旅と人生は似ているか
ずいぶん遠くまで来てしまった気がする。
中国地方の奥、懇意にしていた女の子の家に泊めていただいた。帰りが本当に寂しくて、この景色を、この部屋の色を、この人の肌の温度を、忘れたくないと車窓から月が水面に映る様子を観ながら考えていたが、これが旅の魔力なのかもしれない。
旅と人生は似ている、と誰かが言っていた。
果たして本当だろうか?
僕の過ごしたこの一日は、山のような曲線を辿って気持ちの高ぶりを与えた。どのシーンを切り取っても、甘美で、そして切ない雰囲気を漂わせていた。なるほど、これを人生と呼ぶにはいささか都合が良すぎるかもしれない。
ただそれでも、出会いと別れを体験したこの一日は、胸を熱くするような気持の高ぶり、胸を締め付けるような旅の記憶は、少なくとも僕の中でかけがえのない人生の一部であった。
随分と遠くまで来てしまった。それは距離だけでなく、身も心もである。様々な地を転々とするたびに、かつての安定を一つ一つ失っていき、もう後戻りできないような気持になる。
それが今は、恐ろしい。
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