やまと絵はカレーライスなの?やまと絵 特別展@東京国立博物館
急げ急げ!
早くしないと終わってしまう
東京国立博物館、平成館で開催されている特別展やまと絵展へ行きました
開催期間は2023年10月11日から12月3日まで。
そもそも「やまと絵って何」
「やまと絵」って何?
やまと絵とは…
さらに「やまと絵」公式によると
⓵中国美術(絵画)との対概念によって成り立つ
⓶時代によって概念が変化する
つまり・・・
中国から伝わったものを
時代に応じて「日本風」に変化させている日本美術(芸術)
正直、私は日本史に詳しくないので行く前は少し不安がありました。価値がわからない人が見ても理解できないのではないか...豚に真珠
でも、そんなことはありませんでした。きちんと楽しめました。
入り口でオーディオガイドを頼みました。650円。夏木マリさんと元NHKアナの石澤典夫氏がナレーション&解説をしてくれます。
この2人の声が耳心地良く素晴らしいです。1,000年以上前の日本社会の一端を気軽に味わえます。
夏木マリさんは音声ガイドの収録に艶やかな和装で臨まれています。
帯が鳥獣戯画の模様で粋、さすがの着こなしです。
この凛とした装いから生まれたナレーションは一気に来場者を平安・室町時代へと誘ってくれます。
聞きなれない言葉を知る貴重なチャンス
普段聞きなれない言葉が沢山ありました。
平安時代末期から鎌倉時代初期頃に書かれた絵巻物
様々な「病」は今と変わらず人々の暮らしと共にあることが分かります。
「肥満の女」というタイトルの絵がありました。文字通り凄く太った女性は自分で歩くこともままならないので、両脇を2人の女性に抱えられています。その様を見て笑う男性がいる・・・
「二形(ふたなり)」は男女両性を具有する人の暮らしを描いたもの。
「風病(ふうびょう)の男」は現代で云う「風邪」をひいたらしい様子が窺えた。どれも人物の表情が豊かで少しコミカル、描写には躍動感があります。
今回は展示を見られませんでしたが「眼病の男」や「歯槽膿漏の男」など様々な病シリーズが展開されているようです。
日本の説話などに登場する深夜に徘徊する鬼や妖怪を描いた絵巻
本来ならば人間を怖がらせる存在である彼らが、どこか面白く可笑しく描かれています。婦人画報のインタビューで夏木マリさんもおっしゃっていますが、長く使用している身の回りの日用品にだって魂が宿っているという考え:九十九神(つくもがみ)は現代でもそのまま理解できる感覚だと思いますし、絵巻ではユーモラスに語られています。慣用句としては、転じて「多くの人間があやしいおこないをしているさま」を「百鬼夜行」と表現したりもするようです。絵巻から伝わる躍動感は和風のハロウィンナイトでした。
身辺に共として(王侯貴族に)つき従うこと、いわゆるボディーガードのことです。随身になる条件は「優秀で見目麗しく、長身であること」
なるほど、そう聞くと絵巻に登場する男性達はシュッとしたイケメンに見えます。現代でいう売れているアイドルのような存在、周囲の女性達は随身の姿を見てうっとりしたり「推し」がいたりするのかもしれません。(音声ガイド談)選ばれしものである随身(アイドル)を想像しているだけで楽しい気分になります。
二次元で物語を作りだす絵巻の世界は漫画の生みの親
今回の展覧会では絵巻史上の最高傑作「四大絵巻」が30年ぶりに揃い踏みしています。但し、全てが同時に揃っているのは会期中の第1期:10月11日〜22日のみでした。私は最終の第4期に出向いたため残念ながら伴大納言絵巻は見られませんでした。どの絵巻も素晴らしく食い入るように鑑賞しましたが、その中で特に引き込まれたのは信貴山縁起絵巻です。
異時同図法(いじどうずほう)という手法が使われていました。
絵の中で時間が流れていることを表現する方法です。漫画好きならばここで感動すること間違いなし!現代の漫画表現「コマ割り」に通じる手法です。絵巻は右から左へとストーリーが進んでいき、場面が変わる時や時間の経過を表すときには絵巻に「かすみ」がかかっています。
「ここから場面(時)が変わるよ」のサインです。
動かない絵がまるで映像のようにスイスイと物語の世界へ入っていけます。
現代では漫画の実写化が盛んですが、原作(二次元)が良い作品は世界観へ一気に引き込まれますし、読者人気も絶大です。信貴山演技絵巻は、まるで実写化したかのような世界を提供して当時の読者達を喜ばせただけでなく、現代の私たちをも感動させてくれます。実写化ではなく、絵巻の中へタイムトラベルできるような登場人物の豊かな動作や表情、顔のシミやシワまでしっかり描かれていて細部まで見逃せません。
やまと絵ってカレーライスみたいに変化するもの
やまと絵公式HPで特集されているマンガで分かる「やまと絵」コーナーが観覧前の予習として大いに助けになりました。日本史の世界へハードルを下げて案内してくれます。その中の第一話で
「やまと絵はカレーライス?」
が導入として紹介されます。カレーはインドから伝わった食べ物だけど日本に伝来したあとは日本風にライスと合わせて「カレーライス」が新たなジャンルを確立しました。カレーライスだけではなくカレーうどん、カレーパンだって美味しい。カレーでこんなに楽しめる。もちろん、本場みたいにナンで食べるのもヨシ。
転じて、やまと絵は
元々は中国から伝わった唐絵(からえ)だけど、和風にアレンジしてオリジナルとして日本様式を作り上げています。和歌を挟んだり中国から伝わる紙を継ぎ足ししたり遊び心が溢れんばかり。もちろん基本に立ち返り、漢画スタイルを描く作品もありました。良いものは取り入れよう、趣向を凝らしていく総合芸術、それが「やまと絵」の世界でした。
お土産コーナーご紹介
ミュージアムショップには品の良い遊び心満載の商品がたくさんありました。可愛いパペットに惹かれながらも購入したのはこれ...
食べるときは写真の通り白米を真ん中に据える予定です。遊び心を出して野菜を飾るのもいいかな。
おまけ
特に気に入った作品の覚書
信貴山縁起絵巻
百鬼夜行絵巻
この二つについては上記に述べました。これらに加えて
公家列影図(くげれつえいず)
束帯姿の公卿57人が描かれた作品
57人がみんな違う顔で目が丸かったり細長かったり太っていたり
絵葉書になっていて欲しかった作品だったけど残念ながらなかった...
57人それぞれが「私はこんな顔しているのか?もっと美男子だぞ!こんなに太ってないぞ!」と主張されるんじゃないかと思うくらい活き活きと描かれていました。
肖像画は本人の満足を得られる加減が難しそうです。美男子過ぎても周囲にずるいと言われそうだし悪く描いてしまうと「納得いかない」と色々非難されたり誤解されたり。いずれにしても絵師さん大変ですね。
土佐光信・光茂(みつもち)親子の作品
室町時代の「やまと絵」を牽引する土佐派の祖
日本史の教科書であまり取り上げられていないマイナーな宗派だそうで、日本史を深く学んでいたら出会える作品が今回お目見えしていました。父・光信は柔らかく繊細な筆致で描写するのに対して息子・光茂は力強いタッチで絵に存在感が増すように色付けをしています。親子でも画風が異なり、しかし共作であるのでお互いの良さを活かしながら作品を完成させているのが素人にも伝わりました。「ここはお父さんが描いたのかな、これは筆圧が強いから息子かな」と絵を観ながら想像することが楽しくなります。
あと少しですが、やまと絵の世界にご興味ありましたら是非♪
Junko Summer
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