燈 下 可 親
◎ 東京 菊池與志夫
私が買ふ本は、著者と裝釘
とが、私の好尚に適してゐる
もののみに限られてゐますの
で、私の書架にある本は總て
私にとつて面白い本といふこ
とになります。
内田魯庵氏の「紙魚繁昌記」
「讀書放浪」「續紙魚繁昌記」
齋藤昌三氏の「書痴の散歩」
(以上書物展望社發行)内田百
間氏の「百鬼園随筆」「續百鬼
園随筆」「百鬼園俳句帖」(以上
三笠書房發行)内田百間氏の
「無絃琴」(中央公論社發行)
佐藤春夫氏の「維納の殺人容
疑者」小宮豊隆氏の「黄金虫」
(以上小山書店發行)佐藤春夫
氏の「閑談半日」(白水社發行)
水上瀧太郎氏の「親馬鹿の記」
(改造社發行)室生犀星氏の
「文藝林泉」(中央公論社發行)
谷崎潤一郎氏の「春琴抄」(創
元社發行)
以上が最近の私の愛讀書で
あります。私は只無性に本が
好きなたちでありまして、一
いちどこがいい、ここがいい
などと批判的に申上げるやう
な資格はないのであります。
内田魯庵氏の紙魚的な愛書
情熱には十分同感できます。
又今更ららしくてへんですが
内田百間氏の随筆はモルヒネ
中毒感を讀者に與へます。同
氏の俳句には随分銳い作が多
いやうです。つひ數日前に發
行されて「無絃琴」は小杉放庵
氏の裝釘ですが、これは明治
時代の本のやうな古くさい感
じでいやです。
近く中央公論社から出る谷
崎潤一郎氏の「文章讀本」は是
非欲しい本ですし、書物展望
社から發行されてゐる本で、
未だ大分買ひたいものが澤山
ありますが、近來讀書力が衰
弱してゐますので、どうして
もつんどくになりがちです。
私の読書傾向は以上のやう
なものですから、私には別に
珍書の所藏はありません。
(越後タイムス 昭和九年十二月二日
第一千百九十二號 六面より)
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