マガジンのカバー画像

しおり

36
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・7

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・7

哲学とアナキズムの応答が世界中にある

杉本 ところで森さんはご自分としてはアナキストと自己定義されてるんですか。

森 どうなんでしょうね。人によってはアナキストと言うときもあるし、まあそうじゃないと言われたらそれまでなんで、そうじゃないと言うしかないし。

杉本 僕は「そうじゃないだろう」と言える立場じゃないんですけど。アナキストですか?といわれたら「そうです」とやっぱり答えます?

森 そう

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・6

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・6

             学費が学生を縛っている

杉本 入ってから勉強しないとしてもと言いつつ、僕らの頃より圧倒的にしてるはずなんですよね。聞いたらものすごいみんなやってるみたいなんで。母校で平日構内人が歩いてないんですから。「え~?」みたいな。休み時間しか休んでません、みたいな話を聞きますのでね。びっくりですよ。高校ですか?みたいな。僕の知ってる大学じゃないんですけど、みたいな感じです。

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・5

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・5

             玉石混合で面白い19世紀

杉本 いまの話を聞いてると、余談ですみません。フォイエルバッハも過渡的にはなかなか良いこと言っているような。

森 まあ面白いことを言ってます。だからその時代というのは本当に玉石混淆というか、いろんなものが出てきた。フランスだと「スピリチュアリズム」という流れもあったりしたし。そのスピリチュアリズムの中でも最も神さま寄りの人もいれば、カトリック

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・4

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・4

                               アナキズムの実践はさまざま

杉本 で、折角ですよね。19世紀のアナキスト偉人の話がいまのところでてきていないんですけど(笑)。

森 ああ~。すみません、申し訳ない(笑)。

杉本 いえいえ(笑)。そういうわけではないんです。でも、この本の「はじめに」に対する「終わりに」がけっこう長いところで、いま語ってくださっていることはこの部分と

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・3

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・3

                                    それぞれの、「唯一者」的な生き方

森 (笑)全然いいです。だから何か国の制度使わないとか、かたくなになる必要はなくて。別に使えるものは使ったらいいと思うし、もっと言ったら別に安倍に反対している連中がみんな国家的な機能とか全部使ったらいけないのかとかそんなわけないですよね?

杉本 でもね。僕はバカでしたから思ってましたね。共

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・2

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・2

政治という位相と付き合う脚力

杉本 そうですよね。いやそうなんですよ。まあ問題意識として歴史の中ではそういう流れに対する付き合い方だよねという風に思える森さんのようなかたはいいんですけど(笑)、普通の人はほとんど自分自身がそこにコミットしてると思わされてると言っていいのかな。いや、それこそ選挙だって勝手に始めて何だ?(2017年11月)という話なんですけど。ボイコットしたいぜ、って。まあボイコッ

もっとみる
森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・1 近代に覆われきれない土壌を探して

森元斎さん(アナキズム研究、哲学者)インタビュー・1 近代に覆われきれない土壌を探して

もとは東京出身の森元斎さん。縁あって福岡に行かれた後にご自分で探し、福岡郊外の古民家の住民になられました(現在は長崎在住)。先端のヒップホップなども聞きつつ、畑仕事をしつつ思索するアナキスト哲学者。今回は図々しくも福岡の森さんのご自宅まで押しかけお話を伺いました。改めてお話聞き返し、その知性とやさしさ、そして漢気に心底うたれました。どうかこの濃密なお話をぜひお読みください。失礼な問いにも森さんは真

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・6

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・6

思い込みは何度も捨てていい

栗原:でも、そうなんですよね。一遍だと「人間じゃない、仏になれ」という発想なんですけど、常に人として植え付けられている常識ではなくていいという。例えば不道徳に開き直るのはちょっと怖くてできないと。それができなくてダメだなというときにでも、それができなくっても「ダメ」にだって開き直るさ、というところです。

――相手がとか、社会がとか、人が人と比較して判断するところに落

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・5

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・5

                捨ててこそ

――なるほどね。でも、いくら中世といっても、凄すぎですね。日本でそんなことやってる人がいた。で、それに付き従う人も沢山いたというのが。

栗原:それこそ、踊る前から一遍というのはすごくて。すべて「捨ててこそ」でいくんだと決めてから30代後半で旅に出るんですけど、最初は何も持たない。自分で稼いで食い物とかをゲットしたらもう自力になっちゃうんで、全部施しで

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・4

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・4

                浄土教の教え

――時宗の考えは鋭いところもさまざまあると思います。どうでしょう?ちょっと解題、いただけませんか?一遍上人の歩みみたいな部分を含めて。

栗原:そうですね。一遍上人は時期的に鎌倉中期の人で、元寇があったころです。蒙古に攻められるとかいうことがあった時期で、浄土教という教えの一派で法然という人が一遍の「ひいじいちゃん師匠」というか、一遍は浄土教の中では

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・3

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・3

           書きながら自分も自由になっていく

――で、つまりこれだけ漂白された2000年代にね。栗原さんのように、ある意味乱暴な言葉で表現せねばならないという人が出てきたということで。「うれしいなあ」と思って。

栗原:ありがとうございます。

――いや、本当にそうです。結局人に預けちゃう(笑)。じゃあお前は何をやってる?という話ですけど。

栗原:いやいやいや。

――頑張ってインタ

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・2

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)後編・2

               アナキズムは完結しない

――ところで僕ね。全体読んでて思ったのは、湿っぽくは全然ない人なんですよ。

栗原:ああ~!

――この評伝を読む限り。カラッとした感じで。人にもモノにも。モノを頼んだりなんかもしてたんだろうから、頼まれるほうも何か変にこだわりを感じなかったんじゃないかなって。

栗原:そうなんでしょうね。

――野枝に頼まれたら、「ああ、わかりました」みた

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究・後編)1:思い込みは何度も捨てていい

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究・後編)1:思い込みは何度も捨てていい

              野枝、一度自分を殺す

――先ほどの話でいえば、伊藤野枝さんはエネルギーのある顔をしてますね。表紙の写真はいつ頃のものですか?

栗原:これは二十歳くらいですかね。

――こんな言い方は何ですけど、*「足尾から来た女」みたいな感じで。ちょっとお百姓の娘さんみたいに見えますが、実はきれいな人ですよね。

栗原:きれいな写真もありますね。大杉と結婚した時は。

――そう、き

もっとみる
栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)前編・6

栗原康さん(政治学者、アナキズム研究)前編・6

アナルコ・サンディカリズム

――なるほど。それで米騒動を見て、そのあと*サンディカリズムという労働者蜂起というか。その後の大杉は労働者による闘いということを考えて、とりあえずそれがひとつの結論になった人ですよね。

栗原 そうですね。ただこれは結構大杉が死んじゃったあとに議論が分かれちゃったりするところではあるんですけど、難しいところで、「アナルコ・サンディカリズム」というのはちょっと微妙な考え

もっとみる