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よろしく愛して

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実りがない人生ならば、 長期展望にどんな意味があるのでしょうか。 どんな時でも、しょうがない人でありたい、 そんなしょうがない人を愛していたい。
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#大学

僕だって、ドクター・マーチンが履きたかった

僕だって、ドクター・マーチンが履きたかった

僕だって、ドクター・マーチンが履きたかった。

カジュアルかつスマートなデザインの、正直格好いいヤツ。ソールも高く、履けば立ち姿がなかなか様になるヤツ。そんなマーチンが履きたかった。

でも、履けない。みんなが履いているからだ。ドクター・マーチンを履いて街を歩けば、人は僕のことを「ドクター・マーチンを履いている人のなかの1人」として認識するだろう。それが堪らなく嫌だった。

履きたいものを履けば良

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東京、大学、魔法

東京、大学、魔法

僕は4年前に東京に出てきた。それまで田舎の浪人生だった僕は、上京したての頃、この大都会に突然、ぽん、と投げ出されたかのような心細さを抱えていた。地に足がつかないまま日々を慌ただしく過ごし、自分がどこにもいないような、そんな寂しさの中にいた。

あの頃、大学の同級生たちは、誰もが必死に自分の居場所を探していたのかもしれない。とにかく皆、どれだけ大学生活を楽しめるかに固執していた。あたりまえだ。それが

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23歳の地図

23歳の地図

23歳になった。東京に出てきて4年が経った。

1年大学進学に遅れた僕は、この年で学生生活を終える。この街に出てくれば何かが変わると思っていた、というセリフを大学4年間で何度吐いたか知れない。

23歳になれば、ちゃんと朝ご飯を食べられると思っていた。もしくは、だれかとちゃんと朝を過ごしていると思っていた。相変わらず朝に弱いし、珈琲マシンを購入する勇気は出なかった。

23歳になれば、ちゃんとした

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愛をもらった日

愛をもらった日

「愛」と僕は答えた。

それは普段行き会うことができない友人からの「今から訪ねるけど何か欲しいか」という連絡に対してだ。

大学一年生の頃から付き合いのある彼は、演劇の道で食っていくと言い残し、大学4年生で早稲田大学を去った。その頃から、彼とは多忙につき中々会うことができなくなっていった。そんな矢先のことだ。

特に欲しいものは無く、どうせ彼は万年金欠なのだからろくなものは期待できなかったために吐

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