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やまだおうむ

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1971年生まれ。「わくわく北朝鮮ツアー」「命を脅かす!激安メニューの恐怖」(共著・メイン執筆)「ブランド・ムック・プッチンプリン」「高校生の美術・教授資料シリーズ」(共著・メイ…
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記事一覧

【第九回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第九回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

第一回 第二回 第三回 第四回 第五回 第六回 第七回 第八回

取材・文/やまだおうむ

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忍者には墓もなし、青春もなし
――「戦慄!処女のいけにえ」

──第24話「戦慄!処女のいけにえ」は、長谷直美演じるくの一・お霧の最終エピソードで、「服部半蔵 影の軍団」では関本監督が手掛けた最後の話となります。

関本 (小林)稔侍が

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「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第五回】

「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第五回】

第一回 第二回 第三回 第四回

取材・文/やまだおうむ

【第五回】夜叉のいる青春
はじめに、「火だるま槐多よ」を巡って -5-花片のカタストロフ

──「火だるま槐多よ」は、ある一面は“芸術家の映画”でありつつも、生前の槐多が創造した小説や絵のヴィジョンを呼び起こしながら、現代の若い男女が幻想を媒介に結びついて行く──、というサイキックもののサスペンスにもなっていて、大島渚の「東京戰争战後秘話

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「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第四回】

「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第四回】

第一回 第二回 第三回

取材・文/やまだおうむ

【第四回】夜叉のいる青春
はじめに、「火だるま槐多よ」を巡って -4-鏡地獄からの眺め

──「火だるま槐多」では、若者たちが“槐多”を手繰り寄せるのに、奇妙なダンスまで踊ってみせるのですが、あのダンスは史実の村山槐多も好んでやっていたといいますね。

夢野 うん。土方巽みたいな踊り手が出ると一本の軸が通ったかもしれない。今はもうああした踊り手は

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「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第三回】

「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第三回】

第一回 第二回

取材・文/やまだおうむ

【第三回】夜叉のいる青春
はじめに、「火だるま槐多よ」を巡って -3-男根なき裸僧の召喚

──夢野さんの初期の代表作となる、滝田洋二郎監督の「真昼の切り裂き魔」(1984)では、ヒロインの織本かおるが、特異な性器を持つが故の性衝動に突き動かされて異常な行動を重ねていきますが、今回、佐藤里穂の演じたヒロインも、その性衝動が、「立ったまま放尿する自分を感じ

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「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第二回】

「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第二回】

【第一回】夢野史郎インタビュー

取材・文/やまだおうむ

【第二回】夜叉のいる青春
はじめに、「火だるま槐多よ」を巡って -2-相貌の異なる、前作「眼球の夢」

──今回は、主題に猟奇殺人があって、カメラで死を写すことに取憑かれた女性が重要な役割を担っている前作「眼球の夢」とは、ちょっと手触りが異なるような気がしました。あの映画は、お二人の代表作「アブノーマル陰虐」(1988)を想起させるものが

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「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第一回】

「火だるま槐多よ」夢野史郎インタビュー 深淵のワンダーラスト【第一回】

取材・文/やまだおうむ

 あの映画を作った奴はヤバいらしい──、日本全土がバブルに沸いた1990年前後、東京の片隅の成人映画館の前を行き過ぎる映画関係者がかなりの頻度でそう呟いた、その看板には、決まって次の名が記されていた。「監督 佐藤寿保 脚本 夢野史郎」。 “獣姦ポルノ”「馬と女と犬」(1990)が、「男はつらいよ」を超える空前の“国民的”ヒットとなった頃である。バブルが去り、街に不穏な空気

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井口奈己「左手に気をつけろ」インタビュー 私の映画は元々プリミティブなんです

井口奈己「左手に気をつけろ」インタビュー 私の映画は元々プリミティブなんです

取材・文/やまだおうむ
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こどもが思いきり暴れる映画を──
それがミッションでした

──実は、私の中には8mm版「犬猫」(2001)を拝見して以来、ずっと“お洒落な井口さん”というイメージが刷り込まれておりまして、一番驚いたのは、特に前作「こどもが映画をつくるとき」(2021)の“暴力性”というのでしょうか。ヴァイオレントとい

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【第八回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第八回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

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取材・文/やまだおうむ

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唯一無二の脇役俳優タンクローとの出会い
──「赤い蛇の目は死の宣告」

──第23話「赤い蛇の目は死の宣告」は、当時人気を博していたテレビの「必殺」シリーズ(1972~)や「銭形平次」(1966~84)の世界をないまぜにした戯作的な面白さもさる

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【第七回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第七回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

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取材・文/やまだおうむ

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知られざる宮津出身の名キャメラマン――「吸血!女の館」

──第19話「吸血!女の館」は、「瞳の中の殺人者」と同じく坂根省三のキャメラですが、坂根さんの画面には、牧浦地志にも通じるテイストを感じます。一ショットで空間が立ち上がるといいますか・・・・・・

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荒井晴彦「花腐し」インタビュー 後篇・監督、ホラーについても、ちょっとだけ語る

荒井晴彦「花腐し」インタビュー 後篇・監督、ホラーについても、ちょっとだけ語る

取材・文/やまだおうむ

  「食」から見える男と女の息吹き(承前)

荒井 でも今回は、舞台挨拶の後、ツイッター(現・X)を見ていたら、余計なお世話って言いたくなる感想はほとんどないんだよな。とにかく綾野ファンが凄い。 

──R18なのが勿体ないという声もあったと宣伝部の方も言っていましたし、メッセージというか、監督のやりたかったこととかやってきたことが、ストレートに観客に伝わったということな

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荒井晴彦「花腐し」インタビュー 前篇・新宿区大久保──醒めない夢の向こう側

荒井晴彦「花腐し」インタビュー 前篇・新宿区大久保──醒めない夢の向こう側

取材・文/やまだおうむ

制約が多かった「あちらにいる鬼」

――今回DVDとブルーレイになった「花腐し」(2023)は、脚本のみ担当されている「あちらにいる鬼」(2022・廣木隆一)とはがらりと違う内容で、とにかく驚きました。「あちらに~」は、終盤の剃髪に向けて、モデルである瀬戸内寂聴と井上光晴との関係が丁寧に練り上げられていて、感動したのですが・・・・・・。 

荒井 「あちらにいる鬼」はね、

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【第六回】 関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第六回】 関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

第一回 第二回 第三回 第四回 第五回

取材・文/やまだおうむ

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ロマン・ポルノに咲いた名花の心意気(承前)

――田中真理は、日活ロマンポルノ裁判の時、被告になった山口清一郎監督らを先頭に立って擁護し戦った女闘士というイメージが強いですが、どんなお人柄だったんですか?

関本 闘士というイメージは五分もなかった。・・・・

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【第五回】 関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第五回】 関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

第一回 第二回 第三回 第四回

取材・文/やまだおうむ

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「台本を直さなかった」唯一の回――「瞳の中の殺人者」(承前)

――初期の「影の軍団」シリーズは、大胆な濡れ場が呼び物になっていましたが、裸を出せばいいという単純な発想ではなく、関本監督としてはある種の折衷案だったんですね。

関本 裸のシーンって撮ってて面白くないん

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【第四回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

【第四回】関本郁夫・茶の間の闇 緊急インタビュー 自伝「映画監督放浪記」に寄せて

第一回 第二回 第三回

取材・文/やまだおうむ

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予算は当初から逼迫していた

――第11話「花嫁と暗殺の鬼」では、笑い声と共に、仏像が真っ二つに割れ、中から服部半蔵が現れる。それ迄の回になかったカタルシスです。あの演出は、後に黒田義之監督もアレンジを加えて使っていますね。

関本 この話に限らず、ラストの立ち回り前の千葉の

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