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ミナトシリーズ

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地上種、惑星種、天使たち。ミナトが住んでいる不思議な世界の日々を短編、掌編、詩で。(主人公ミナトは名前と自称「ぼく」以外、性別も年齢も不明です。読み手が考える人数分のミナトが存在…
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2020年5月の記事一覧

キンギョとり

 夏の強い日射しの下。通りを歩いていると、突然脇道から子供たちが飛び出した。わいわいにぎやかに、それぞれ虫取り網とビニール袋を持って、ミナトを追い抜いていく。
「まってえ」
 ちょっと遅れて、腰のあたりにひとりぶつかった。ビニール袋を握りしめた小さな男の子だ。ミナトを邪魔そうに押しのけるが、ふたり同方向によけるため、なかなか進めない。
 ミナトは右に左によけながら尋ねた。
「どこに行くの?」
「キ

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しろい森

木も草も鳥も虫も白く、夜も来ない
‘しろい森’のまんなかで
ミナトは同行者と上を見上げた
そろそろだね
はじまったかな
隣に立つ賢者シャスはうなずいた

しろい森は祝福の森
葉ずれの音が
さまざまな色の 音の雨になる
かるく おもく ふかく ひびく

鈴のような
笛のような
鼓のような
鳥のような
虫のような
声のような

さまざまな音が重なる
その和音 和音 和音

音が重なると
音の色がうまれ

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旅立ち

 雲の断崖から下を見おろすと、数時間前まで歩いていた緑のジオラマが広がっていた。
 七夕(しちゆう)は何度目かの確認を、旅の相棒にする。
「いいんだな、織姫?」
 相棒は返事のかわりに虹色のヒレを大きくそよがせた。
 空を泳ぐ魚、リューグーノツカイ。虹色にかがやく全長十メートルの長い身体と長いヒレを持ち、空を泳ぐ姿はオーロラのようだ。滅多に姿を見せない稀少な魚で、今は縁あって七夕のかたわらにいる。

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サクラ前線、走る。

 そのサクラに出会ったのはコントル河の中州だった。コントル河は広くて浅い河だ。水も澄み流れもおだやかで、夏となれば水遊びの地上種でいっぱいになる。
 しかし今年のコントル河は、まだ肌寒い時期だというのに地上種でいっぱいだった。それも水遊びではない。全員「サクラ前線」である。中州を陣取る大木を囲むように、誰もがめいめいのスタイルで一本の大木を見つめているのが証だ。
 サクラは樹齢二十年も超えると自走

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サクラのうた

 さくらの写真展を見に行った。大小あるパネルの薄紅色はどれも見事で、ミナトはすっかり目を奪われた。
 とくに目を引いたのは、一番おおきなパネルだった。日が射す谷間で咲き誇る大木が悠然と立っている写真。暗がりのなかで薄紅色はとても映え、谷いっぱいに広がった花に圧巻された。小振りのさくらの樹は見ても、大木はなかなか見ることはできない。
 しばらく見入ったあと、感嘆混じりにつぶやく。
「なんていうさくら

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語る道

10月の新月の夜にだけ 
終わらない道がある 
 
どこまでも続く土は 
踏みならされた独特の固さをもち 
草原をさわさわと渡る風と 
ひんやりした星の明かりにつつまれている 
 
その夜はいつしか‘語りみちの夜’と呼ばれ 
夜を徹して語りたい者が自然と集まり 
満足いくまで道すがら話す場所になる 
 
友と語り合う者 
うしなった想いをこぼす者 
過去を熱弁する者 
 
その中で 
肩を並べた語

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灼熱夏ーー逃げ水

 その日は特に暑かった。草原の中をどこまでものびるコンクリは焼けつき、容赦なく熱を照り返してくる。立ちのぼる陽炎で景色はゆがみ、逃げ水が現れては地面に染みていった。絶妙なタイミングで逃げる水が、まるで喉の乾きを見透かしているように思えて、舌打ちする。手を伸ばしても絶対にさわらせようとしない。 
 踏みだした足が水音を立てた。 
 見ると、肩幅くらいの逃げ水がいた。足底から逃げようともがいている。暑

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