読書感想【面白すぎて誰かに話したくなる 蔦屋重三郎】
来年の大河ドラマの主人公である蔦重さんの本があったので、詳しいことを知りたいと思い買ってみました。読みやすい本でしたよ。
蔦重のことは前々から知ってはいましたが、北斎や写楽をプロデュースした人ぐらいにしか知らなかったので、その生涯や成功の要因など詳しいことがわかりました。
合間合間に蔦重さんの心の声が載っていたのも、おもしろかったです。
・蔦重の生涯
蔦重さんの生まれたところはなんとあの「吉原」なんですって!
しかも、7歳の時に両親が離婚して捨て子同然になってしまい、喜多川という店に拾われたそうです。いきなり過酷な生まれだったんですね・・・。
しかし、蔦重さんはグレて不良になることもなく、喜多川の店で商売のイロハを叩きこまれて、立派な商人に成長します。
やがて独立して蔦屋「耕書堂」という版元(書店)の店を開き、そいつを成長させてたちまち江戸の出版王(メディア王)に上り詰めます。
恋川春町・山東京伝・喜多川歌麿・東洲斎写楽・葛飾北斎・式亭馬琴といった戯作者や絵師や浮世絵師たちをプロデュースして世に送り出した立役者でもありました。
蔦重が版元の商売の乗り出す以前には、作家や浮世絵師に報酬が支払われることはなく、あくまでも遊びみたいな感じでやっていたそうなのですが、それを蔦重はちゃんとした職業として確立させたのだそうです。
江戸の文化を一変させた凄い人だったんですね~。
・蔦重の成功の要因
そんな蔦重の成功の要因、それは先見の明をもつすぐれたプロデューサーだったというだけだったことも大きいですが、蔦重のムチャぶり(?)に応えてくれる作家・浮世絵師・職人たちの存在もありました。
蔦重さんは、明るくて面倒見のいい誰からも好かれる、という人物だったようです。
だからこそ、蔦重さんの元には多くの人が集まってきたのかもしれません。
吉原出身という出自も、あらゆる層に気に入られるチャンスに恵まれていたともいえる、と著者の人も言っていました。
御上(松平定信)にたてついて処罰されても、全くへこたれなかったことも江戸っ子たちにウケたみたいです。
「大衆の味方、蔦重」をプロデュースすることに役だったのでした。
蔦重さんは自分さえもプロデュースする名プロデューサーでした。
・蔦屋重三郎とは何者だったのか?
最後に「蔦屋重三郎とは何者だったのか」と著者は問うています。
蔦重は明るくて格好いいちゃきちゃきの江戸っ子「蔦屋重三郎」を昼夜問わず演じていたのではないか、と。
そうなのでしょうか。蔦重さんの本性は今となっては知る由もありませんが、実はその過酷は出自から、悲しみや苦しみを抱えていたのかもしれません。
そんなところは見せず、カッコいい「蔦屋重三郎」を演じきって蔦重さんは亡くなった、のかもしれません・・・。
江戸の出版王と言われる「蔦屋重三郎」
その生涯や成功の要因、また蔦重を取り巻く作家・絵師たちの生い立ちもよくわかりました。
蔦重さんは47で亡くなっていて、今でいうと若くして亡くなっています。
当時の平均寿命で言えば妥当なところなんでしょうけど、もう少し長生きしてほしかったですね。太く短く生きる、ってのが信条だったのかもしれません。
あと、謎の絵師「東洲斎写楽」のことも興味深かったです。
写楽の正体は阿波藩能役者の「斎藤十郎兵衛」ではないかと最近言われてますが、著者によるとそれは意外と苦しい説なんだとか。
斎藤十郎兵衛説は違うみたいですね。やっぱり、写楽の正体は永遠の謎ってことですか。
蔦重さんは写楽の正体を隠し切りましたね。
来年の蔦重さん主人公の大河ドラマも楽しみです!