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塾という「場」についてのワーク

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学校に通い塾には通わない生徒、学校と塾の両方に通う生徒、学校は通わず塾だけに通う生徒、塾を学びの場所とする浪人生etc. 塾は私たちの日常にあふれていますが、そこはいったいどんな…
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#教育

塾という「場」 12 ー学校の先生たちにむけてー まとめ

塾という「場」 12 ー学校の先生たちにむけてー まとめ

まとめ塾での学びのありように光をあて、言葉を与え、紹介してきました。
塾という場では、生徒という対象がそもそも破れているために、フォーマル教育である公教育で求められる学力をつける要素とともに、インフォーマル教育やノンフォーマル教育における学びの作られ方という要素も大きく作用しているといえます。

今回紹介した「生活のなかに学びがある」、そしてそこに学力も位置するという視点は、まずは、生徒のエンパワ

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塾という「場」 11 ー指導のありようー 

塾という「場」 11 ー指導のありようー 

3-3 指導のありよう抽象的な話が続きましたので、ここで具体的な指導のありようを提案してみたいと思います。
 
学びの援助の仕方、関わり方としては、
・ティーチング
・コーチング
・カウンセリング
・コンサルティング
この4つを駆使することになります。
 
簡単にまとめると、
・ティーチングとは、教える側からの知識の伝達
・コーチングとは、教わる側の自主性の発揮を引きだす
・カウンセリングとは、-

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塾という「場」 10 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ケア的な支援

塾という「場」 10 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ケア的な支援

(v)ケア的支援へ
「すべての労働は、ケアリング労働だとみなすこともできる」とD.グレーバーは述べています(デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブーくそどうでもいい仕事の理論』 307頁 岩波書店 2020)。
さいごに、この視点から検討してみたいと思います。
 
もし、「教育とはケアリング労働である」と仮定するならば、それはまさに、教育者が、『「もろさ」の強さ』を引き受ける、ということによっ

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塾という「場」 9 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 対話

塾という「場」 9 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 対話

(iv)対話
自分を知り、深め、押し広げていくという世界の立体化。
それは、異なる視点を獲得し、言葉に至らない思いをすくいあげ、自分の物語として修正し編みなおしていくということです。それは、対話的プロセスによって駆動しています。
 
生徒、指導者ともに、他者に対しても自分に対してもつねに対話的に接するということが重要です。
 
「対話的」というのは、それぞれがそれぞれのリアリティを超えて、経験を重

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塾という「場」 8 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ネガティブ・ケイパビリティ

塾という「場」 8 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ネガティブ・ケイパビリティ

(iii)ネガティブ・ケイパビリティ
「わからないこと」に慣れる、「わからないこと」から逃げない、そして「わからないこと」を面白がる、という態度は学びづくりを考える大きなヒントになります。
 
ここで、重要な概念を紹介したいと思います。
「ネガティブ・ケイパビリティ」(帚木蓬生 『ネガティブ・ケイパビリティー答えの出ない事態に耐える力』 朝日新聞出版 2017)です。

ネガティブ・ケイパビリティ

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塾という「場」 6 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 視点の相対化

塾という「場」 6 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 視点の相対化

3-2 生徒の「まるごと」に寄りそう

「生活のなかに学びがある」「生徒のまるごとを引き受ける」という点について、さらに見ていきましょう。
 
キーワードは、
・視点の相対化
・物語的個人
・ネガティブ・ケイパビリティ
・対話
・ケア
です。
 
(i)視点を相対化する
生徒の存在、「まるごと」を引き受けるということは、そこに生徒の世界があるということを、まず、引き受けることです。
 
そして、「

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塾という「場」 5 ー「学び」のありようー 対象が「破れている」

塾という「場」 5 ー「学び」のありようー 対象が「破れている」

3 塾という場における「学び」のありよう「なんだかわからないけれど、いろいろな要素が絡んでいるようだ」と思われた方が多いのではないでしょうか。「なんとなく、わかる」「まぁ、そんなものだ」と感じられた方もいらっしゃると思います。
 
その通りです。私たちにとって、あまりにもあたりまえの、ありふれた、しかも明確に組織化・体系化されていないところで起こっている学びです。このもやもやとした言語化しにくいも

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塾という「場」 3 ー場としての塾をめぐってー 学びの評価

塾という「場」 3 ー場としての塾をめぐってー 学びの評価

(承前)
③塾での学びの評価とは?
塾での学びに対する評価についても、公教育のそれとは多少異なる側面があるかもしれません。
これまで述べてきた、主体、そして主体をとりまく諸条件がここに大きく関わってくるようです。
 
てがかりに、誰が評価するのか、何をもって成果として評価するのか、という点について考えていきたいと思います。
 
(i)誰が評価をするのか
塾での学習をめぐっては、常に複数の要因がつき

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塾という「場」 2 ー場としての塾をめぐってー 主体・状況・条件

塾という「場」 2 ー場としての塾をめぐってー 主体・状況・条件

2 塾という「場」生徒の学びが起こる場である塾は、「場」として、どのような特徴をもっているのでしょうか。

2-1 塾の「場」って?

最初に、これから述べていく「塾」のイメージを皆さんと共有しておきたいと思います。
巷にはあらゆるタイプの「塾」とよばれる教育を担う場所があります。大手有名進学塾や、医歯薬理系に特化した受験塾、地域密着型の補習塾などです。また、授業形態としても、直接指導もあれば、ネ

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塾という「場」 1 ー学校の先生たちにむけてー イントロ

塾という「場」 1 ー学校の先生たちにむけてー イントロ

1 イントロダクションみなさんは塾という場について、どのようなイメージをもっていますか?お子さんを塾に通わせている方はどのくらいいらっしゃいますか?担任する生徒の何割くらいが塾に通っているか、ご存知ですか?
 
一般的には、塾は、「学力を伸ばす場」だと考えられていると思います。具体的には、受験や進学のための学力や偏差値のアップ、また定期テストの対策、そのほか日々の補習といったイメージがあります。

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