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僕たちが始めた宿泊施設で、ほぼ毎日にっぽうを書くことにした理由。

ほぼ毎日、【にっぽう】を書く宿泊施設。それが僕たちの手がけた「にっぽうの家 上士幌」です。(URL:https://kamishihoro.today/

にっぽうの家 上士幌のロゴ。

ここで言う【にっぽう】とは…
いわゆる業務日報と基本的には同じ意味の日報ですが、にっぽうと開いているのは、意味があります。と言うのも、ここでは上士幌の日々のよろこびを文章として公開。それをにっぽうとしています。この家のスタッフが書く時もありますが、泊まりに来た人や町の住民が書くこともできます。「にっぽうの家 上士幌」のwebサイトやSNSなどで公開しています。

僕たちの【にっぽう】の定義

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【にっぽう】を、ほぼ毎日公開するなんて、
何のためにやっているの?

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と、疑問に思う人もいるんじゃないですかね。そういう人にこそ聞きたいんですけど…北海道上士幌町って知っていますか?

宿泊施設をやるには、無名な町。

僕がこの町を知ったのは、ふるさと納税や自動運転バスの実証実験です。確かにふるさと納税で、多くの寄附金を集める自治体だし、自動運転バスやドローン配送の実証実験を行っている町。

でも、それだけで上士幌のこと、分かりますかね?

「へぇ〜!そうなんだ。」と、自分には関係のない、ちょっと進んだ町…くらいで終わると思うんですよね。

なぜか上士幌町には、面白い人が来る。

先にお伝えしたいのが…北海道上士幌町には、面白い人がたくさんいる。と言うことです。例えば、実証実験も面白いけど、実証実験を行おうとこの町に来る人たちも、面白人たちばかり。そんな彼女たちが、中長期的に滞在してもらいたいと宿泊施設を作ろうと思ったのが、「にっぽうの家 上士幌」の最初のきっかけでした。だから、彼女たちのことを想い、つけた施設のキャッチフレーズがこちら。

にっぽうの家のキャッチフレーズ。

彼女たちって、もちろん仕事でこの町に来ています。会社のミッションとして、実証実験をしている。でも、彼女たちを見ていると、あれ?仕事ってなんだっけ?と考えてしまうんですよね。自分の人生で成し遂げたいことと、会社で成し遂げなきゃいけないことが、ぴったり一致しているように見える。お仕事ですか?お私事ですか?と聞きたくなるような、そんな顔で仕事しているんですよね。

これからの「働く」が、上士幌町の日常。

そんな彼女たちの「働く」も、上士幌の日常です。そんな仕事/私事をしに来る人がたくさんいる。実証実験がたくさん行われている町より、自分がやりたいことを一生懸命チャレンジしている人たちが、自分の挑戦の1つの成果を成し遂げようと、やって来る町!と言った方が…ほら、ちょっと見えてきませんかね?

あれ?働くのってなんのためだっけ?と思っている人が、ちょっとだけ上士幌町のことを知ろうとしてくれるかもしれない。僕は、そこに可能性を感じました。そしたら、ただのワーケーション施設って言わないで、「働く」について考える場所ってことでもいいのではないか、と発想が開いていきます。

東棟と西棟に、それぞれ4部屋の個室がある。

ワーケーション施設って、言いたくない。

ワーケーション施設って言うと、僕は、なんか思考が止まるんですよね。流行り言葉だし、旅先で仕事すればいいの?出張先で遊んでいい口実?って…言葉としてキャッチーな分、自分の生活と接して考えるハードルが上がってしまう気がするんですよね。

せっかく「働く」で人がたくさん来る施設なら、ワーケーションって言わずに、もっと平たく言ってしまう。例えば、「働く」を考える施設でも良いのではないでしょうか?

東棟一階のリビング。宿泊がない時は、町の人も使える共有スペース。

改めて上士幌の「働く」を、見直してみる。

そう考えると、僕はこの町の「働く」にも、良い意味で、ちょっと疑問が湧いてきます。町役場の人は、なんであんなに一生懸命なの?どんなに成果をあげても、出世が早まるくらいでボーナスの金額が変わるわけでもなんでもない。じゃあ、なんのために頑張っているんだろう?僕が都市部で見てきた人と、そもそも「働く」が違うのかも。

他にも町で出会った農家さんたち。彼女たちの「働く」も僕たちとは違います。彼女たちは、畑が雪で埋もれたら、そこに仕事はありません。一年の半分は畑仕事、もう半分は働かない。そんな「働く」です。じゃあ、残りの半分の時間で、何をしようか。農家さんたちは、自分の野菜にロゴマークやキャッチコピーをつけて、ウェブサイトで販売したり、イベントに参加して手売りしたり。D2Cと言える動き、ブランド化と呼べる活動をし始めます。そうすると、そこに都市部でブランディングをやっていた人や近くでデザインやイラストを描いている人が手伝いに来てくれます。

農家さんとのエピソードを書いた、ある日の【にっぽう】。

「にっぽう」は様々な価値観に触れる道具

一人の「働く」に、いろんな「働く」が集まってきました。そして、その「働く」をするのは、いつだってなんですよね。その一人ひとりの「働く」に、気持ちや想い、背景があったりします。ぽろっと町の事業者さんが言った言葉であったり、チラッと見せてくれた農家さんの考え方であったり。そういうものに僕たちが現地で触れ合いながら、それを【にっぽう】として報告していく。

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いつか私も、この施設に行って、
自分の働くを考えたい。

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そんな風に思ってもらうのが、大きな夢ですね。この施設はどうなりたいの?と言われたら、僕たちは今、ここに記したようなことを答えるようにしています。

西棟のリビングで、宿泊者だけが使えるスペース。

宿泊施設ではなく、考える場所をつくる。

イベントなどのタイミングで、この「にっぽうの家 上士幌」の発案者である、松浦弥太郎さんと話すのですが、やはり働くことについて彼の考えを聞かせていただくことが多いんですよね。

非常に興味深かったのは、「働く」と言う言葉さえ、僕たちの思考を止めてしまうかも、と言う懸念。

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「働く」の代わりに「考える」時間が
多くなってくるのではないでしょうか?
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そんな投げかけがありました。つまりそれは、何のために働くのか、を考えることから始める、今一度考えるということかもしれません。

質素な商品がくれる、豊かさを考える時間。

何のために働くのか。自分の豊かさとは何か。そう考えた時に、この「にっぽうの家 上士幌」は、最適な場所かもしれませんよ。と言うのも、この施設は無印良品の家が設計し、家具家電を無印良品の方がコーディネートしてくれました。つまり、無印良品に囲まれた空間というわけです。商品一つを手にとっても、無印良品には思想がありますよね。どんどん進化する家電に対して、無印良品の家電は、とってもシンプルだったり。なんでもかんでも付け足して、どんどん進化していくよりも、「これでいい」と思える、必要十分な要素で完結する。1つの豊かさの解釈、考え方が伝わってくると思います。誰も見たことのない、新しい機能や用途はありませんが、生活に欠かせないものとして、永く使えるように出来ている。この無印良品の空間で設計された、「にっぽうの家 上士幌」は決してリッチではありませんし、絢爛豪華とも呼べないと思います。が、何かゆっくり考える場所として、最適でありたいと思いますし、働く僕たちも、そしてこの施設も、上手な聞き手でありたいと思っています。

全てMUJIで揃えた個室。セミダブルのベッドとデスクがある。

聞き上手な家が、今日も上士幌を報告する。

そうして来た人たちが1日1日を大切に、それぞれの時間を有意義に過ごしてもらうために。そして、そこで生まれた忘れたくない今日を、【にっぽう】として書いていただく。上士幌に流れている時間や、そこで生まれた思考、実際に行われた取り組みや、そこから生まれたつながり。面白いことがたくさん起こっている上士幌が可視化されていきます。関係のなかった場所が、自分の場所になる。いきたい場所になる。

僕らにしかできない、地域貢献を考えた末に出した結論が、
【にっぽう】を書く、と言うことでした。


長くなりましたが、これが僕たちの、ほぼ毎日、【にっぽう】を書く理由です。可能であれば、是非【にっぽう】を読んでください。そして願わくば、あなたも【にっぽう】を書きに来てください。

北海道上士幌町にて、お待ちしております。

玄関に置かれた苔玉。この子がお出迎えします。


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