見出し画像

37.シェフと行く、シチリア美味しいものツアー

実は東日本大震災のあったころ、シチリアのトモコさんと私は新しい旅のプロジェクトを考えていたところでした。
それは私たちらしいオリジナルな団体旅行の企画で、その年の6月に実施すべく3月の時点ではすでに動き出していたのです。


食いしん坊のための夢のツアー

スローフードの仕事をとおして知り合ったミシュランシェフに一緒にシチリアへ行かないかと誘ったら快諾してくれました。
いつもは忙しくしていますが、ちょうどお店の移転と重なり時間があったのです。

2011年6月に5泊7日で実施することになりました。
シチリアのもっとも美しい季節と思います。
集客を始めたのが1月の終わり。
東日本大震災という大きな出来事がありましたが、参加者も定員に達し無事に催行することができました。

最初から最後までずっと件のシェフが同行し、現地の食材を使って料理をしてくれて、それをいただくこともできると言うグルメにとっては夢のような内容です。
シェフと一緒に市場へ行ったりワイナリーへ行ったり、シチリアの食の現場を見ることもできる本当に良いツアーでした。

あのグルメツアーの企画はいつかまた実施したいと思ってはいるのですがあれから13年、件のシェフが大御所になってしまっていてもうムリだろうなと思います。

シェフの特別プランツォ

イタリアでは伝統的にランチがその日でもっとも大切な食事となりそれを「プランツォ」と呼びます。

3日目は、今回のツアーの目玉であるミシュランシェフの特別プランツォが実施されました。
その日の午前中に行ったリポストという港町の市場でシェフが直々に選んだ魚介類や野菜、果物を使った料理に、ワイナリーで買った地ワインをいただきながらの豪華ランチタイムです。

メニューの記録が残っているのでちょっと書き出してみます。

前菜
・甘エビとコウイカの刺身にイカ肝のコンフィを添えて
・ムール貝の黒コショウ風味
プリモピアット
・花ズッキーニとコウイカのスパゲッティ
セコンドピアット
・カジキマグロとイカのシチリア風パン粉ソース
コントルノ
・トマトとツナとオレガノのマリネ
・インゲンのニンニク風味
ドルチェ
・マチェドニア(スローフードのプレシディオに指定されているタバッキエッラ桃、杏、いちご、さくらんぼ)


素敵な食材に囲まれて、歌うように流れるように楽しそうに料理しているシェフの姿が印象的でした。

魚屋さんでミシュランディナー

次の日の夜は私が寿司を作っていた魚屋さんの厨房をお借りして、まさに魚屋直送ピッチピチの食材を使って、今度はシェフが和風に料理したものをいただくという夢のようなディナーです。

いま考えると、そんなとんでもない企画によく乗ってくれたなぁと思います。
そして、ミシュランシェフが来るということで魚屋さんのご主人が自分の知り合いまで呼んでいたり、通りがかりの人にまで声をかけてしまったりで大変な賑わいとなってしまいました。

ツアーのお客さまは地元の人に混ざって楽しそうでしたけれど、シェフのご苦労やいかに。
イタリア経験のないシェフだったら勤まらなかったはずです。
厨房では魚屋さんのスタッフにまでイタリア語でキビキビと指示を出していました。
優秀なシェフは何が起きても動じずに自分の責務をキッチリ果たすのです。

アンティパスト
・野菜のてんぷら
・マグロのトロのたたき
・サーモンのお刺身
・小エビと小魚のかき揚げ
プリモピアット
・スカンピのリングイネ
セコンドピアット
・カジキマグロの照り焼き

日本から持ち込んだしょうゆやみりんを使ってのなつかしい味に、ツアー参加の皆さんからは「白いごはんが欲しい…」との声が多数上がりました。

移住前、最後のイタリア

ツアーが無事に終わりお客さまを日本へと送り出したあと、私は引き続きひとりでシチリアに滞在しています。
1ヵ月ほどでしたが、個人ツアーのご案内も入っていたし、トモコさんと今後のツアーのことを考えたりして充実したステイとなりました。

もちろんシチリア人の彼との時間もたくさんあります。
エディーコラ(新聞スタンド)は朝6時~午後1時と午後5時~午後8時を開けていなくてはならず、これは営業規則として決められているようでした。
しかも基本的に毎日営業する義務があり、月に1度だけ日曜をまるっと休めます。
彼は母親と2人でエディーコラをやっていたので自由な時間は少なく、もっぱら昼休みやお店を閉めた後がそれに充てられました。

夏のタオルミーナで恋人と2人で過ごす時間って、最高です。
とくに太陽が沈んだ後。
いつまでもつづく夕暮れの空にカラリと乾いて涼しい夜風。
砂浜のレストランで波音をBGMに食事をしたり、深夜を過ぎても賑わいのあるタオルミーナの裏道バーに入ってみたり。

そして予期せずこの夏のタオルミーナでの滞在が、旅行者としてイタリアで過ごす最後の機会になりました。
次の渡伊はここから約2年後、移住を前提としての滞在になります。

料理の写真集

以下、今回ご紹介した料理のもう少し詳しい説明と写真に加え、シェフが作ってくれた最後の晩餐についても掲載します。

「イタリア移住にまつわる101のこと」本編とは関係ありませんので料理にご興味ある方は良かったらご覧ください。
そして、私にカフェ1杯、おごっていただけるとうれしいです!

※昔の写真につき解像度はこの程度ですので予めご了承ください

ここから先は

2,768字 / 22画像

¥ 300

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?