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9年前、泣きながら買った一眼レフカメラ。

あれは大学一年の秋、
私は泣きながら一眼レフカメラを購入した。

カメラを買うきっかけになったのは、当時私が所属していた海外ボランティアのサークルだった。

ある日一人の先輩が、
「見て〜、これがこないだ観てきた夕日だよ」
と、一眼レフの美しいデータを見せてくれた。

もちろん写真自体も素晴らしかったのだが、私は何よりも、その先輩のきらきらワクワクした瞳と表情がずっと忘れられなかった

私もこんな風にワクワクしたい。

自分の目で見たものをこうやってスマホカメラ以外で切り取って残すのもいいなぁ。

一度そう思ってしまったら、もう止められなかった。

私は授業終わりに一人、家電量販店へ向かった。

ずらーっと並ぶたくさんのカメラたちに圧倒されたが、この時私はまだアルバイトもしていなかったので、5〜8万円以内で買えるものにしておこうと決めていた。

そうは決めても、種類はたくさんあった。

そして、優柔不断の私はなかなか決められず迷った挙句、今思うと、なんでわざわざそんな事したのだろう?と思ってしまうが、自分の母親に電話をしたのだ。

もうどんな風に相談をしたのかはさっぱり覚えていない。

でも、おそらく何か気に触る事を言われたのだろう。
私は気づいたら大粒の涙を流して泣いていた

家電量販店で泣いているなんて迷惑すぎるので、一度お店を出て路地裏まで行ったのを思い出した。

何を言われたのかも覚えていないが、小さく湧き上がった怒りの感情だけは覚えていて、

「なんでそんな事をいちいち言われなきゃいけないんだ!!」
たぶん、これだった。

相談した自分も悪いとは思うのだが、おそらく
「そんなにお金を掛けてどうするの?」とか、そんなことを言われたのだと思う。

大学で初めて一人暮らしを始めるまで、ずっと母親に頼り切りだった私は、あらゆる判断もなんとなく任せて生きてきてしまったようだった。

親だからといって、何もかも相談すべきじゃない

そんな事を、大学生になってようやく痛感した情けない夜だった。

「もうあとは自分次第だ。」
私は涙を吹いて路地裏からお店に戻り、無事に一台のカメラを購入した。

あれだけ泣いた後に、最後は自分で決めて買ったカメラ。
達成感と嬉しさで胸がいっぱいになった。

その秋は、一眼レフを連れてたくさんの場所に紅葉巡りに行き、たくさんの写真を撮った。

それからも、風景、人、食べ物、建物、空。
あらゆるものをこのカメラに収めてきた。

カメラの買い替え時期はきっととっくに過ぎている。でも、まだ現役で活躍してくれている。

カメラと一緒に買ったレザーのケースは、もうボロボロになってしまったけど、それでも愛着がこんなにも湧くのは、"迷って泣いて自分で決めて買ったから"なのかもしれない。

そもそも、一眼レフは泣きながら買うものじゃないんだけどね。

私はあの日路地裏で、「なんで私は泣いてるの??」「ほんと私の人生って何?」そう思っていた。

今でもまだ私は優柔不断で、迷いながら人生を生きている。
まだこのカメラが動いてくれている間は、一緒にその日々を残していきたい。




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