営業マインド&スキルエンパワーメントストラテジー#04 ソリューションで解決する主体が間違ってないか?
「横文字使う人、どうも生理的にダメで」
わかる。
なにかとヨコ文字が出る人、うさん臭く見てしまいがちだ。
そんなヨコ文字トークな人だらけの会合に同席したことがある。
むしろ、勉強になった。「ああ、うまい人は何でもかんでもヨコ文字にせず、『ポイントなんだけど抽象的に位置づけておく言葉』をヨコ文字にしてるな」と。
その代表格が「ソリューション」だ。
さて、ソリューションは日本語で直訳で「解決」「解答」、つまり、「解」である。
「解」は数学で言うと、「たった一つの答」である。
いくつも答がある問題ではなく、「一つの問題」に対して「答は一つしかない」ことなのである。
ビジネスで「ソリューション」というと、
「顧客の課題を解決する商材(モノ・サービス)」ということになる。
ある課題があったとしよう。するとその課題を解決できると謳う様々なソリューションがあふれている。
経理業務を効率化したい、となれば、その一言でさまざまな「会計支援アプリ」が検索にヒットする。
選ぶのは課題を持ったクライアント、ということになるので、複数社から提案をもらい、コンペなのか、見積競争、ということになる。
各社は「わが社のソリューションは御社のアタマを悩ませている課題を解決します!」ということになる。
言葉尻をあげつらうわけではないが、いつのまにか
「ソリューション=商材(モノ・サービス)」になってしまっているのだ。
各社のうたい文句をヨコ文字だけにすると、
「クライアント様のプロブレムをわが社のソリューションがソリューションします!」
ということになる。
つなわち、いつのまにかソリューションが「軽く」なったのである。
「たった一つの解」というより、「解に導く選択肢の一つの方法」ということになる。
言葉遊びみたいになってしまったが、今、ソリューションをきちんととらえているのか?という問題提起にしたかったから、こういう論法をとってみたまでだ。
さて、ここで営業人がきちんと認識しておかないといけないのは、
「このソリューションはクライアントにとって「唯一無二の解」なのか?」と問い続けるマインドである。
営業人は必ず「商材」という武器を携えて前線に赴く。
その商材がクライアントのある課題にとって「解」であれば、これは採用しない手はない。
なぜなら、「解」だからだ。それ以外のサービスを選んでしまうと「解」ではないのだから。
ただ、企業が持つさまざまな「課題」はさまざまな条件が付いてくる。
なのでわが社のソリューションが「解にもっとも近い」というケースのほうが多いことになる。
解に至るにあたり、ハードルがあるのが普通だろう。
コストであったり、人的リソースであったり、と様々だ。
そこで、そのソリューションはハードルを越えるべくチューニングされていく。
ここで、いつの間にか「ソリューションのためのチューニング」ではなく、
「受注・導入のためのチューニング」に陥ってしまうことが起こりうる。
こうなると、結果、解に到達しなくなる、という矛盾が起こる。
この矛盾、多くの営業人が実際に経験していると思う。
「こないださぁ、ウチのソリューションを導入してくれたクライアントが、ウチのソリューションでカバーできない範囲を別のソリューション導入でカバーするって言って、導入したらしいけど、『結局何をソリューションしてるの?』って社長が言ったらしく、両方ともサービスを中止にしたらしいぜ」
なんて会話、ありそうである。
なぜこういうことが起こるか、というと、きちんと「ソリューションの主体」を認識できなくなるからだ。
理想ではあるが、再三言うように「ソリューション=解」である。
だが、「ソリューション=商材」としてしまうと、自社目線に陥ってしまう。
自社目線に陥ると、
「このソリューションがこういう課題を解決してくれる」となってしまい、自社商材が主語で課題をハメ込みにかかるのだ。
そうすると、クライアントの課題は「こういう課題でしょ」と決めつけが起こり、結果、クライアントにとっての真の「解」にたどり着かぬままになる。
営業人が目標数字のために商材の受注を最優先にしてしまうのは当然だ。
しかし、商材主体の課題解決は「商材ができること」を解決するだけで、結局クライアントのためにならない、という結末を迎えてしまうことが往々にしてあるのだ。
何度も言うように、この「解」はクライアントにとっての「解」でないといけない。
そう、結局はクライアント目線での解の導出をすることを決しておろそかにしてはいけないのだ。
ある企業の役員が、自社のサービス拡販に向けて、営業支援をお願いすることになった業者と打ち合わせしている時のことだ。
業者側の社長は、
「御社が今ターゲットにしている業界の喫緊の課題はなんですか?」と問うたところ、
役員は、「自社のサービスが解決できる業界の課題」を答えていた。
これは、その役員がまさに落とし穴にはまった状態なのだ。
自社のサービス=ソリューション、なので、そのソリューションを売りたいから、そのソリューション主体で課題を見ようとしているのだ。
本来のクライアント目線で考えれば、ターゲットの業界課題のなかでも先決なもの、は自社とは一見関係ないようなものかもしれない。
しかし、その課題を因数分解していくことで、自社のソリューションがはまり込むところを見つけることができるのである。
まさに「解」の本当の導き方、なのだ。
問題があって解がある。
解から問題を作ると自分に都合の良い問題にしかならないのだ。
これまでの節はマインドについての話が多かったので、次回はスキル寄りの話にしてみよう。
プレゼンテーションについて考えてみたい。