【エッセイ】「村上朝日堂」vs「村上ラヂオ」比較してみた
村上春樹には、エッセイシリーズが
2つありますね。
一つは若い頃に書いていた
「村上朝日堂」シリーズで、
昭和59年に出版されたもの。
「日刊アルバイトニュース」で
連載されていたコラムが
若林出版企画という出版社から出され、
今は新潮文庫で買えるほう。
もうひとつは、ご存じ「村上ラヂオ」シリーズ。
雑誌「anan」で連載され、
新潮文庫で出てるものですね。
20代30代40代の方々には、
こちらが、村上春樹のエッセイの
定番になっているのではないかしら。
春樹自身、村上朝日堂を書いた時と
村上ラヂオを書いた時では、
年齢がかなり違っている。
朝日堂の1冊目は30代で書いてる。
一方、ラヂオは、50代で執筆。
成熟や洗練、クオリティなどでは、
ラヂオシリーズのほうが
見事な仕上がりなのも当然か。
逆に言うと、
村上朝日堂のほうが、
さすがに初期の頃に書いたものらしい。
まず、学生時代の自分の話や、
結婚、飼い猫、引っ越し、
それからジャズ喫茶店を開くに至る
経緯まで書かれている。
ネタに困らないで勢いよく
連載された「村上朝日堂」、
用意周到にネタをセレクトした
「村上ラヂオ」。
村上エッセイは、
村上作品の中の「前菜」?
的な存在かな、と思うのですが、
朝日堂は、ざっかけない素朴な
スープを想わせます。
一方、村上ラヂオは、
スープはスープだけど、
何度も裏ごしして、丁寧に
濾された洗練されたスープ。
文章もネタも、
読者との距離感も
どれも上品です。
どっちがいいのかしら?
洗練のラヂオシリーズか?
素朴と勢いの朝日堂か?
大腸炎で入院した時は
「村上ラヂオ①」だけをもって
何回も読み返してました。
何せ、お腹が1日に何度も
激痛が走るから、物語は
とても読めなくて。
では、朝日堂を選ばなかったのは?
それは朝日堂はやたら
食べもの、グルメの話が
出てくるから、絶食中の日々には
刺激が強いかなああ、と。
でも、退院して元気になって
たまに実家に帰省する時は
俄然、朝日堂をかばんにいれて
和歌山に帰る。
実家で暇な時間には、
洗練より、勢いが欲しい。
ちなみに、
村上朝日堂シリーズとは
「村上朝日堂」
「村上朝日堂の逆襲」
「村上朝日堂 はいほー」
「村上朝日堂はいかにして
鍛えられたか」。
ラヂオシリーズは
「村上ラヂオ」①~③
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