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よろしく愛して

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実りがない人生ならば、 長期展望にどんな意味があるのでしょうか。 どんな時でも、しょうがない人でありたい、 そんなしょうがない人を愛していたい。
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#旅

僕の旅の流儀

僕の旅の流儀

一人旅の中でふと、孤独を感じる瞬間がある。それは大抵、陽が沈む頃。昼間はするべきことがあるけれど、あたりが暗くなると、急に手持無沙汰になり、疲労感を覚え始めるからだ。

しかし、それすら忘れるほどの致景と出会えることが、稀にある。

マルタ島に一人滞在した。観光を終え、広場で休み周囲を眺めていたら、カップルばかりで急に寂しくなった。宿に戻ろうと思ったが、橙色に染まり始める街に誘われ、もう少し散策す

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旅について

旅について

先日、僕が敬愛する沢木耕太郎さんがテレビ出演していた。もちろん見た。沢木さんの人柄がわかる、良い番組だったと思う。

予想通り、旅のバイブルとも言われる「深夜特急」のお話が出た。1970年代、インドのデリーからイギリスのロンドンまでバスを乗り継いで渡ることができるか、という無謀な賭けに臨んだ沢木青年の実録だ。

「どうしてそんな旅に出たのか」という質問になると、沢木さんは手を口に当て、少し考えこん

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西瓜と渓の朝

頭がぼんやりしていたので、気晴らしに散歩に出た。大学近くの椿山荘から江戸川橋の方へ向かい、茗荷谷辺りに着くと奇妙な看板が目に留まった。

『ワンルームマンション建設反対!~町の環境を守ろう』

茗荷谷と言えば高級住宅街である。現代的な洒落た建物ばかりで、中々都内ではみることのない風景の中、例の看板がぽつんと立っていたのだ。

僕は、どうして反対なのだろう、と思った。マンションだからいけないのか?そ

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僕が旅に出る理由は

僕が旅に出る理由は

都市を離れ、西へ、西へと向かった。
長い間電車に揺られながら、変わりゆく景色を眺め、ふと随分遠くに来たことを実感した。
それと同時に、自分が今までに失くしてきた物や人を想った。

知らない町に降りると、人がまばらになる。
彼らは散り散りになり、それぞれの場所に向かう。

地元の人間が好みそうな居酒屋に入る。
寡黙な店主と些細な会話を交わし、店内を舐めるように見回した後、生ぬるくなり始めたビールを飲

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旅と人生は似ているか

ずいぶん遠くまで来てしまった気がする。

中国地方の奥、懇意にしていた女の子の家に泊めていただいた。帰りが本当に寂しくて、この景色を、この部屋の色を、この人の肌の温度を、忘れたくないと車窓から月が水面に映る様子を観ながら考えていたが、これが旅の魔力なのかもしれない。

旅と人生は似ている、と誰かが言っていた。

果たして本当だろうか?

僕の過ごしたこの一日は、山のような曲線を辿って気持ちの高ぶり

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