#森山至貴
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 最終回 コロスとコーラス、「炊飯器」、「A Freedom Song」、まだ歌われない歌
From M to Y
お返事を書かねば書かねばといっているうちに日本は10連休におよぶゴールデンウィークに突入してしまいました。例年では、左右をちらちらと見ながら「いっせいのせ」でないと休むこともできない、と人々が我が身を嘆く古典的で日本人らしい自虐を耳にし、私としてはその陳腐さに鼻白むことも多いのですが、今年は少し様子が違うようです。
ご存知の通り、5月1日から新しい天皇が即位し元号が変わ
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 第14回 群読版ロレンス、 ストーリーとその解体、 ジョン・バーガー『G』、 時里二郎『名井島』、 自由と他者
from M to Y
昨年末は時間を作ってお会いいただき、ありがとうございました。横浜でのお茶会、楽しかったです。あの時は風邪を召されていましたが、今は回復なさったでしょうか? 四元さんとお会いする時はいつも緊張してしまってしどろもどろになってしまうのですが、私は『前立腺歌日記』の感想や、年明けに公演がおこなわれる「群読版ロレンス」の話などを拙くもお話ししたと記憶しています。そして、「群読版ロ
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第13回 愛の決疑論、『さよなら、ロレンス』群読版リメイク、AIポエトリー、30年目のトロン
from M to Y
こちらもお手紙をいただいてから1ヶ月以上経ってしまいました。私はその間に日本を離れていたわけではないのですが、雑事にかまけていると1ヶ月はあっという間ですね。
「往復書簡をやっている間は直接会わないほうが面白くなりそう」というのは私も同感です。会って話してしまうと書く話題がなくなってしまうから、という消極的な理由もありますが、なんというか、一方で書簡をやり取りしてい
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第12回 映画「デイヴァイン・ディーバ」、早稲田大学セクハラ事件、前立腺と男性性、エロスと権力をめぐって
from M to Y
「野生」と「野性」の表記の違いに気づかず、お恥ずかしいかぎりです。レヴィ=ストロースの『野生の思考』を想起する私にとっては、「やせい」はどれもこれも「野生」と表記するのだと思っていました。調べてみたところ、森村誠一の小説は『野性の証明』だそうです。とはいえ、正直に言って両者のニュアンスの違いを私はよくわかっていないかもしれません。
学生には「あやふやに使っている単語
森山至貴 X 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第6回
vol. 10 from M to Y:
四元さんからの手紙を読んで、日本語以外のアジアの言語での合唱曲(か歌曲)を書きたい、と一時期強く思っていたことを思い出しました。当たり前のことですが、日本の合唱曲は多くの場合日本語の合唱曲です。その次に多いのはラテン語か英語の合唱曲で、それ以外の言語で書かれた曲は数えるほどしかありません。言語が変わると言葉のイントネーションとリズムが変わるので、必然的に
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」 第11回:日大アメフト、 野性のエロス、ジプシーの少女たち
from M to Y
ある若いアメフトの選手の話をします。彼のことはもしかしたら四元さんもごぞんじかもしれません。そうです、定期戦で相手方の関西学院大学の選手に怪我をさせた、日本大学の学生のことです。
アメフトに詳しいわけでもなく、また新聞やインターネットのニュースを通じて伝聞情報を多少追いかけた程度ですので、大きく端折った説明にはなってしまいますが、事情はこういうことです。つまり、権力を持
森山至貴 X 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第十回
Vol 18 from M to Y
倒れ込むようにして新年度に突入し、気がつけば半月が経ってしまいました。昨年度のうちに終えておくはずだった仕事は終わらず、しかし「さあ、年度が変わって仕切り直しです」とばかりに新しい仕事が湧いて出てきました。とは言え、新しい学生を大学に迎え、そのキラキラした(それでいて射るような)視線に晒されつつ授業をはじめると、少しだけ若返った気持ちにもなります。
先日ラ
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第九回
Vol 16 from M to Y
今年のミュンヘンは暖冬だったのですね。日本の今年の冬は例年以上に寒かったと、気象予報士がラジオで語っていました。ここ数日で急激に寒さがほころび、ぐっと過ごしやすくなったように思います。あと一週間くらいしたら冬物をクリーニングに出してもよいかもしれません。
すべての受け持ち学生の卒業論文も無事提出され、採点や成績登録も終わり、胃の痛い入試業務も片付きました。
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第8回
Vol 14 from M to Y
気がついたら前便から1ヶ月も経ってしまいました。お返事がとても遅くなってしまい、申し訳ないです。何か特別なできごとがあって、というよりは、日常に忙殺されているうちに年の瀬まで流されてしまいました。というわけで、四元さんの連詩の会の話題に匹敵するようなおもしろい話題を提供することもかなわないのですが、そのかわりに(「師走」でもありますし)ここ最近の私の大学教員
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡「詩と音楽と社会的現実と」:第四回
vol.7 from Y to M:
なんだか難しい話になってきたなあ。
現代詩における詩と散文と、現代音楽における言葉と音楽。それぞれの分離と融解。
僕は難しく考えるのは詩人の特権で、音楽家はもっと感覚に身を委ねて、それこそ歌うようにおおらかに生きているのかと思っていましたが、どうやら十九世紀的な時代錯誤の誤解だったようです。「旗」のなかに「長7度の擬態」が隠されていたとは! 森山さ
森山至貴 x 四元康祐 往復書簡「詩と音楽と社会的現実と」:第3回
from Y to M:
日本、とてつもなく暑そうですね。おまけに「五十年に一回の大雨(気象庁の表現、正確を期そうとするあまりか、だんだん文学的になってきます)」、そこへ追い討ちをかけるヒアリ!アジアの夏は過酷です。森山さんもからだに気をつけて無事に乗り切ってくださいね。
ミュンヘンも先週までは不安定な天気が続いていましたが、この週末は爽やかな快晴。市内を流れるイザール川の河畔や、英国式公園の
森山至貴x四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第2回
from Y to M:
森山至貴さま、
ご返事どうもありがとう。そしてごめんなさい。最初に会った場所も、二度目にイベントへ来てくださったことも、すっかり記憶違いで。僕はよく妻からぼーっとしている、詩のことばかり考えていて現実に注意を払っていないと叱られているのですが、まったくその通りですね。
でも思い出しました。そう、12回も朝日賞に落っこちたってこと。「音楽は言葉だと思いますか?」とお尋
森山至貴x四元康祐 往復書簡「詩と音楽と社会的現実と」:第1回
from 四元康祐 to 森山至貴、
森山至貴さま、
先日は新詩集の刊行記念イベントに駆けつけていただき、ありがとうございました。久しぶりにお会いできて嬉しかったです。その前にお会いしたのはたしか川崎駅の近くでしたね。暑い夏の午後だったことを覚えています。あれは森山さんが僕の詩集『笑うバグ』の中の数編に曲をつけていただく前の、その相談だったのか、それとも出来上がった「混声合唱とピアノのための