【推薦図書】日本一ざっくばらんな読書論は何だろう?
幸福論は楽しく、面白い。
逆に言うと、楽しくない、
生き方を押し付ける
退屈な幸福論は
「幸福」論ではないとも言える。
ところで、読書にまつわる
幸福論ってあるかしら?
すぐに思いつくのは、
村上春樹と柴田元幸さんの対談本。
読書はどんなに幸福な体験かを
教えてくれます。
それも、3冊あります。
『翻訳夜話』文春新書
『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』
『本当の翻訳の話をしよう』新潮文庫
2番めに挙げた『翻訳夜話2』は
村上春樹がサリンジャーの
ライ麦を訳した際の発見や苦悩を
英米文学の碩学・柴田元幸さんと
語り合う本。
3番めに挙げた本は、
サリンジャーに限らず
英米文学の翻訳家として、
また、英米文学のフリークとして
語り合っている。
英米文学が好きな人間なら
楽しく読める本です。
偉大な作家や
偉大な翻訳家は、
こんな風に青春時代から
海外文学を読んできたのかあ?
と、学んだり、凄い読書量に
圧倒されながら、
いつかこの本で取り上げられた
マッカラーズや
ジャック・ロンドンを
私もちゃんと読もうと
改めて思うのでした。
英米文学を読むのは、
こんなに幸福なことなのね?
そう実感、痛感しました。
この世には、
読書論や文芸批評は沢山あれど、
こんなにざっくばらんに
語り合って、手の内を
さらしてくれる本は珍しい。
こうした、
人を幸せにしてくれる
優しい文学論はなかなかないんです。
大抵は、どこか歯に衣を着せている
場面が多々含まれるから。
幸せな読書をテーマにした本として、
日本文学なら、
丸谷才一『快楽としての日本文学』
ちくま文庫、という本も挙げたい。
また、三島由紀夫にも、
文芸批評の本は何冊かありますが、
かなり根気を詰めた、
必死の文芸批評であり、
楽しめる内容ではないような、
どちらかというと、
文芸の魅力とか創作の技法を
分析している印象です。
軽めの読書論、ではないですね。
文芸を真剣に「学びたい」人にお勧め。
読書論、
読書感想、
文芸批評、
そうした、読書や文芸にまつわる
ざっくばらんな本が
もっとあったらなあ。
でも「文学はまじめなことだ」
という考えがどこかにあり、
巷に浸透しているからでしょうか。
だから、ざっくばらんな読書論は
相当な達意の人しか
書いたり語ったりできていない。
あ、須賀敦子に
『本に読まれて』中公文庫、
という書評本がありましたね。
それから、作家、池澤夏樹も、
書評書をたくさん出している。
読書論としては、
世には実に沢山の書評集があります。
でも、読書感想は単なる感想だし、
書評はちょっと構えた所があるし、
そういう意味では、
村上春樹と柴田元幸さんの
『本当の翻訳の話をしよう』は
最高にざっくばらんな本です。