【連載小説】「愛の歌を君に」#4 殻を破る者、殻に籠もる者
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前回のお話:
10.<麗華>
年の瀬に古い友人と会った。三十年ぶりの対面。彼はいわゆる「仕事の鬼」で長らく孤高の人だったが、再会した彼は「家族」と呼びあう人に囲まれており、終始笑顔。もう、あたしの知る人物ではなくなっていた。
彼の、「鬼」と呼ばれるほどの冷え切った心を温め、感情を取り戻させたのは若い夫婦とその家族。彼に最も近い人物たちでさえ成し得なかったことをいとも簡単に成してしまった若夫婦たちは一見、どこにでもいる普通の家族だった。