桜との出会いそして別れ
桜(ソメイヨシノ)との」出会い
防風林の残る美しい地域に暮らすことになり、私自身も周辺に調和するように敷地に植樹を始めました。
手始めに地域の造園業者から桜(ソメイヨシノ)の若樹(樹齢10年くらい)を購入、敷地の南側に移植してもらいました。
桜なんて、公園や学校の校庭で見るものとばかり思っていたのに、その桜が我が庭に忽然と姿を現したのですから驚きです。
桜が我が庭に来てからは、あまりの嬉しさに朝夕桜の幹を撫でて喜びに浸っておりました。
桜の四季
敷地の南側に植えられた桜は、四方(よも)の日を一人占めしてスクスク成長し、10年程で見事な成木になりました。
春にはいうまでもなく美しい花を咲かせ、私や私の家族を楽しませてくれました。桜の樹と暮らしてわかったのですが、桜は開花の後も色々と見る人の目を楽しませてくれます。
まずは桜蕊(さくらしべ)です。桜は開花後に花より赤い桜蕊を一斉に庭に降らせます。まるで庭は赤いじゅうたんを敷き詰めたようになります。
桜蕊の後に、紫色の桜の実が降ってきますが、押しつぶすとおいしそうな紫色の果汁が出てきますが、舐めてもうまくありません。
こんなところが、私の目に写った桜の春の光景です。
桜の見どころは、春だけでなく他の季節にもあります。
まず夏ですが、なんといってもこの時期はうっそうと繁った葉を繁らせ、歳時記では「葉桜」と呼んでおります。
葉桜が庭一面に陰を作って、涼を与えてくれます。涼を求めてくるかの如く蝉も夏中桜の樹で鳴いてくれます。
次に秋ですが、桜ももちろん紅葉します。「早熟は早く老いる」という諺がありますが、桜も芽吹きが早いので落葉も滅法早いのです。
桜の落ち葉は赤と黄色が入り交じって、よく見ればじわっとした美しさを見せてくれ、本の栞にしたりしました。
冬の桜は、雪とのコントラストが抜群です。積雪の朝、陽が昇る前の桜の葉のない枝に残った雪景色はえもいわれぬ美しさです。
花見の宴
見事に咲いた桜を皆に披露したくて、桜の開花の時期に友人らを招いて花見の宴を催してきました。
花見の宴のビール、酒、団子、オードブルは亭主の私が準備するのですが、足りない分は参加する友人らが差し入れてくれるのです。
馳せ参じた友人らは、桜の花はそっちのけで談論風発に興ずるのです。
花見の宴は午前11時に始まり、午後4時にはお開きですが、お開き後に残った友人らで二次会が始まりますが、二次会は暗くなるまで続きます。
こんな花見の宴がついこの間まで続いておりましたが、思わぬことで開催ができなくなってしまいました。
桜とのお別れ
今から3年ほど前に樹齢50年になんなんとする我が家の桜を切り倒しました。
まったく想定外の出来事ですが、桜の樹に「クビアカツヤカミキリ」という特定外来生物が発生し、これに桜の幹や枝が食い荒らされ、とうとうこの大木を切り倒すことになってしまいました。
切り倒した切り株を見たところ、幹の半分位が空洞になっており、改めて「クビアカツヤカミキリ」の威力に驚かされました。
このような顛末で、10年余り続いてきた我が家の春の風物詩であった庭の桜の宴は、残念ながら閉店となってしまいました。
桜守りは大変
桜の四季花見の宴のことを縷々述べてきましたが、実は桜の世話をする「桜守り」になるのも大変です。
まずは虫対策で、「アメリカシロヒトリ」の発生を防ぐため、樹の消毒があります。器具がないので、専門の方に消毒を頼んでいました。
桜守りの私の任務は、春は散った花びら、しべ、そして桜の実の片づけです。はいても掃いても毎日降ってくるのですから大変です。
秋は散る落ち葉の片づけです。落ち葉は8月頃から冬の入り口の時期まで履き続けるからこれも大変です。
落ち葉の最後の頃は、O・ヘンリーの短編『最後の一葉』を思い出しながら掃き掃除をしたことを、今では懐かしく思い出します。
新しい花見を
我が庭には、桜以外に花水木、梅、槿(むくげ)等ととりどりの木が植えられていますが、桜に代わる「人寄せパンダ」がなくて困っています。
前から植えてあった牡丹や芍薬を庭の真ん中に植え替え、増やしたしりて小規模ながら「牡丹・芍薬園」にして、これで再び「新・花見の園」をと考えております。
桜樹にビール飲ませる桜守(川柳)
切り株にありし日しのぶ桜かな(俳句)
ああ桜あといくたびの出会いかな(俳句)
花散らす鳥には鳥の生活(たつき)かな(俳句)
桜蕊(しべ)褪せた煉瓦と紅談義(俳句)
咲く花がきれいきれいに見えるのは君の心がクリーンだから(短歌)
写真はかつての我が家の桜です。
●参考資料:埼玉県HP「クビアカツヤカミキリ注意喚起リーフレット」