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自己実現の鍵

 何様の能事持ちたりとて、人のすかぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事にはすきて、随分へりくだり、朋輩ほうはいの下に居るを悦ぶ心入れの者は、諸人嫌はぬ者なり。

葉隠 聞書第一 一二三

  名刀であるためには、三つの条件が求められるという。それは、「切れ味」と「姿」と「はだ」。このことは、人物についても言えることである。

 「切れ味」の良さをもって名刀とは言えないのと同様、人も頭脳明晰めいせきなだけでは受け入れられない。「姿」、即ち、刀全体のりの具合とか、切っ先の鋭さといったも求められるごとく、人も毅然きぜんとした信念に基づく生きる姿の見事さも大切である。そして、深みのある光を放つ刀身の「はだ」は、謙虚な人柄、人間味に通じる。こういったものが一体となって、えもいわれぬ魅力をかもし出すのである。

 何よりも謙虚であることが、人から好感をもたれ、信頼され、頼りに思われるのである。そんな人には当然活躍の場が与えられ、自己実現が果たせると常朝は言いたいのである。
 「人のすく者」には、自覚と努力でなれるはずである。何事も求めて得られるものではなく、周囲によってもたらされるものであるということをきもに銘じておきたいものである。

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