木津潤平

建築家/舞台美術家/湘南・藤沢在住 「湘南を拠点に、世界を舞台に」を合言葉に活動しています。 住宅やカフェなど、「誰かの居場所づくり」を大切にした建築設計や、 「場の力を取り込んだ野外劇空間=Landscape Theatre」のとりくみについて発信しています。

木津潤平

建築家/舞台美術家/湘南・藤沢在住 「湘南を拠点に、世界を舞台に」を合言葉に活動しています。 住宅やカフェなど、「誰かの居場所づくり」を大切にした建築設計や、 「場の力を取り込んだ野外劇空間=Landscape Theatre」のとりくみについて発信しています。

最近の記事

チャリティトークイベント『珠洲の話をしよう、江の島で〜民話編』開催します

藤沢市を拠点に活動する建物を持たない劇場「ランドスケープシアター」と、2022年、2023年に石川県珠洲市にあるスズ・シアター・ミュージアムで演劇公演を行ってきた「さいはての朗読劇」がタッグを組んで、1月に起きた北陸震災、9月に起きた豪雨災害に対する教育文化芸術面への被害に対する支援を目的としたチャリティートークを行います。  さいはての朗読劇からは、演出家・長塚圭史、詩人・大崎清夏、作曲家・阿部海太郎に加え、昨年出演した俳優・常盤貴子が登壇。石川県珠洲市からは現地の民話や昔

    • フジサワ名店ビルにBOOK THEATREをつくろう

      【ブックシアターのための本棚を集めております】 おかげさまで391シアターオープニングイベント 『ランドスケープシアター元年8月17日~391シアター ナツマツリ』は盛況のうちに閉幕となりました。 本イベントにてお披露目させていただきました、スタジオ+グリーンルームに加え、ただいま新たなスペースの計画に着手しています。それが「BOOKTHEATRE ブックシアター」です。 古い本棚を沢山集めた、本棚に囲まれた空間をフジサワ名店ビルの別のフロアに開設します。 リーディング公

      • 『ランドスケープシアター元年8月17日』を開催します

        391THEATRE(フジサワ名店ビル)のオープニングイベント開催のご案内をいたします。 来る8月17日に(直前で恐縮です) 『ランドスケープシアター元年8月17日 〜391シアター ナツマツリ』というイベントを開催します。 パリ・オリンピックの開会式はまさに私の考えるランドスケープシアターでした。その土地にある「自然」「歴史」「建築」を活用したパフォーマンス空間が都市的スケールで展開する様にワクワクされた方も沢山おられると思います。ランドスケープシアターという概念を広く

        • 391THEATRE 開場します

          Landscape THEATRE ひとつ目の〈劇場〉が誕生します。 それが391THEATREです。それは藤沢駅南口、湘南への玄関口にオーブンします。 かつて、江ノ電を降りて見上げると、ビルの上に小さな観覧車が立っていました。しかし、時の流れと共に江ノ電の停車場は移動し、観覧車も姿を消しました。 それでも、「フジサワ名店ビル」と呼ばれて親しまれているその建物がある〈391街区〉には今もマーケットの賑わいが息づいています。過去の記憶と現在の賑わいがこの場所で重なり合い、街の活

          「建物を持たない劇場」始めました。Landscape THEATRE

          構想10年、開設準備に走り回る事約2年。この度、新たに劇場をオープンする事になりました。 Landscape THEATREといいます。 Landscape THEATREは建物を持たない劇場です。 どういう事?と思われる方がほとんどだと思いますので、少し長くなりますが、ご説明させていただきます。 劇場と言う建物の歴史は古く、皆さんよくご存知の古代ギリシャ劇場や同じ頃、古代インドでも劇場が作られていたと言う記録があります。ではそれよりももっと古い時代の劇場はどんな姿をして

          「建物を持たない劇場」始めました。Landscape THEATRE

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(14)「鎮魂の水舞台」

          宮城さんの言葉が続く 「つまり舞台上は『魂の世界』であり、この作品全体がその魂を慰める鎮魂の儀式のようなものである。例えば精霊流しの様なシーンを象徴的に使いたい。」 精霊流しと言えば、水に浮かぶ行燈を川に流す、お盆の行事である。ということは 「舞台上に水を張るということですか?」と私 「そう、いわば『三途の川』だね。古代ギリシャにも『アケロンの川』と言うのがあるから、水辺がこの世とあの世をつなぐというのは、ヨーロッパ人にも感覚的に理解できると思うんだよね。それが舞台のどこ

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(14)「鎮魂の水舞台」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(13)「魂の世界」

          「巨大な影絵というアイディア自体は悪くないと思う。けれど、それだけでは90分間、観客の集中力を持続させられないよ。影絵という仕掛けに飽きてしまう。」宮城さんは続けてそう言った。 なるほど、確かにそれはそうかも知れない。 演劇は時間と空間を操る芸術だ。演出家は、法王庁中庭という空間を支配すると同時に、90分間という時間を支配する必要がある。その観点からは「影絵」というアイディアでは不充分だ、という事だ。 それに、法王庁中庭という巨大な空間を活かすために思いついた「影絵」と

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(13)「魂の世界」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(12)「ラフスケッチ」

          ここが勝負の分かれ目だと思った私は、法王庁の視察で手繰り寄せた秘策を宮城さんにぶつけることにした。 この打ち合わせでは、会場の決定と演目の選定までと考えていたので、空間デザインにまで踏み込むつもりはなかったのだが、鉄は熱いうちに打て、である。 「法王庁で『アンティゴネ』を上演するには大きな障害があります。それはあの巨大な城壁に囲まれた空間です。動きの少ない『アンティゴネ』をあの空間で上演する為には、何らかの形であの空間を支配する必要があります。」 スケッチブックを取り出

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(12)「ラフスケッチ」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(11)「あの頂へ」

          演出家、宮城聰の創作の出発点であり、真髄はこの「指し示す力」にある、と私は思っている。 彼はまず「我々が登るべき山はあれだ」とはっきりと指し示すのだ。どう登るかはまだ分からない、しかし目指すべき頂(いただき)は確かにあそこにある、と。そして往々にして、それは最高難度の未踏峰なのだ。 「あそこにチラッ見える山の天辺があるよね?そこまでどうやって行けるか、考えてみてほしい」 平たく言うと「無茶振り力」である。しかしながら、その無茶の向こう側には途方もない世界が広がっているか

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(11)「あの頂へ」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(10)「『アンティゴネ』、一択。」

          そもそも『アンティゴネ』とはどんな物語なのか。ご存知ない方の為に少しおさらいをしたい。 『アンティゴネ』は古代ギリシャ三大悲劇作家と言われるソポクレスが書いた悲劇である。 主人公のアンティゴネはオイディプス・コンプレックスの語源ともなった、オイディプス王の娘である。父の死後、国を治めていた2人の兄、ポリュネイケスとエテオクレスが仲違いし、国を追われたポリュネイケスが隣国の兵を率いて祖国に攻め入り、エテオクレスと刺し違えて共倒れした、という前日譚をもって幕が上がる。2人に代

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(10)「『アンティゴネ』、一択。」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(9)「『アンティゴネ』?」

          2016年8月、アヴィニョン視察から帰国した私は静岡に向かった。 SPACが翌年の演劇祭に招待されるにあたっての会場の選定、そしてその会場で何を上演するのか、という打ち合わせを宮城さんと行うためだった。 そもそも、上演会場と上演作品、どちらが先に決まるのか?これはニワトリと卵の様な関係で、一概にどちらが先とは言えない。時には会場が先に決まり、その会場に合わせて作品を選定することもあれば、その逆もある。 今回は、会場と作品の選定を、さまざまな想定を勘案した上で同時に決めて

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(9)「『アンティゴネ』?」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(8)「影絵、ならば」

          「この巨大な城壁に、影…?」 影絵だ! 舞台上に立つ俳優の影を城壁いっぱいに投影するのだ。影は映像ではない、生身の身体の延長にしか存在し得ない現象である。それは俳優の身体の一部と言っても良い。俳優の身体が巨大な影となって、城壁を乗っ取り、法王庁中庭という空間を支配するのだ。 俳優の姿をビデオで撮ってスクリーンに映す手法は、こうした巨大な会場を利用した演出として散見される。しかしそれは俳優からの「収奪」であると私は感じていた。本来、俳優の生身の身体にしか備わっていない「姿

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(8)「影絵、ならば」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(7)「城壁を制するものは」

          「城壁だ。」 この目の前に聳える城壁。巨大で舞台を圧迫する、厄介な存在。だが、この空間の圧倒的なエネルギーを生み出しているのも、この城壁。これを使わずしてこの空間を味方につける事はできない。 問題は舞台の位置なのだ、勾配の急な客席から見下ろす舞台は決して見やすくない。そのストレスは後方の客席に行くほど顕著だ。それに比べて、真正面の壁はどの席からでも無理なく視界に入る。という事は、この城壁を舞台にできれば理想的な客席と舞台の関係が出来上がるではないか。見下ろしによる俳優の矮

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(7)「城壁を制するものは」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(6)「そこに答えは」

          一体どうしたらいいのか? 法王庁中庭の巨大な城壁に囲まれた空間で私は追い詰められていた。 舞台と客席の関係を一旦壊して再構築するという手法は使えない。となると、この空間をそのまま活かす方法を是が非でも見つけなければならない。 もう一度、私は客席の最上部まで上がり、そこに腰掛けた。昨晩は夜の闇に半ば溶け込んで城壁が、太陽光の元で露わになり、眼前に立ち塞がっている。その足元の舞台は遥か下方に見下ろす状態である。 この角度が難物なのだ。ただでさえ小さく見える舞台上の人物がさ

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(6)「そこに答えは」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(5)「空間構成、封殺。」

          「この場所は特別なんだ、フェスティバルの中でも最も重要だ。だから、客席も舞台もこの形のまま使う事、これは絶対条件だ」 こうして書くとフィリップ氏の言った事は至極真っ当である。というかわざわざそんな事言わなくても、当然の事である。しかし、はるばる日本からやって来た2人に、フィリップ氏はわざわざこの一言を言うために、法王庁で私たちを待ち構えていたのだ。そして、眼だけは笑わない笑顔で申し渡されたこの言葉に、私たちはガックリと肩を落とした。 当たり前の事を言われて何故落ち込むのか

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(5)「空間構成、封殺。」

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(4)「動かすべからず」

          法王庁でダンス公演を視察した翌日、私と堀内さんは再び法王庁へと向かった。明るい状態で舞台周りやバックステージを見せてもらうためだ。 前の晩、私たちはダンス公演の後、食事をしながら、あれこれと「法王庁対策」の作戦会議を行っていた。課題はやはり巨大な城壁の存在。しかし、石切場でも同じような問題に対して、舞台と客席の形状を大きく変えることで解決できた。今回も何らかの方法があるのでは無いか?そのヒントを探す事もこの日の重要な目的だった。 そこに待っていたのは、フェスティバルのテク

          SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(4)「動かすべからず」