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作詞&小説・エッセイ〜バンドや音楽・ホテルをkeyword:社会人&某大学:文芸コース…

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作詞&小説・エッセイ〜バンドや音楽・ホテルをkeyword:社会人&某大学:文芸コースに在籍

最近の記事

【エッセイ集】⑮好まれざるホテル客

 フロントカウンターのベルが鳴った。 身長は180cmといったところか? フロントバックにある事務所入口からチラリと見える。 チェックインカウンターでは未だ「トレーニーバッチ(見習い)」がとれない、元鍼灸師の夏田が受け付けをしている。 その客はレジストレーションカードに名前と住所を少し猫背気味に屈み込んで書き入れている。長身には少しカウンターが低いのだ。平成元年に完成したこのホテルは、最近では珍しくなった茶色の木製カウンターで、所々が剥げかかっており、古い老舗のバーカウンタ

    • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉓

       料飲マネージャーにはフロントから持丸茂さんがくることになった。 「山崎!!よろしくな!」 「はい」茂さんの笑顔に救われた。 フロントは田中課長の体制となった。 そんなある日、太田GMから呼ばれ「今野を金沢にあるグループ内のホテル・スクールに出すことにした」と話があった。 「今ちゃんまで行ってしまうのか」心の中で思った。 「しかたないかもな、早くシティーホテル勤務になりたいと総支配人にも伝えていたみたいだし」 この頃、社内では金沢にあるシティーホテル内に将来の幹部候補生を一年

      • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉒

         わたしの二年目の夏が終わった頃、昭一さんから話があった。 「来月で退職して、本土でバスの運転手になる」とういうのである。 全く予想もしていなかった。突然のことにショックだった。 ついこの前、私の愛車「スズキ・フロンテ」に昭一さんがツナギを着てカーステレオをつけてくれたばかりだった。 「車のメカニックに詳しいんですね」 「おう、好きなんだ」 車好きなのは知っていたが――まさか、ドライバーを目指していたとは……大型免許も取得しているという。 そんな話があった矢先に魚屋さんも田中

        • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉑

            連日連夜、夏期はバーラウンジの営業もおこなっていた。店内にはハワイアン・ミュージックの「小さな竹の橋」が流れていた。 わたしは、田中チーフから引き継いだ「手作りパッション・リキュール」に今年収穫したものを追加して大切に保管していた。 そのリキュールをベースにオリジナル・トロピカルカクテル「SPLISH!SPLASH!」を考案して提供をしていた。 夏に似合うミュージックのひとつにわたしの大好きな「オールディーズ」がある。50年代から60年代の良きアメリカの音楽だ。その中のB

        【エッセイ集】⑮好まれざるホテル客

        • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉓

        • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉒

        • 連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉑

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑳

           第一班と入れ替えに、横浜から第二班の研修メンバーが来た「伊藤・磯部・中川・黒沢・谷川」の五名だ。大卒二名とホテル専門学校卒の三名だ。 すでに一班からここでのことは色々と聞いてきているらしい。その分、二班はスムーズに研修を開始することができた。 繁忙期とは言え、昼間のアイドルタイムは人数もかなりいたので手がすく時間帯があった。 そんな時は、伸び放題となっているコテージやショートホールの「草刈り隊」になってもらった。サンサンと照りつける真夏の炎天下での草刈りには、さすがの若者た

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑳

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑲

           ついに「第一回八丈島リゾート杯争奪:釣りコンテスト」開催の日がやってきた。 この日を目標に、夜な夜な釣りの腕前を鍛えてきたのだ。 今回は神湊港での夜釣りだ。 このイベントは、わたしがいつの間にか幹事役となっていた。 堀さんを筆頭に、板前の五十嵐くん、洋食シェフの金川さん、星野さん、料飲のわたしと魚屋さん、フロントからは早川さんと今ちゃんの八名でのトーナメントだ。 夏の神湊は本命の魚以外に「外道」が釣れてしまうことも多かった。 特にこの時期は「ウツボ」がきてしまうことが多発し

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑲

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑱

           夏を迎える前に、小学生の頃より幼なじみの「たったん」が大学時代の友人を連れて、八丈に遊びにくるという知らせが入った。 「たったん」とは隣の小学校の頃から知っていた旧知の仲であり、晴れて同じ区立中学校で一緒になった。一年からなんと三年までクラスが同じとなり、まさに親友となった。 大学を卒業後は不動産会社に就職をして、その後は営業部門で勤務をしている。一緒にくる久保くんは、大学時代から知っており、わたしの家にも二人で何度か訪れていた。 底土港の桟橋まで車で迎えにいった。タラップ

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑱

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑰

          厨房へも川崎のシティー・ホテルからヘルプ要員が多数きていた。 洋食は和食に比べて、厨房内の雰囲気に緊迫感が常にあった。藤木チーフはその巨体からは想像できないような繊細な料理をつくり、部下に対しても厳しかった。 「えっ!!フカミー(深見)がいないって?!」 ある日、洋食の一番下のポジションのフカミーがいなくなった。 突然、消えてしまい部屋にもいないという。 警察に届ける前に、ホテル従業員で探そうということになった。 「まあ、島内にはいるだろう」とチーフがぼそっと言った。 い

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑰

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑯

          トップシーズンがはじまった。 八丈島のホテルは七月と八月が一年間の全てといっていい……船に乗ってお客様がどしどしやって来るのだ。 東海汽船「すとれちあ丸」は一度に二千人の旅客定員数を誇る。 ジェットが一度に百名余りなので、その二十倍である。 夏のこの期間は飛行機の予約もなかなかとれないので、皆この時期は船利用にシフトする――こと、若者には価格面からも人気だ。 ホテルの従業員もこの時期は一気に増える。 昨年にもきた配膳会メンバーが、何人かの新しい顔ぶれを連れて今年もやってきた。

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑯

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑮

           間もなく島に来て二年目の夏を迎えようとしていた。 今ちゃんはPADIのライセンスを取るために、休みの日はブーメランのオットさんとダイビングに興じていた。 潜った日の晩には、その海中の美しさを淡々と毎回聞かされたが、実像を見ていないわたしには、その美しさの本髄までは想像すら出来なかった。 わたしはもっぱら板前の堀さん、五十嵐くんと一緒に連日連夜、釣りに熱中していた。 「ねえ、堀さん――今度、みんなで釣りのコンテストやってみませんか?」 「コンテスト?」 「誰が何匹釣ったかを

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑮

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑭

           待ち遠しかった水曜日になった。 夏を迎える前のこの時期は、とても爽やかな気候だ。 割合に雨が多い島ではあるものの、ぽっかりと島の上にだけかかった雲は、海風がいつもいつの間にか吹き飛ばした。 ホテルで借りた自転車に乗って二人で向かった。 底土ビーチは黒砂だ――八丈富士が噴火した時の溶岩流が固まって、黒っぽい岩肌が島を取り囲んでいるが、砂浜も同じような色合いだ。 茂さん達は既に到着していて、バーベキューグリルの炭をおこしを始めていた。 その隣には、小学三年の息子がいる。授業を終

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑭

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑬

           そんなある日、事件は突如おこった。 フロント事務所が騒がしくなっていた。 「板場を今後、どうするか?」 太田総支配人と康リンが、膝をつめてヒソヒソと話し込んでいる。本来、ひそひそ話は「ヒソヒソ」と小さな声で話すものだが、顔もデカければ、態度もデカい康リンの大きな声がダダ漏れだ。 太田総支配人の割合いつも気難しそうな顔が、今日は一層、難しい顔になっている。 なんと、板長が仕入れ不正をおこなっていたというのである。 仕入れ業者から、手数料として毎回、幾ばくかの金品を貰って、それ

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑬

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑫

            四月となり、新入社員が配属されてきた。 わたしと同じ本部採用の一年後輩になる。今ちゃんとわたしの場合は、本配属までグループ内のホテルでOJT研修をした後の配属だったので夏となったが、今年は配属先でOJTをしながら学ぶ方針へ変更されたとのことだ。 元気な男子で松居くんという。フロントに配属されての研修が開始され、今ちゃんは早速に先輩フロントマンとなるが、わたしの部署には配属が無く、いつまでも下っ端のままだ。 「いろいろと教えてください――よろしくお願いします」と――島にくる

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑫

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑪

           八丈では温暖な気候を利用した花木栽培も盛んだ。 三月に入ると一斉に春の花が咲き出す。 中でも美しく賑やかになるのは三月中旬頃から毎年始まる「フリージア祭り」だ。 黄色の花がフリージア畑一面に咲き乱れる様は圧巻だ。東京方面へも出荷される。 この期間は観光客向けに空港へも「フリージア娘」が歓迎の意を込めて出向く。 黄八丈の着物に実を包み、腕にさげた籠にはフリージアの花が溢れている。 一ヶ月弱くらいの開催期間だが、島の観光協会もこのイベントには力を入れていて、竹芝桟橋でも集客のイ

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑪

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑩

           冬の期間はオフシーズンとはいえ、年末年始はホテルで新年を迎えるお客様で混雑した。 大晦日から正月三が日はホテルのロビーで「八丈太鼓」が披露される。夏のお盆時期以来だ。活気溢れる和太鼓の力強い音が館内に響き渡る。 茂さんが「その期間中はロビーで、お客様向けにビンゴをやるんだけど、山崎くんその司会進行役をやらない?」といってきた。 「はい、やります」「実は以前のアルバイトでやったことがあります」 「じゃあ、丁度いい――四日間よろしく頼むね」  イベントものは久しぶりだった。

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑩

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑨

           ホテルで野球チームをやるぞ!! フロント事務所にいるときに、誰ともなしに聞こえてきた。 「あんまり気乗りしないなあ」と心の中で呟く――兎に角、わたしは球技という球技はダメなのだ――練習しても一向にうまくならない。センスがないのである。 休憩時間にカズ兄ィとアルバイトの田辺くんがエルピの駐車場でキャッチボールを始めた。 田辺くんは野球経験があるのか、真っ直ぐ投げるボールに球威がある――少し沈んだボール曲線が手元で少し浮き上がるようだ。 受け手側のカズ兄ィのミットがいい音を響か

          連載/長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】⑨