ざわわ サトウキビ畑の思い出〜子どもの日に寄せて〜
立ちどまってふと考え込むような川柳に出会ったので紹介します。
寝る前に歯をみがく子は死にやすし 天根夢草
作家で川柳批評家でもある田辺聖子は「何ともえたいの知れぬ恐怖というか、ブラックユーモアみたいなものがあり、ある人はこれを不吉、忌まわしいというが、私にはおもしろいのだ。」「だいたい、親のいうとおりにする、素直な子供は、神サマにも愛されて夭折しやすいものである。」と評しています。(田辺聖子『川柳でんでん太鼓』講談社32−33頁より引用。)
この評は納得できます。
私は幼少期、沖縄の農村に近い所で育ちました。沖縄はサトウキビが主産物であり、これの収穫時期は12月から2月にかけての冬場になります。
サトウキビが収穫された畑は必ず、取り残されたサトウキビがいくつかあり、少年だった私達はこのサトウキビを見つけ夢中になって噛じりました。
沖縄版の「落ち穂拾い」だったのです。
サトウキビの食べ方は豪快でした。どの子も見つけたサトウキビの茎を自分の歯で皮を剥き、その甘い汁を吸っていたのです。サトウキビを噛じる子の歯ぐきは桃色で美しかったことを覚えています。
戦後の貧しい時代っだったので、歯みがきをしている子は少なかったように思います。
現代は、子どもの数も少なく、しかも早い時期から甘い物にも事欠かず、幼い頃から虫歯ができやすく歯医者を繁盛させているようです。
そのために歯みがきが励行され、これをせっせと実行するような素直な子が夭折しやすいと、上記の川柳は私たちに教えてくれているのです。
現代のよい子、素直な子を見ていると、小さな大人という感じがします。未来を担うこの子達の行く末が心配になります。
キビ噛じる餓鬼の歯茎の美しき(川柳)
サトウキビ知らぬ都会の少年にキビ噛むことを説くは難し(短歌)