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【本屋大賞】今年はロシアの戦争。偶然か必然か?
『52ヘルツのクジラたち』
町田そのこ(2021)
『流浪の月』凪良ゆう(2020)
『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこ(2019)
『かがみの孤城』辻村深月(2018)
ここ最近の本屋大賞のタイトルです。
これらは、
家族の喪失や虐待、毒親、
イジメ、生き辛さをテーマにした
思春期や青春期の日常を
描いた作品ばかりです。
現代的なウケを考えたら、
そうなるんでしょうね。
だから、私はもう
本屋大賞はダメになってきたかな、
もう期待しないでおこうと
ため息まじりに傍観してました。
ところが、
今年はなんと、なんと、
戦争がテーマでした。
それも、
未来ディストピアではなく、
1940年代のソ連の
女性狙撃兵が主人公と来た。
『同志少女よ、敵を撃て』
早川書房。
これは最近の
身近な生き辛さをテーマにした
感動エンタメとは、
発想の次元が全然違います。
大賞がこれと聞いて
私はスカっとしました。
内容は歴史もので、
ソ連が舞台という設定も
日本の今どきの読者に
うまく関心を持ってくれるか
イチかバチかのギャンブル
だったんじゃあないかしら?
非常にチャレンジングですね。
コンサバな文藝春秋や新潮社では
こうした大胆な作品は
なかなか出さないでしょう。
作者・逢坂冬馬さんは
これがデビュー作という、
なんて本格的な視野だろう。
私もまさかこれが大賞を
取るとは予想してませんでした。
ただ、気にはなって、
買ったばかりでした。
最近やたら増えていた、
生き辛さアピールの
ピリ辛&感動エンタメには
書店員さんも
もう飽きてきたのでしょうか。
自意識過剰による苦しさと
その解放という鉄板パターン。
しかも世界範囲は日常ばかりで、
射程距離は狭い作品が続いていた。
それにしても、今年の
本屋大賞の投票者たちは
そうしたマンネリ化から
本屋大賞を救いましたね。
感染病やら戦争やら
自意識レベルでは
取り組めないテーマが
リアルに広がる時代には
相応しい作品って気がします。
芥川賞や直木賞はコンサバで、
時代感覚が鮮烈ではない場合が
多々ありますが、
だからこそ、
本屋大賞には
権威より市民感覚を優先した
作品を選んで欲しいもの。
それから、
期せずして、
ロシアのウクライナ侵攻が
この作品をリアルに感じさせる
大きな契機になりました。
もちろん、作者がこれを
創作していたのは、
もっと前だから、
狙っていた訳ではないですよね。
偶然が必然になったという
ことでしょうか。
恐ろしい運命を持ってますね、
この作品は。