」主演をはじめ、広瀬すずと共演した岩井俊二監督「ラストレター」で映画ファンには知られた存在だったが、民放ドラマでもトップクラスの注目度を誇る「火曜ドラマ」枠でその人気は全国区になった。あるい
永遠(とわ)だけが存在しない世界:「大豆田とわ子と三人の元夫」感想
「大豆田とわ子と三人の元夫」は、なぜだか「こんなに愉しい時間は、もしかしたらいまだけかもしれない」という予感がつねに漂っているドラマだった。
このドラマの始まりで、主人公の大豆田とわ子はベランダの外れた網戸に苦戦しながら、「誰かが代わりにやってくれたらいいのに」とボヤく。網戸は物語のなかで何度も登場するキーアイテムだが、ここで描かれているのは「ふとしたときに寄り掛かれる人がいない」ということだ。
タコとの甘美な絆について:「オクトパスの神秘:海の賢者は語る(Netflix)」
「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」はことしのアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画を獲得したNetflix限定配信作品だ。とても気に入ったので、紹介したいと思う。
南アフリカの美しい海を舞台に、映像作家の男性と1匹のタコの約1年間にわたる交流を描いたドキュメンタリー。映像作家のクレイグ・フォスターは人生に疲れ、癒しを求めて南アフリカの海に潜る日々を送っていた。そんなある日、海中で1匹のタコに出会
ことしの春ドラマは何を見よう?:「大豆田とわ子と三人の元夫」や「コントが始まる」について
2021年の春ドラマがひと通り出揃った。まだ「ドラゴン桜」や「着飾る恋には理由があって」など待機中の話題作も控えているけれど、とりあえずこれまでザッピングしてきた感想をまとめてみようと思う。
テレビ東京「珈琲いかがでしょう」:月曜23時台「ドラマプレミア23」枠
中村倫也主演の一話完結ドラマ。中村倫也演じる移動コーヒーショップの店主・青山が、花の里の女将よろしく、コーヒーを飲みに来た悩めるお客