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「ビジネス x リベラルアーツ」の可能性を探る

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哲学、歴史にアートに文学(そして文化人類学!)。ビジネスとは関係がなさそうなリベラルアーツの知識を、日々の仕事に活かすための視点や方法について考えていきます。
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記事一覧

コーチング・1on1での共感のキモは、「共感なんて簡単にできるわけがないのだ」という心がまえである!?

コーチング研修などの場で、「共感なんてそう簡単にできるわけないんですよね」と言うと、「え、お前の立場でそんなこと言っていいの?」的な重苦しい空気が流れることがあります。 相手に共感することはぜったいにムリ、といってるわけではないし、「そうそう」「分かる、分かる」「だよね」とか言いながら話を聞けば共感できるわけじゃないことは明らかだから、何にビックリされるのかがよく分かりません。 そういうときに、「こういうわけだから」とうまく説明してくれる記事を見つけました。 さらに、そ

「何であるか」を知ることと「どのように知るか」を知ること 〜 組織マネジメントと2つの暗黙知

グロービスで今年から「マネジメントに役立てるリベラルアーツ」というクラスを開講しました。哲学や歴史、文学に音楽、認知心理学に文化人類学に社会学といった、いわゆる大学の「教養科目」をマネジメントにどう活かしていくのかを考える全4回構成のクラスです。 1月はじまり、7月はじまりの2期がすでに終了、現在は10月期のクラスが進行している状況ですが、このタイミングでこれまでに印象に残ったことばや出来事を振りかえっておこうと思います。 1月期のクラスの受講者にはガチリベ(私の勝手な造

テクノロジーのこれからを考えるカギは、過去に目を向けること!?

(この記事は、問いを投げかけたまま答えを示さずに終わる、たいそう無責任な内容です) テクノロジーのこれからがどんな方向に向かうのか? 今後どのようなテクノロジーが登場し、私たちの生活をどう変えるのか? その過程で産業の構造が、そして私たちの仕事がどのように変化するのか? テクノロジーのこれからについては、日々、新たな議論が巻き起こっています。しかしその議論は、なかなか一つの方向に収斂することがありません。 「これから」という未来を想像しようとしても、なかなか方向性をしぼ

「感情の生き物」としての人の生態が、組織マネジメントにどのような「客観的」影響を与えるのか?

人は感情の生き物だ。 そういう話をよく聞きます。しかし、人は感情の生き物だから、どのようなメカニズム・プロセスで何をどう感じ、どのような行動をするのか、とつづくことはほとんどありません。だから、そうした考え方や行動が他の人間にどのような影響を与え、集団の「現実」がどう変わるのか、という話になることもありません。 「まあ、いろいろとむずかしいよね」で話が済む分には問題ありませんが、これがマネジメントとなれば、そんな風にフワッとしたままでいるわけにもいかない。 人は感情の生

「だって人間だもの」のマネジメント論 〜 リベラルアーツをマネジメントに役立てる視点

(この記事も、以前に書いた「思考のプロセスに目を向けるためのエクササイズ 〜 「批判的」に読むために必要なことは?」と同様に、エクササイズを念頭に置いて書いたものです。なので、記事の最後の問いに対する答えはここには書かれていません) ビジネスケースを読んでいると、「この事態にどう対応するかが大事なんだよな」と思える状況がサクッと素通りされていて、ものすごく肩透かしをくらうことがあります。 たとえば構造改革の一環として、長年にわたって付き合いのある小売店の整理・合理化に大ナ

思考のプロセスに目を向けるためのエクササイズ 〜 「批判的」に読むために必要なことは?

以前の記事にこんなことを書きました。 哲学書を読むときは、そこに「何が書かれているか」(コンテンツ)ではなく、そこで思考が「どのように積み重ねられているか」(プロセス)に目を向けることが大事。 ところが、映画やドラマの副音声解説の「この場面、編集をものすごく工夫しているんですよ」みたいな説明は、哲学書(哲学書にかぎった話でもありませんが)のどこにも書かれていません。 そのため、何に目を向け、どのように問いを立てているのか? その問いへの答えをどうやって見つけているのか?

リベラルアーツ(哲学)をビジネス・マネジメントに役立てるカギは、コンテンツではなくプロセスに目を向けること

ものすごくひさしぶりのnote記事。 これまでいろいろと考えてきたことが、すこしずつ形になりつつあるので、そのあたりの話をすこし書いてみようと思います。 考えてきたことというのは、リベラルアーツの知識をマネジメントに役立てる方法について。たとえば哲学に歴史、文学にアート、社会学に文化人類学といった、大学の教養課程で学ぶのがリベラルアーツ科目です。 これ、一見するとビジネスやマネジメントとはまるきりかけ離れた知識のように思えますよね。ここで大事になる視点の1つが、リベラル

「とりあえず何かする」を支援するためのコンピテンシー評価

前回の記事でこんなことを書きました。 新たな価値を生み出すには何をすればいいかというと、「話は簡単。何していいのか分からないなら、まずは何をすればいいのかのヒントを探せばいい」 「何していいか分からないときには、できることを「何かやる」ことで、皆目見当がつかない状況を脱する(きっかけを得る)」ことが肝心なのだ。 本当のことをいうと、じつはちょっと(かなり?)話を盛ってました。話はそこまで簡単じゃない。 なぜかというと、「新たな価値を生み出す」という目標を達成すべく、と

目標管理に役立てるデザイン思考!? 〜 何していいか分からないときに何をすべきか?

目標管理とデザイン思考は、まるっきり別の目的のための、ぜんぜん異なるプロセスのように思われているので、デザイン思考を目標管理に役立てるというと、「何を言ってるんだ!」という声が聞こえてきそうです。 もちろん目標管理の考え方とデザイン思考が同じものだということではなく、ある種の状況では、デザイン思考の考え方を目標管理に重ね合わせると、いろいろと役立つことがあるよ、という話です。 では、「ある種の状況」って、どんな状況なのか? それは、たとえば全社目標に「新たな価値を創造す

なぜビジョンは浸透しないのか?〜組織の「見えない壁」を乗り越える

「各部門から代表を集めた合宿までやったのに、そこで決めたビジョンがなかなか浸透しなくて…」という嘆きの声を耳にすることがあります。 しかし、よくよく話を聞くと、とくに決めたビジョンをどのように浸透させようとしているのかについてじっくり耳を傾けてみると、それでは浸透するわけがないことに気づいていないから、と思えることがあります。 なぜビジョンは浸透しないのか? 組織には性格が大きく異なる2つの側面があり、そこから生まれてくる「見えない壁」を乗り越えるための努力をしなければ

組織文化の神も細部に宿る 〜 組織文化を変えるためにリーダー・マネジャーに求められる意識と行動とは?

組織文化って厄介な言葉です。 「新たな組織文化をつくる」とか、「組織文化を変える」とか、ビジネスやマネジメントのいろんな場面で使われるわりには、じゃあいったい何なんだとなると、とたんに話がボンヤリする。 いわくいいがく、なかなか変わらないものなので、これをイチからつくったり、変えたりするためには、何か特別な取り組みが必要。 そう考えられがちな文化ですが、よくよく考えてみると、じつは細かく具体的なもので、変わるときにはコロッと変わり、とくに何もしていないように思えるときで

「なのに」ではなく、「だからこそ」で動くチームをつくる 〜 組織文化としての心理的安全性

ここ数年、「心理的安全性」という言葉を耳にすることが多くなる一方で、「心理的安全性は大事だけど、それは『仲好しこよし』ということではない」という声も聞こえてくるようにもなりました。 「仲好しこよし」ではない心理的安全性とはどういうものなのか? それは、安全性にかかわる「心理」というよりも、むしろ「組織文化」と呼ばれるものに近いのではないか。そんな風に感じたのは、2人の若い看護師の方が語るエピソードを聞いたときのことでした。 仲好しになるきっかけは?2人の話を聞いたのは、

ストーリーとナラティブについて考える:その2 「ストーリーがある」とは、何があることなのか?

ストーリーとナラティブを例にして、カタカナで表現される専門語用語について考えています。 前回は、ストーリーやナラティブの分かりにくさがどのように生まれてくるのかについて考えました。 一般的な話としては、「ストーリーとは?」「ナラティブとは?」と、それぞれの要素をバラバラに考えることもできるけど、具体的な話になれば、2つの要素はつねに物語の全体と深く結びついている。 だから、ストーリーを考えるにせよ、ナラティブを考えるにせよ、つねにさまざまな要素で成り立つ、「システム」と

ストーリーとナラティブを考える:その1 システムのつながりでとらえる

前回のマガジンの記事からだいぶ時間が経ってしまいました。 これまでは、専門用語で表現されることの意味を単に「知識」として貯えるのではなく、自分自身の経験や関連するさまざまな言葉とのつながりの中で理解することが大事だという話をしてきました。 そこで、これから何回かにわたって、具体的な例を引きながら、これまでに考えてきたことの意味を検討していきたいと思います。 検討する専門用語は、「ストーリー」と「ナラティブ」 ここ数年、ビジネスやマネジメントの分野でもストーリーやナラテ