
クロサワ 🏹マクベス!『蜘蛛巣城』
黒澤明監督 (1957) 東宝
脚本 橋本忍・小国英雄・菊島隆三・黒澤明
美術 村木与四郎
音楽 佐藤勝
シェイクスピアの 戯曲『マクベス』を
日本の戦国時代に置き換えた作品ですが
黒澤監督は
まったく独自な 戦国の世のイメージで
創り上げていますね。
原作の世界観に 能の様式美を取り入れ
海外では
シェイクスピアの映画化作品の中でも
最も優れた作品として 今なお評価されているそうです。
ここでは
あらすじだけ、ざっくり。
〇
戦国時代。
蜘蛛巣城の城内では
北の館 (きたのたち)の主・藤巻の謀反にあい
打つ手なく 主君共々 籠城の覚悟を決めていたが
そこへ 早馬の使者が駆け込み
一の砦の 鷲津武時 (わしづたけとき・三船敏郎)と
二の砦の 三木義明 (千秋実)が
藤巻を破ったという 知らせが入る。
喜ぶ主君・都築国春 (佐々木孝丸)に 召し呼ばれ
武時と義明は 蜘蛛巣城へと馬を走らせるが

このとき 一転にわかに 晴れた空に突然、雷鳴がとどろき
慣れているはずの「蜘蛛手の森」で 二人は迷い
森の奥で もののけの老婆に出会う。

老婆は二人に こう予言する。
「武時様は今宵、北の館(きたのたち)の主になり
やがては 蜘蛛巣城の城主様」
「義明様は今宵、二の砦の大将様
そして あなたのお子様は 後の蜘蛛巣城の城主様」
この予言に
それは夢のまた夢じゃと 二人は大笑いするが
その夜、主君・国春が 二人に与えた褒美は
武時を北の館の主に
義明を一の砦の大将に命ずるものであり
二人は老婆の予言が 当たったことに驚く。
しかし、これを聞いた
武時の妻・浅茅 (山田五十鈴)は
もし義明が老婆の予言を 主君・国春に漏らしたら
国春は やがては蜘蛛巣城の主になるという
貴方の命を狙うでしょうと
武時に 謀反をそそのかす。

「貴方の行く道は ただふたつ。
じっとこのまま 大殿に斬られるのを待つか
大殿を殺して 蜘蛛巣城の主になるか」
数日後、折りしも主君・国春が
隣国の敵を討つため この北の館に立ち寄ることになる。
「今宵、大殿がお泊りになる。このような機会はまたと無い。
大望を抱いてこそ男子ですぞ」
その夜
浅茅は警護の侍たちを 眠り薬を入れた酒で眠らせ
妻にそそのかされた武時は
眠っている国春を刺殺。
国春の臣下に 主君殺しの濡れ衣を着せた。
こうして武時は 蜘蛛巣城の城主となったが
自分たちには子が無いため
長年の友・義明の嫡男を 養子に迎えることにする。
ところが このタイミングで
妻・浅茅が懐妊を告げた為 武時は心が変わり
養子の話は反故となる。
しかし あの折り
この後、蜘蛛巣城の主になるのは
義明の息子だと告げた 老婆の予言を恐れた武時は
先手を打って 義明親子を手にかけるが
義明は討ったものの
息子を取り逃がしてしまう。
この後、義明の亡霊を見て 錯乱する武時。

やがて 嵐の夜、浅茅は死産。
そこへ
主君・国春殺しの濡れ衣を着せられた 小田倉則安、
国春の嫡男・国丸、義明の嫡男・義照の軍勢が
攻め込んで来るという報を受け 不安になった武時は
蜘蛛手の森に 馬を走らせる。
あらわれた もののけは こう予言する。
「この蜘蛛手の森が 動かぬかぎり
あなた様が戦に敗れることはない」
これを聞いて 森が動くはずはないと
安堵する武時だったが
翌日、嵐の去った朝 浅茅は発狂する。

殿を殺めたときの 血が取れぬと 手を洗い続ける浅茅。

そして このとき正に
ざわざわと押し寄せて来る 蜘蛛手の森。

それは敵の軍勢が
樹木に偽装し 攻め寄せて来たものだったが
うろたえる兵士たちに
「持ち場を離れるな!」と 叫ぶ 武時めがけて
無数の矢が放たれた。

〇
初めて観た30代では
重々しく、取っつきにくい作品と感じたけれど
後で思えば
ストーリーは 至ってシンプル。
今では 黒澤作品の中でも
もしかしたら、一番好きかな・・と思わされる作品。
見事としか 言いようがない。
そもそも 当時、
シェイクスピア文学を 戦国時代に置き換える、
なんてことを考え付く
40代の黒澤さんに 驚嘆したものでしたが・・・。
おしまい