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【万引き】書店で500円の本を万引きしたら、殺人です?
本の万引きは「殺人」だ?
もう10数年前でしょうか。
本屋さんでの万引きが酷くて、
エスカレートした時代がありました。
そんな時代に、
非常に言いにくい
自分の過去の罪を告白した
作家がいました。
その名は、井上ひさし。
まだ小学生だった頃、
東北の小さな書店で、
辞書を万引きしてしまったのです。
ですが、書店の人に
運悪く?良く?見つかりました。
店のおばあさんは
警察に言わない替わりに、
こんな話をしてくれたんだそう。
「上着の下に隠したものをお出し」
震えながら、差し出すと、
おばあさんはその英和辞典を
しげしげと見てから、
「これを売ると百円のもうけ。
(これは定価500円ですね:投稿者)
坊やに持って行かれてしまうと、
百円のもうけはもちろんフイに
なる上に五百円の損が出る。
その五百円を稼ぐには、
これと同じ定価の本を五冊も
売らなければならない。
この計算は分かりますか」
四百円で仕入れて五百円で
売っている。こわごわ頷くと、
「うちは六人家族だから、
こういう本をひと月に百冊も二百冊も
売らなければならない。
でも坊やのような人が月に三十人も
いてごらん。うちの六人は餓死に
しなければならなくなる。
こんな本1冊くらいと、
軽い気持ちでやったのだろうけど、
坊やのやったことは
人殺しに近いんだよ」
井上ひさし『ふふふ』(講談社文庫)
収録中の「万引き」より一部抜粋。
店のおばあさんに諭され、
井上少年は、庭で薪割りを
500円ぶんしっかり
させられたそうです。
そしたら、おばあさんは
さっき上着の下に入れた辞書を
井上少年にくれたんだそうです。
粋な人、というか、
血が通っている人ですねえ。
こんなこと聞いたら、
絶対にもう万引きは
しないですよね?
作家である井上ひさしにとって
この体験を、エッセイにするのって
かなりダメージですよね?
それを敢えて書いたのは、
井上さんが本当に、
万引きを失くしたかったから、
にちがいないですね。
これは出来ることじゃないですね。
万引きは本屋さんを殺してしまう。
恐ろしい話です。