世界を呼び込むコンテンツのある街アルバ
Vol.089
コロナがあってから、仕事でピオッツォ村まで行くことはあっても、アルバへ
行くことはなかった。
こんなに近いから言ってくればいいのにって感じだが、特に用があるわけではないからいかない。
今回は久しぶりにアルバ近郊で打ち合わせがあった。
アルバはトリュフとワインの街
ピエモンテにあるアルバという街は、言わずとした美食の地。
特に有名なのは白トリュフであろう。
その1gに価値があるトリュフの価格は、毎度と目から星が出そうな感じとなる。
そしてアルバの白トリュフといえば、最高×10000倍以上に最高だ。
毎年秋になると、白トリュフを楽しみにしている美食家も多いことだろう。
そしてアルバといえばワイン。
正直この辺りでは赤ワインが優勢に人気がある。
この街に来たら、ビールはバラデンでもいいけど、ワインはやっぱり欠かせない。
今回の打ち合わせ先では、赤ワインだのトリュフだのというランゲ地区の話をしていた。そして午後遅くまでかかるかと思ったうち合わせは午前中でサクッと終わったので、トリノまで送ってもらわずに、アルバでランチして帰ろうとおろしてもらうことに。
閑散期も忙しいアルバ
本来、この時期のアルバは閑散期である。
まず葡萄畑は、今やその枝葉をぐんぐんと伸ばし、その果実をしっかりと実らせるまでの段階。
そしてアルバといえばトリュフ祭りがあり、世界中から観光客が訪れるイベントであるが、今はトリュフ収穫期というわけではない。
だが、アルバに来たらトリュフが食べたいし、ワインも飲みたいということで、適度なお店に入ることにした。
手頃なカフェで、前菜の盛り合わせと黒トリュフのタヤリンと赤ワインをいただく。
この味わいももう何年も食べ続けているけど、こうやってオーソドックスにアルバでいただくのがいい。しかも手頃に予約なしにふらっと。
でも閑散期というのにとにかくどこのお店も満席で、とてつもなく賑わっていた。
アルバという街自体はのんびりとした、どこにでもあるいわゆるイタリアの街並みなのだが、各店の店内がほぼど満席という。
「どこから来たんだ? 観光か?」
一応、イタリア語は話せるので、オーダーはイタリア語でする。
ワインのオーダーをするときには店主のアドバイスを聞きながら選んでいたせいか、お会計の時にちょっとしたおしゃべりになった。
「どこから来たんだ? 日本? 観光か?」 と聞かれたので、
「いや、日本からだけど、実際はトリノに住んでる。今回は仕事でアルバに」と答えたら、やはり必然的に聞かれるのは、
「仕事って観光の?」と聞かれる。
「いや、私はピオッツォのビールの日本担当なんだ。それと缶のお米とか、ルケのジンとか色々日本に紹介している」と前談し、「今日は別のメーカーとの打ち合わせ。うまく行けば、アルバに通えるかな」と、自分の仕事をざっくりと説明した。
「バラデンか!あそこはよく知っているよ」 と笑顔になり、私もすかさずに
「そう。テオとチコと働いてる。もう10年にもなるかな。ビールと米とジンとワインとか、ビネガーもあったっけ。そう、全部ピエモンテ! あなたたちの土地のために働いているよ!」 とあえて押し付けがましくいうと、さらに笑いながら会話は止まらなくなる。
奥にいたおばあちゃままで出てきた。
ど満席で忙しいのに、これがアルバの人なのだろう。
最近はどこの街でも居心地良くなってきた
ピエモンテの人は閉鎖的であるというのは、イタリア国内では知られた人間性。
でもちょっとでもその人たちの暮らしに手がかりがあると、とても親切にしてくれる。世界各国からあらゆる人が訪れようと、やはり身内には優しい。
「アルバでの仕事が決まったら、また来るね」といえば、
「またきっと来ることになるよ」と。
結構集中した打ち合わせの後だったので、あれを乗り越えてご馳走が毎度待っているかと思えば、馬ににんじんの原理でがんばれると思った。
美味しいものはと素敵なおしゃべりは、何事にも変えられないストレス解消。
私がポジティブコミュ障であることはさておき、やはり海外生活では現地の拠り所が大切。
アルバは平和で穏やかな街並みではあるが、みなこの忙しさを楽しんでいる。
しかしトリュフとワインというコンテンツは、世界中の美食家を魅了しているのは間違いない。
そこに貢献したいと思う自分のレゾンデートルなんぞ考えてしまった木曜日のこと。