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49-1.秋の研修会コレクション☆発達障害・トラウマ

特集:「発達障害とトラウマ」の理解と支援

下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.49-1

注目本「訳者」研修会

発達障害からニューロダイバーシティへ
−ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動−

【日時】2024年9月7日(土)9:00~12:00
【講師】花丘ちぐさ(国際メンタルフィットネス研究所 代表)

【注目本】『発達障害からニューロダイバーシティへ』(春秋社 花丘ちぐさ訳)
−ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動−
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365687.html

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=16tmXuQy4Wc
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=nougW6kApWE
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=jxKF9LZ46B4

花丘ちぐさ 先生

臨床心理iCommunity オンライン勉強会

「ロジャースとグロリアの面接から共感技能を学ぶ」事例検討会

【司会】下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
【ファシリテーター】三國牧子(九州産業大学准教授)
【日程】8月28日(水)19時〜21時

【参加条件】臨床心理iNEXTのiCommunityメンバーであること
【参加費】無料(iCommunityメンバーであれば、臨床心理iNEXTの有料会員/無料会員問わず誰でも無料)

【申込】8月22日まで下記より登録
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe6djhtt1iXZ4R4jtTRNQCOdECWMzqdZTfKA7x3T5x51gNw0g/viewform

【iCommunityメンバー登録方法】https://cpnext.pro/lp/icommunity/


1. メインテーマは「発達障害・トラウマ」の理解と支援

今年の秋の研修会は、「発達障害・トラウマ」の理解と支援をメインテーマとしました。そして、「発達障害」や「トラウマ」に対処する環境として現状のメンタルクリニックや公認心理師制度の問題を分析し、課題を明らかにする企画も併せて実施します。

9月から11月までの秋の研修会は、次のようなラインアップとなっています。なお、個々の研修会のタイトルは仮題です。今後、タイトルは修正される可能性があることはご了承ください。それぞれの研修会の詳しい内容については、後述します。

2024年秋のiNEXT研修会コレクション

◾️9月7日(土)9:00~12:00
「発達障害からニューロダイバーシティへ」

◾️9月22日(日)9:00~12:00
「ナラティブ・エクスポージャー・セラピーを学ぶ」

◾️9月28日(土)19:15~21:15
「公認心理師の養成制度は心理職の専門性の発展に役立つのか?」

◾️10月5日土曜9:00~12:00
「ソマティック・エクスペリエンシング入門」

◾️10月26日土曜9:00~12:00
「メンタルクリニックを巡る諸問題と心理職の課題」

◾️11月2日土曜9:00~12:00
「発達障がいとトラウマの理解と支援」

◾️11月23日土曜 9:00~12:00
「カモフラージュする女性発達障害の理解と支援」

尚、来年(2025年)の2月になりますが、下記の研修会も決定しています。

◾️2月9日「小児期の逆境体験と保護的体験」(講師:菅原ますみ)
◾️2月23日「トラウマインフォームドケア」(講師:野坂祐子)

【アンケート協力のお願い

臨床心理iNEXTでは、マガジン48-1号より、「事例検討会アンケート」を実施して参りました。
この度、より実りの多い研修会を開催するため、「研修会アンケート」も新しく開始いたします!

それぞれお答えいただいた方の中から、抽選で30名様(合計60名様)に、臨床心理iNEXTの研修会に無料で参加できるご案内をお送りいたします。ぜひご協力をお願いいたします!

当選した方にのみ、iNEXTからメールで個別にご連絡いたします。メールが来た方は、上記「2024年秋のiNEXT研修会コレクション」のうち、9/22~11/23に開催される6つの研修会の中から、参加希望の研修会を1つお選びください。iNEXTよりご希望の研修会のURL(オンデマンド配信用ですので、お好きなタイミングでご覧いただけます!)をお送りさせて頂きます。
尚、当選のメールは9/22の研修会の参加募集開始までに送付させていただきます。


2. 今、なぜ「発達障害・トラウマ」なのか?

今回のテーマとして「発達障害」と「トラウマ」を取り上げる理由は、診療報酬の改定で「心的外傷(トラウマ)に起因する症状を有する患者に対する心理支援」が公認心理師の「支援加算」になったことがあります。発達障害は、トラウマを受けやすいということがあります。発達障害とトラウマは重なり合うことが多くなっています。そこで、発達障害とトラウマを合わせて取り上げました。

しかし、「発達障害」と「トラウマ」に注目する理由は、それだけではありません。
むしろ、「発達障害」と「トラウマ」は、精神科や心療内科における診断の不安定性と深く関わっていることが、両者をテーマとして取り上げた主な理由となっています。心理職は、精神科や心療内科の患者様の心理支援を担当することが多くあります。そのような経験において患者様の治療経歴を追うと、診断の変更がしばしば生じていることに気づきます。また、複数の診断があり、何が主診断なのかわからないケースや「〜の疑い」と言った曖昧な記載しかされていないケースを経験することも少なくありません。

発達障害やトラウマでは自己組織化障害(Disturbance of Self-Organizadion:DSO)が生じ、環境との関連でさまざまな精神症状を引き起こします※)。ところが、現行の診断手続きでは、発達障害やトラウマの2次障害や3次障害を誤って原発の精神症状と診断しがちです。発達障害やトラウマの問題は、その人が置かれた環境の影響によって問題の現れ方が変化するので、それに伴って診断も変わることになってしまうのです。
※)https://note.com/inext/n/n6b6c8ab36593


3. 「発達障害・トラウマ」への対応は心理職の責任

私が参加した医療関連の学会で身体科医師が「精神科の診断はコロコロ変わることが多い。診断名がそんなに簡単に変わることは身体科ではありえない。それは医療として望ましいことではない」と疑問を呈していました。診断が不明確であるにも関わらず、薬物療法は積極的に行われることが多いのも事実です。むしろ、診断が変わったり曖昧であったりする患者さんに多剤大量投与がなされる傾向があるように思われます。

発達障害やトラウマを巡って精神科診断の誤りが多くなっているのは、一つには医師が一人の患者さんに割ける診療時間の短さがあります。発達障害やトラウマの問題は、精神科症状の背後にある生活状況や生活史を丁寧に聴き取る必要があります。しかし、今の医療にはその余裕がありません。5分診療では、とても把握できません。

それに加えて発達障害やトラウマのように問題がスペクトラムとして生じる事象については、現行の精神科診断のカテゴリー分類では把握できないという本質的な限界もあります※。医学モデルに基づく診断と治療では、発達障害やトラウマの問題の本質を理解し、支援するのが難しいのです。
※)https://note.com/inext/n/n32758b61b12a

そこで、臨床心理iNEXTでは、「発達障害・トラウマ」の問題は心理職が責任を持って対応しなければいけないテーマであると考え、以下にご案内する「秋の研修会コレクション」を企画しました。秋になれば夏の残暑もおさまり、学習には適した季節となります。ぜひ、多くの方の参加を期待しております。


4. 研修会「発達障害からニューロダイバーシティへ」

【日時】9月7日(土)9:00~12:00
【講師】花丘ちぐさ先生(国際メンタルフィットネス研究所 代表)

【参考書】『発達障害からニューロダイバーシティへ』
−ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動−(春秋社 花丘ちぐさ訳)
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365687.html

【概要】ニューロダイバーシティは、発達障害やトラウマのある子どもの問題行動について、ポリヴェーガル理論に基づき、神経多様性のパラダイムから捉え直し、社会情動的発達を促します。研修会では、その考え方と支援の方法を解説します。

ニューロダイバーシティでは、診断カテゴリーに分類する以前に、問題行動の根底にある問題の真の原因を探ります。問題行動は表に現れた氷山の一角であり、その真の原因は水面下の目に見えない神経科学的な個人差にあると考えます。むしろ、問題行動は、子どもが生き抜くための「適応的な反応」と見ることができます。その問題行動に対しては、それをどのように取り除くかではなく、それがその子について何を物語っているのかを神経的多様性(ニューロダイバーシティ)の観点から理解します。そして、それぞれの子どもの神経系に合わせた安全の合図を与え、社会交流行動が生まれるように支援します。


5. 研修会「ナラティブ・エクスポージャー・セラピーを学ぶ」

【日時】9月22日(日)9:00~12:00
【講師】森茂起先生(甲南大学名誉教授)
【注目新刊書】『ナラティブ・エクスポージャー・セラピー(第2版)』
−人生史を語るトラウマ治療−(金剛出版 森茂起・森年恵訳)
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b620076.html

【概要】ナラティヴ・エクスポージャー・セラピー(NET)は、PTSDを抱える難民治療のために考案された短期療法ですが、その後一般の医療現場などの広い臨床場面でみられる虐待や暴力に起因するPTSDへと対象範囲を拡大させながら洗練されてきています。研修会では、記憶理論をベースとして、PTSDやトラウマについて科学的な理解に基づき、その人の人生の物語を辿り、失われた人生史の統合を可能とするナラティヴ・エクスポージャー・セラピーの理論と方法を解説します。

複雑性PTSDへの関心が高まっている近年では、長期にわたって多数のトラウマ的出来事を経験している人に対して効果的な支援を提供できるナラティヴ・エクスポージャー・セラピーが注目されています。子ども版も存在し、対象年齢が広いことも特徴です。短期間で十分な研修を受ければ実施可能なことから、児童福祉領域や医療領域で虐待、暴力、事故、自然災害などの被害やトラウマ的喪失を体験した方々へ適用されることが期待できます。


6.  討論会「公認心理師の養成制度は心理職の専門性の発展に役立つのか?」

【日時】9月28日(土)19:15~21:15
【主催】日本心理臨床学会第43回大会(自主シンポジウム)
【講師】野島一彦・三國牧子・舘野一宏・米岡妙子・下山晴彦
【注目新刊書】『心理職は「ときめき」を取り戻せるか』
−臨床心理学の専門性を基軸として−(東京大学出版会 下山晴彦著)
https://www.utp.or.jp/book/b10081059.html

【概要】公認心理師は、心理職の資格の一つであり、心理職=公認心理師ではありません。心理職の専門性は、公認心理師とは独立して存在するものです。しかし、公認心理師は、国家資格であり、心理職養成の内容と方法を規定し、それを強制する権力を有しており、その影響力は絶大です。そのため、心理職は、公認心理師制度に単純に従うだけでなく、専門性の発展の観点から、その目標や指示について評価をし、意見を出していく必要があります。

公認心理師制度は、医学モデルの影響を強く受けています。そのため、発達障害やトラウマなど、医学モデルでは適切に対応できない問題については、心理職の専門性の教育と実践が必要となります。もし、公認心理師制度のあり方が心理職の専門性の発展に資するものでない場合にはその問題点を指摘することが求められます。そこで、シンポジウムでは、公認心理師制度の課題を明らかにし、今後の心理職の発展に向けて何が必要なのかを議論することを目的とします。


7.  研修会「ソマティック・エクスペリエンシング入門」

【日時】10月5日土曜9:00~12:00
【講師】花丘ちぐさ先生(国際メンタルフィットネス研究所 代表)
【注目新刊書】『ソマティック・エクスペリエンシング入門 』
−トラウマを癒す内なる力を呼び覚ます−(春秋社 花丘ちぐさ訳)
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365724.html

【概要】戦争や災害、事件・事故などの衝撃的な体験だけでなく、一見なんでもないような出来事であってもトラウマとなります。そのトラウマは身体に痕跡を残し、心身に影響を与え続けます。そこで、身体感覚への気づきを高め、身体に閉じ込められた過去=トラウマのエネルギーを解放するトラウマ療法である「ソマティック・エクスペリエンシング」について解説します。

ほとんどのトラウマ療法は、対話を通して心にアプローチし、また薬物療法で心の断片に影響を与えようとします。しかし、トラウマは、身体がどのような影響を受けているのかを理解しない限り、完全に癒やされることはありません。そこで、身体が果たす本質的な役割を理解し、身体の持つ素晴らしい原初的で知的なエネルギーを活用してトラウマの破壊的な力を克服する方法の基本を学びます。


8.  研修会「メンタルクリニックを巡る諸問題と心理職の課題」

【日時】10月26日土曜9:00~12:00
【講師】櫛原克哉先生(東京通信大学講師)
【指定討論】下山晴彦(跡見学園女子大学/臨床心理iNEXT代表)
【参考書】『メンタルクリニックの社会学』
−雑居する精神医療とこころを診てもらう人々−(青土社 櫛原克哉著)
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3702

【概略】1990年代以降、都市部を中心にメンタルクリニック(精神科や心療内科)が急増しました。心身の不調から日常的な悩みまで「メンタル」を巡るさまざまな問題が持ち込まれ、診断や治療がなされ、患者はメンタルクリニックへの接近と離反を繰り返します。「メンタルクリニックの社会学」(青土社)では、患者とクリニックスタッフへのインタビューを通して「治る」と「治らない」の間で揺れる患者の現実を社会学的視点から描き出しています。

そこには、まさに発達障害やトラウマに由来する「生きづらさ」を抱える人々の支援を巡るメンタルヘルスの問題が凝縮されています。研修会では、前半で同書の著者が「メンタルクリニックを巡る諸問題」を解説し、それを受けて臨床心理iNEXT代表の下山が「心理職はそのような問題をどのように理解し、どのようにしていくのが良いのか」という観点から課題を提起し、参加者を交えてのデイスカッションを行います。


9.  研修会「発達障がいとトラウマの理解と支援」

【日時】11月2日土曜9:00~12:00
【講師】小野真樹先生(愛知県医療療育総合センター中央病院部長)
【参考書】『発達障がいとトラウマ』
−理解してつながることから始める支援―(金子書房 小野真樹著)
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b583268.html

【概略】発達障がいがあれば、子育てが難しくなり、保護者は対応に苦慮し、厳しい躾や暴力で対処して虐待も起きやすくなります。一方で虐待を受けた子どもは、愛着(アタッチメント)不全やトラウマ反応によって発達障がいと類似する臨床像を示すことが生じます。さらに発達障害や虐待は世代間で連鎖して生じることも多くあります。したがって、子どもの支援においては、「発達障がい」と「トラウマ」が重なり合う、複雑な関係を考慮しておく必要があります。

研修会では、当事者が抱えている「困りごと」について、神経生物学的知見も含めてその背景を踏まえて発達障がいとトラウマが複雑に相互作用するメカニズムを解説します。そのような理解を共有することで、さまざまな立場の支援者がつながり、連携することが可能となります。支援においては、普通の日常生活で誰にでもできる「治療的関わり」を解説します。支援の効果は、生活と結びついた体験から生み出されるからです。特に日常における人とのつながりの支援が重要となります。


10.  研修会「カモフラージュする女性発達障害の理解と支援」

【日時】11月23日土曜 9:00~12:00
【講師】木谷秀勝先生・川上ちひろ先生
【注目新刊書】
『続・発達障害のある女の子・女性の支援 』
−自分らしさとカモフラージュの狭間を生きる−(金子書房 川上ちひろ・木谷秀勝編)
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b608786.html

【概略】近年、「ASDのカモフラージュ」が注目を集めるようになっています。特にASDをはじめとする発達障害のある女子では、外面的に普通の人の振りをするカモフラージュの問題を抱えている場合が多くなっています。カモフラージュをすればするほど、自分本来の姿を隠すことになります。その結果、<内側の世界の私>と<外側の世界の私>の狭間で葛藤が強くなり、自己肯定感だけでなく、生活の質も低下することが生じます。

男性よりも女性の発達障害の方が周囲との関係性を希求し、「普通のような」振りをする傾向が強く、発達障害であることが見逃されやすくなります。そのため、発達障害を抱えながら生活するスキル獲得の機会を得られずに、思春期や青年期になって精神症状を呈するリスクが高くなります。このような女性発達障害の特徴を理解し、彼女たちが「自分らしく生きる」のを支援する視点を解説します。

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)


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臨床心理マガジン iNEXT 第49号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.49-1
◇編集長・発行人:下山晴彦


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