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【ネタバレなし書評】ここ最近ダントツで面白かった本
夢を自在に操れたら楽しいのに。
そう思ったことは何回もあるけれど、ここまで自在に操れてしまうなら夢なんか見たくない。
そう思ってしまうような小説に出会った。
それが、この本。
『ばくうどの悪夢』 澤村伊智
「諦めなさい。どうせあなたは死ぬ」
東京から父の地元に引っ越してきて以来、悪夢に悩まされていた「僕」は、現実でもお腹に痣ができていることに気づく。
僕だけでなく、父親の友人の子供たちもみな現実に干渉する悪夢に苦しめられていた。
やがて、そのうちひとりが謎の死を遂げる。
夢に殺されたのか。次に死ぬのは誰か。なぜ、悪夢を見るのか。
理由を探る中でオカルトライターの野崎と真琴からお守りをもらい、僕らの苦悩はいったん静まったかのように思われた。
しかし、今度は不気味な黒ずくめの女に襲われる悪夢を見るようになる。 「比嘉琴子」と名乗るその女は、夢の中で僕を殺そうとしてきて──。
気味の悪い表紙に謎のタイトル。
ばくうどとは何を表しているのか。何者なのか。悪夢とはどんなものなのか。
スリリングな内容にショッキングな描写。
単純な言葉では一切表せない地獄、地獄、地獄。
ページを捲るたびに、主人公の同じように手に汗を握りしめ、悪寒を感じ、祈るような気持ちになっていた。まるで、私も一緒に悪夢を見ているかのようだった。
どれが夢でどれが現実なのか。
夢と現実の境界線や、意識が朦朧とする感覚の描写が妙にリアルで、読んでいくうちに、いつの間にか私も〈ばくうど〉の手中に落ちていた。
実は、私はこの本に不思議な出会い方をしている。
普通であれば本屋で目を惹いたり、レビューを見て購入を決めたりすることがほとんどなのだが、この「ばくうどの悪夢」だけは違っていた。
ちょうど会社を辞めたいと思い始めていた頃、通勤電車の中で向かい側の座席に座っていた若い女性がこの本を読んでいたのだ。
なかなか持ち歩こうとは思えないような本の分厚さと禍々しい表紙が妙に目についてしまい、私は本を読む指の隙間からタイトルを盗み見て、検索画面をスクリーンショットに残しておいた。
それから暫くは本の存在を忘れていたり、他に欲しい本を優先したりとなかなか購入には至らなかった。
大体の欲しい本を購入し、物欲も落ち着いてきた頃、やっと購入に至ったのが先月というわけである。
意を決して読んでみたら、面白いのなんの。
私はあの時からずっと、〈ばくうど〉に呼ばれていたのかもしれない。
本は468ページとかなりの長編だが、中だるみすることなく5日ほどあれば問題なく読み切ることができた。というよりも、一度読み始めると止まらなかった。
キリの良いところで止めようとしても、続きが気になりすぎてなかなか終えられないのだ。
(深夜2時過ぎまで読んだこと、計2回。内容も相まってトイレが怖かった)
スピリチュアル・オカルト系の話が好き、ホラー小説が読みたい、ショッキングな描写に耐えられる、「古くから伝わる」「言い伝え」といった言葉にピンと来る人には是非読んでもらいたい1冊。
私はこの本が初めてだったのだが、どうやら「比嘉姉妹シリーズ」という名前でシリーズ化しているらしい。
本編に登場してくる比嘉姉妹が、他のシリーズにも登場しているとはこれまた興味深い。
壮大な伏線回収が大好きな私には堪らない。
刺さりそうであれば、他のシリーズも手に取ってみようと思う。
ちなみにこれはアフィリエイトではないので、ただの私のオススメ。よかったら、読んでみてね。
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